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ルイーゼ編 為政者側の工作

<マリア・ルードソン>という女性についても様々な憶測があって、中には、


『知能の発達に問題があったのでは?』


という説もまことしやかに囁かれているそうだ。まあ、<普通の女性>が何人もの男性を相手に二十人もの子供を産むというのがそもそも考えにくいから、強制的にそうされていたんでなければ感覚の方を疑うというのは分からなくもない。


シモーヌも、


「私には理解できないからね」


と言っている。だが、もし強制ではなくマリア・ルードソン自身に何らかの<特徴>があってそれに付け込んだんだとすれば、これまたかなり問題だろうとは思う。それでなくても、この『作品がヒットした』という事実自体、


『出生率を是が非でも上げたい為政者側の<工作>だったんじゃないか?』


なんて意見も当たり前にある。さりとて、当時の人間達の感覚というのは、今の俺達には想像もできないものだろうしな。本当に具体的に『世界が滅ぶ』のがリアルに実感できてたそうで。それどころか実際に消滅した自治体やコミュニティがあったからなあ。<国>については合併みたいな形で生き延びて、ただ単に消滅したわけじゃないそうだが。


そんな時代の感覚を理解しようとか、さすがに無理があるだろう。戦国時代の感覚を平和な時代の人間が理解しようとしても無理なのと同じかもな。


だから<子だくさんのマリア>がヒットしたのが事実なのか為政者による捏造なのかは、基本的にどうでもいい。捏造だとしてもそれが長らく事実としてまかり通ってしまうような時代背景があったのは事実なんだろうし。


それよりも俺個人としては、


『<マリア・ルードソンという女性の人生>をエンタメ作品として利用してた』


部分に引っかかってしまうんだよ。しかもエンタメとして面白くするためにおそらく原形もとどめていないほどに脚色していただろうし。


まあこれについては<歴史上の人物を題材にしたエンタメ作品>全般に言えることだろうからあまり深掘りすると藪蛇だったりすんだろうとは思ったりもする。


でもやっぱり、個人的にはいい気がしないんだ。俺自身もそうだし、俺の家族がエンタメ作品の中で本人とは似ても似つかない<キャラクター>にされてしまったと考えると陰鬱な気分になる。


<子だくさんのマリア>に話を戻しても、作品の中では『二十人もの子供を育て上げた』ことになってるが、記録に残ってるだけでも彼女は二十二人の子供を産んでそのうちの六人が成人前に亡くなってるそうだ。



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