ルイーゼ編 見当違いも甚だしい
そうやって焔と彩に認知症の症状が出始めていても、ルイーゼはそんなことに関心を示してくれない。これについても地球人社会じゃ、
『薄情だ!』
『人の心はないのか!』
的なことを言うのが多くいたものの、そんなのは『見当違いも甚だしい』としか俺は思わないな。焔と彩の件はあくまで<俺の家族の問題>であってルイーゼには何の関係もない。事実上、彼女は俺の庇護下にあるといっても、だからといって俺の家族を気遣わなきゃいけない道理は彼女にはないんだよ。確かに気遣ってくれた方が気分はいいかもしれないが、それを期待してやってることじゃないわけで。
だから俺は、ルイーゼがそれを気遣ってくれないことに憤るつもりは毛頭ないんだ。そもそもそんなことを勝手に期待して相手がその通りにしてくれないからと苛立つのは<甘え>でしかないと俺は思ってる。と言うかやっぱり<悪癖>だな。俺自身もそういう傾向がないわけじゃないから余計思うが、とにかく地球人は勝手に期待して自分の期待通りじゃないからといって勝手に失望してってのが多すぎるんだよ。それこそ日常生活の中でさえ毎日のようにそれを繰り返してる。学校や職場でクラスメイトや教師や同僚や上司や顧客に対して勝手に期待してその通りにならなかったら失望して憤ってってやってただろう? <他人の所為にする人間>はそれすら認めないだろうが。
あと、結婚した後で、
『こんな人だとは思わなかった』
とか言うのもそれだろう? 相手は本当に別人に変わったわけじゃないのに、単に自分が相手を勝手なイメージで見てただけなのに、それが思ってたのと違ったからってどうなんだ? と俺は思う。
まあ、健康寿命が六十年程度だった頃ならじっくり相手を見る時間もなかっただろうから仕方ないにしても、十年でも二十年でも相手を見てそれから結婚を決めても何も問題なくなった今の地球人社会でもそれを言うのがいたからな。やっぱり人間(地球人)の本質というのは簡単には変わらないんだとつくづく思う。百年や二百年どころか数千年経ってもこれなわけで。
人間(地球人)がさらに上のステージに進むにはもっと時間が必要なんだろうな。AIやロボットに心や感情が芽生えても、かつての歴史を繰り返すことになるだけで受け止められるとも思わない。
朋群人の場合は最初からAIもロボットも身近な存在だから単に<種族的特性>として認識してくれるかもしれないが、光や灯や二人の子供達は当たり前にいるものと思ってくれてるが、その辺りも慎重に見極めていかないと。




