陽編 危険な敵を容赦なく殺せる
だいたい、
『危険な敵を容赦なく殺せる』
なんてのは、ここじゃ<地球人のメンタル>を持ってる俺やシモーヌやシオやレックスやルイーゼ以外ならむしろ当たり前のことだ。
久利生やビアンカは高度に訓練された選りすぐりの軍人だし、クロコディアの肉体を持って顕現したメイガスも肉体の方の影響を受けたのもあってすっかりその辺は順応しているし、元々<獣人>の形質を持つ光や灯をはじめとした<朋群人>はそんなもの狙って身に付けさせなくても最初から容赦なく殺せる。光だってそれこそ幼い頃にグンタイ竜の襲撃を受けた時に躊躇なく殺して見せたし、灯も危険な外敵相手にはまったく臆することもない。元来備わってる性質なんだよ。だったらなにもわざわざそれをさらに先鋭化させる必要はないだろう?
錬慈はその辺り二の足を踏んでしまう様子は見られるが、なにも全員が全員、それができるようになる必要はないはずだ。地球人社会でも<役割分担>という形を取ってたしな。
<危険な外敵を躊躇なく殺せない者がその選択を迫られる状況>
なんてものに陥った時点でそれは『防衛体制が崩壊してる』って話だろう?
まあかつての地球人社会ではテロがそれこそ日常的に頻発していたりして<ただの一市民>がそういう状況に陥ったりもしていたらしいが、俺達の感覚からするとゾッとする話だよ。
つまりそれだけ状況は変わってるんだ。
テロリストは今でも存在するが、それに対処する時はロボットを前面に押し出してわざとテロリスト側に攻撃させることで戦力等を詳細に分析、波状攻撃を仕掛けて根負けさせるのが一般的なやり方らしいしな。その際にロボットがいくら破損しようがそんなのは弾薬を消耗するのと同じなわけで。
まあこの場合でも、
『ロボットにも人権がある』
と考える一部の者達が騒いだりするのが頭の痛い話だそうだが、ここでは最初から、
『ロボットはあくまで道具だ』
という認識が浸透してるから少なくとも今のところはそんな話も出てきていない。とはいえ、按にとってのドーベルマンDK-a伍号機やキャサリンにとってのドーベルマンMPM十六号機のような事例もあるから、二人にとってはそれぞれ<ただの道具>じゃないんだろうとは思ってるし、伍号機や十六号機を捨て駒のように使うつもりはさすがにない。そこまでしなきゃいけない理由もないし。
この辺りは<臨機応変>ってヤツだな。俺も大事だと思ってるよ。<臨機応変>は。
それを言い訳にして自分にばかり都合のいい解釈を押し通そうとは思わないだけで。




