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陽編 その事実を素直に認めて

メイトギアが実用化され一般家庭にまで普及する前は、


『子供を一人で生んで死なせる』


なんて事件が偶に起こっていたらしいな。俺としては本当にやりきれない腹立たしい事件ではあるものの、周囲の理解もサポートもなければ人間(地球人)>は、


『妊娠・出産すら自力じゃまともにできないような生き物になってしまった』


ということなんだろうさ。この事実一つとっても『人間(地球人)の振る舞いを他の野生の生き物の在り方で例えるのは無理がある』と痛感させられるよ。


だから俺はその事実を素直に認めて、


『人間はどうあるべきか?』


を考えなきゃいけないと思ってる。十分なリソースがあるのに『気に入らないから』という些細な理由で他者を排除しようなんて考え方は、


『人間自身の首を絞める考え方だ』


としか思わないんだよ。まあだからこそ<スペースコロニーという人工環境>は主流になれなかったんだろうけどな。なにしろ<惑星>に比べるとあまりに小さくて何もかもが限られたリソースのみで構成されたそれは、


『余分な人間を生かしておけるリソースがそもそもない』


環境だし、そういう環境で生きていれば人間だって狭量にならざるを得ないだろう。リソースが限られていたがゆえに他者から奪うことでコミュニティが成立していた時代のメンタリティに戻ってしまっても何もおかしくないだろうな。


スペースコロニーがもてはやされた頃に、事故で一時とはいえ住人が他のスペースコロニーに避難せざるを得なくなった時には受け入れ側のスペースコロニーにおいて、


『なんでこいつらに俺達の酸素や水を分けなきゃいけないんだ!?』


的な不満が強く生じたらしい。そうだな。スペースコロニーにおいては酸素も水も非常に限られた<有限なもの>でしかない。<植物を使っての光合成>だけでは安定的に確保できず<工業的に作り出されるもの>だったわけで。


となると、


『他所の奴らにまで分けるのはおかしい』


って考えてしまうのも無理はないのか。実際、スペースコロニーだけで<完全自治>を行おうとしたコミュニティは、


『価値のない人間は貴重な酸素や水を浪費するな』


という考えが蔓延、それで住人同士に強い軋轢が生じて最終的に殺し合いにまで発展したとも聞く。


そういう背景に加え、<テラフォーミング技術の確立>と<他の惑星への植民>が本格化することでスペースコロニーの価値は急速に失われていったわけだ。だから今でも安定的に運用されているそれは、


<地上では行えない実験などを行うための設備>


というのがほとんどなんだよ。



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