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ルイーゼ編 子だくさんのマリア

<人間(地球人)の歴史>というのも、歴史を題材にしたエンタメ作品が無数にあることからも分かる通り、大概<面白そうなもの>なんだろうな。実際、商業主義がある種の頂点に達した二十世紀後半から二十一世紀にかけて以降の六十世紀に至るまでの間の歴史も無数のエンタメ作品になってるし、俺自身もそういうのに散々触れてきたし、確かに面白かった。


ただ、そうやって俺が呑気に楽しんでた陰では、途轍もない数の人間の苦痛があったんだというのが今なら分かるよ。<人口爆縮>の時期に起こっていた様々な出来事についてもエンタメ作品にされていた。


その中に、


<子だくさんのマリア>


という作品があったんだが、これがまた何とも闇の深い作品で。


あらすじとしては、


『世界的な人口爆縮により非婚や子無しが<悪>とされるようになった中でマリアという一人の女性が何人もの男性との間で二十人もの子供を生み立派に育て上げた』


という、こうやって文章にした時点で『ん?』と首を傾げてしまいそうな作品だったものの、人口爆縮がようやく収まりかけた頃からさらに百年くらいに亘って大ヒットしたそうだ。


まあ作品自体、主人公のマリアが懸命に子供達を育て上げていく様子をポジティブに描いているから『すごく頑張ってる』という印象を受けるものになってはいた。なってはいたんだが、これも、


『主人公のマリアは架空の人物だ』


という説もあるくらいに荒唐無稽でもあったんだよ。一応、記録上は<マリア・ルードソン>という女性がいて十六人の子供を育て上げたのは事実とされてるとはいえ、そもそもその記録自体が本当に正しいのかも怪しいとされていたりで。


加えて、残っている実際の記録を見ても、


『マリア自身が果たしてそれを本気で望んでいたのか?』


が実に疑わしい感じだそうだ。何しろ、彼女は両親を早くに亡くし施設で育って、最初の子供を生んだのが十六で、しかも最初の男性から三人目の男性までが施設の職員だったらしいしな。


この辺りも作品の中では、


『愛に包まれてその中で彼女は望んで』


と描写されてるものの、冷静に考えてみれば、


『いや、そんな都合のいい話があるか?』


ってなるんだよな。だから人口爆縮について研究してる専門家の中じゃ、


『典型的な捏造だ』


という意見が大勢を占めてるらしい。正直、俺もそう感じる。


事実がどうだったのか、それこそタイムマシンでも使って当時に遡るしか確認の方法はないだろうが、かつてはマリアの人生がエンタメ作品として楽しまれていたというのも事実ではある。



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