量産化(それなりに役に立ってくれたらいい)
『自然の中では全てが壊れて然るべきもの』
そう考えれば、蛟に壊されたドーベルマンDK-a零号機だって決して無駄になった訳じゃない。後日、メイフェアが行った時に残骸を回収してもらい、そちらも再資源化する予定だ。
その上で、既に設計されていた初号機に続き、蛟との戦いで得たデータを基に改良を加えた弐号機、参号機と順次設計してもらう。
そしてその制作の為の資材についても。セシリアに用意してもらった。
「ただいま戻りました」
昼を少し過ぎた頃に、セシリアとイレーネが帰ってきた。
あれほどの姿になってたイレーネもすっかり元通りになっていて、俺もシモーヌもホッとする。
「おかえり。本当にご苦労だったな」
そう言って出迎えた俺達に、それでもイレーネは無表情のままで、
「いえ、それが私の役目ですから」
と素っ気ない。
だが、その様子がかえって胸に迫ってくる気もする。抱き締めて『よ~しよし♡』としたくなるの辛うじて堪えて、俺は、
「まあそう言うな。俺達の正直な気持ちだよ」
などと言いながら苦笑いを浮かべていた。
設計もできていたし、ドーベルマンDK-a零号機を制作した際に段取りも出来上がっていたから、<ドーベルマンDK-a初号機>については、二日と掛からず完成した。なんて言って、実際にはそれなりの設備を持つメーカーなら、半日と掛からない程度のシロモノなんだけどな。それ専用に作られた訳じゃない汎用の工作室だからこれだけ時間が掛ってしまっただけだ。
だから、ドーベルマンDK-a初号機もそれ以降のも、ある意味では『壊れて当然』という存在として運用することになる。そもそも『ただの道具』と割り切る為にというのもあって徹底的に簡素化したんだし。零号機については、初めてのってこともあってちょっと思い入れが強くなってしまっただけだな。
デザイン上は零号機とほぼ同じで、やっぱり割り切った。走達に警戒されるから離れたところを巡回し、なるべく目に触れないようにする。
それから続けて弐号機以降も制作。肆号機、陸号機、漆号機については、セシリアとイレーネにローバーで運搬してもらってこちらに配備した。
が、見慣れない不気味な<何か>を前に、密達もドン引き状態だ。家や密林に隠れて出てこようともしない。
でもまあ結局、それも慣れの問題だと思う。しかも散々俺達と一緒に暮らしてきた密達ですらそんな反応だから、他の動物達はそれこそこの異様な<怪物>を怖れて近寄ってもこないかもしれない。
そういう形ででも距離を取ることができるなら無駄な衝突も避けられるだろう。
武装も、万が一の暴発事故を想定して、実弾ではなく圧縮空気で樹脂製のスタン弾(ホントにその辺に生えてる木の樹脂から作った、メチャクチャ固いゴムボールみたいなもの)を撃ち出す形に変えた。
それで逃げないような奴は、それこそエレクシアに<処置>してもらうことになるだろうな。




