ルイーゼ編 たまたま良い方向に進めただけ
かつて地球に存在した<超大国>の一つでは、
『人材は畑から採れる』
と揶揄されるくらいに人的資源をひたすら浪費する形を取っていたらしい。まあその国では、
『人民は国家を支えるために存在する』
って考えが極まっていたそうだから、『国家のために人民は生きて死ぬのが当たり前』だったそうだ。しかもそんな無茶苦茶なことをしててもそれなりの期間に亘って国家として存続できてたそうだから、当時はそれだけ<人口>そのものが多かったということだろうな。実際、地球人口は最大百億超までいったそうだし。
しかし、人間にも<種を生かすための本能>は残っていたのか、<非婚>や<子供を持たないことを選択するカップル>が激増。小手先の<少子化対策>はまったく効果を発揮せずに恐ろしい勢いで人口は減少していったという。<人口爆縮>だ。
こうなると『人材は畑から採れる』なんて理屈はもうまったく意味を成さず、それこそ死刑囚すら動員してまで労働力の確保をしなきゃならなくなった。このことが結果として<死刑の全面廃止>に繋がったのは皮肉としか言いようがないのか。まあ代わりに<死刑相当の判決を受けた囚人の強制労働>が導入された形ではあるが。
それでも労働力不足は解消できず、AIやロボットの性能向上が急がれた。『必要は発明の母』と言われるが、当時の危機感は<必要>どころの騒ぎじゃなかっただろうなと俺も想像できるよ。それこそ、
『AIやロボットが人間以上の働きをできるようにならなきゃ人間は確実に滅ぶ』
レベルだったそうだしな。
幸い、AIやロボットの性能向上に必要な人材はまだ残っていたことでそれが実現できて、ロボットにロボットを作らせることで数を確保、一気に人材不足を補うために配備が進められたという話だ。
ただこの時にも、
『急いでロボットにロボットを作らせるために十分な制限を掛けていなかった』
のが原因で<ロボットの暴走>を思わせる出来事があったらしいが、これも詳細は伝わっていない。ぎりぎりのところで回避されたか抑えることができたか、現に大規模なロボットの暴走や反乱は起こっておらず今に至ってるわけで。
本当に綱渡りの状態だったらしいな。
だからこそそういう失敗を経験として活かし、同じ轍を踏まないように知恵を絞ることができるのも人間という生き物なんだろうさ。まあそれ自体が非常に危ういバランスの上で成り立ってたんだろうが。たまたま良い方向に進めただけというのもあると思う。




