概ね平穏(いやあ、ありがたい)
蛟の件も解決して、またのんびりとした日常が帰ってきた。と言っても、子供達は相変わらず元気で、家の中をメチャクチャに走り回ってる。しかも、実年齢は五歳半ぐらいと言っても体の大きさはローティーンって感じだから力も強くなってるんだ。
時々、大きな物音がするが、それほど驚かなくなってしまった。気にするだけ無駄だろう。もし大事だったりしたらセシリアかエレクシアが教えてくれる。
それよりも、焔と彩の仲がますます親密度が、と言うよりも明らかに濃密になってるんだよなあ。しかも、意外なことに彩の方が積極的と言うか、焔の体の上に馬乗りになってキスしたりしてる。
……まさか、俺と伏のラブラブな姿をどこかから見てたりしたんじゃないだろうな? 宇宙船の方に閉じこもってしてるから見えない筈なんだが……
なんてこともありつつ、だが概ねやっぱり平穏だった。
そんな中で、深と弦の様子も確認してたんだが、どうやらようやく<おめでた>らしい。
「妊娠の兆候が見られますね」
シモーヌにそう告げられて、
「そうか!」
と俺は声を上げてしまった。
なかなか子供ができる様子が見られなかったことで、弦との関係が危うくなるんじゃないかと危惧してたんだが、何とかそれも回避されたようだ。
もっとも、ヒョウ人間は基本的に群れを作らず雄は育児に参加しないから、子供ができればたぶん、そこでお別れになるだろう。人間の世界では眉を顰められる話だろうが、これも彼らの世界での摂理というものだろうから、異種族である俺が口出ししても仕方ない。
すっかり大きくなった腹を抱えて大儀そうに木に登る深を弦が気遣ってくれてるようにも見えるんだが、これも要するに<我が子>を守る為なんだよな。深じゃなくて。でも、結果として深のことも守ってもらえるならそれでいいか。
そんなことを考えてる間にも時間は過ぎて、いよいよ深の出産が始まったらしい。
「始まりますよ」
シモーヌにそう声を掛けられて、俺もタブレットの画面に見入る。その中では、ふうふうと苦しげに呼吸をしている深の姿があった。
一見しただけでもあどけなさは残しつつも、体の大きさ自体はほぼ成体と変わらず、ライオン人間としては既に一人前なんだろうが、実年齢のこともあるし、俺達人間の感覚で見ればまだ子供にも思えるあの子が辛そうにしてるのは、やっぱり親としては心配だな。しかも出産の為にいつもの木の上じゃなくて地上に下りてる状態だし、出産中となれば隙も大きいだろう。他の肉食獣からすれば格好の獲物だ。
そこで俺は、ドーベルマンDK-a肆号機を警護に派遣しつつ、メイフェアにも頼んだ。
「誉に近くまで来てもらったら、誉の警護のついでで深の警護もお願いできるかな」




