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ルイーゼ編 自分を制御する必要

何度も言うように、俺は、


『心を込めて話し合えば誰とでも分かり合える』


なんてことを信じてるわけじゃない。現にここでも、<獣人>相手じゃそもそも会話自体できないしな。大前提として<話し合い>が成立しない相手がいることは承知してるさ。


だが、だからといってこっちの都合ばかりを一方的に相手に押し付けるのは話が別だろう。そんなことをしていれば最終的に互いに相手を排除するしかなくなる。それを裏付ける事例も地球の歴史を見るだけでも無数にあったはずだ。<戦争>でさえ結局は最終的にどこかで折り合いをつけて<講和>のような形に持っていくことになったよな。『話し合いでは解決しない』と言いながらもなんだかんだで最後は<話し合い>になってしまう。戦争自体、


<自分達に有利な条件で話し合いをする状況に持っていくための手段>


とも言えるし。なのに、戦争中はそれこそ相手を一人残らず皆殺しにしようとでもいうかのような勇ましい文言を並べて戦意高揚を図ったりもする。それでいて自分達に有利な条件で折り合いがつけられるとなれば、


『はい、ここで戦争は終わり。やめやめ』


と手の平を返す。個人の恨みが憎しみがどれほど強かろうとまるで最初からなかったかのように。


そんなムシのいい話にいつまで踊らされるつもりなんだろうか。


でもまあ、今の地球人社会においては人的被害が出るような全面戦争は起こってないし起こせない。AIが協力してくれないからな。だからこれまでにも何度も触れたように、ロボットを使った<儀礼的な戦闘>がメインになる。人間に被害を出さず同時に<多少なりとも納得を得られるようにするための妥協案>だな。ロボットにいくら被害が出ようともロボットはそれを恨みに思ったりもしないし。


で、人的被害が非常に限られてることで<憎悪>も抑制される。人間の感情というものを考慮すればこその妥協だ。これは<綺麗事>じゃなく<冷徹なまでの合理性>なんだよ。人間社会を穏当に維持していくための。


『話し合えば必ず分かり合える』わけじゃないが、どこかで折り合いをつけなきゃ共倒れになるだけだ。野生の生き物のように『相手が見えないところに行けばそれで解決する』わけじゃないがゆえに。その気になれば人間(地球人)は、


『どこまでも相手を探し出して殺す』


ことができてしまうがゆえに。そのための<方法>も<道具>も発明してしまったがゆえに。<野生>を捨てた結果、人間(地球人)は自分で自分を制御する必要が生まれてしまったんだ。



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