ルイーゼ編 面白み
ルイーゼと斗真の様子を見守っていても、これといって<面白み>はまったくない。普通の人間なら二人が本当に『惹かれ合ってる』のかどうかすら判別がつかないかもな。俺も正直言ってついてない。
だが同時に、険悪でもなければお互いの存在を疎ましく思ってるわけでもないのだけは間違いないとも感じるんだ。
斗真が今日の仕事を終えて帰ってくると、ルイーゼは自身の<研究室>にこもってひたすら鉱物を見つめていた。彼女は<ポータブル解析機>や<顕微鏡>ももちろん使うが、同時に俺達には見えてないものが見えてるらしい。鉱物に対する並々ならぬ関心と途轍もない集中力のなせる業か。
絵画なんかも、特に極まった作者なんかは、常人には見えてないものが見えていて、それを描くことができると聞くし、そういうのと似たようなものなのかもしれない。とにかくルイーゼの解析能力は、専用の解析機にも引けを取らないものなんだ。だから現在、コーネリアス号、光莉号、およびルイーゼで手分けして解析を行ってる状態だな。
そして斗真は、そんな彼女の邪魔をすることもなく、風呂に入って、アリニが作ってくれた夕食を食べて、早々に床に就いてしまう。ルイーゼが家のことを何もしない点についても不平不満を口にしたりもしない。まあそもそも元の感性が人間(地球人)よりははるかに野生に近い彼の頭には、
『家のことをする』
なんて概念は最初からないのかもしれないが。
対してルイーゼも、<普通のカップル>のように彼に構ってもらったりデートに出掛けたりプレゼントをあげたりもらったりという概念を持ち合わせていないらしく、まったく気にしている様子もない。斗真にそれを求めるのはさすがに難しいと思うが、彼女は頭にもないようなんだ。
そんなルイーゼがまた、鉱物を手にしたまま気を失うようにして眠ってしまうと、アリニとドラニがそっと彼女の体を抱き上げて服を脱がせて風呂に入れ、寝間着を着せて斗真が眠るベッドへとそっと寝かせる。人間なら大変なその作業も、アリニとドラニは苦もなく行ってみせてくれている。完全な<介護>だな。
老化抑制処置も行えず、治療カプセルやナノマシン注射や自動ワクチン生成器を除けば現在の地球人社会で受けられる高度な医療も存在しないここでは、きっと<介護>も重要な仕事になってくるだろう。それをここで作ったロボットが確実にこなしてくれるのが確認できて、俺としてもありがたい。
ちなみにルイーゼの入浴やら寝室での様子については別に映像で確認したわけじゃないぞ。あくまでアリニとドラニからの<報告>で把握してるだけだ。




