メイフェア編 人間という生き物の現実
そうだ。レックスは、
<生き物に対する敬意>
を忘れない人物だった。ここ朋群に溢れる無数の生き物に対して強い関心を抱きつつも、その<命>に対しては常に敬意を払っていたのは見ていても分かった。フィクションによくある<マッドサイエンティスト的なキャラクター>ではまったくなかったんだ。
だからこそ<生き物の一種である人間>に対しても敬意を忘れずにいられるんだろうなと感じる。その彼がこうして顕現してくれたことは本当に幸いだった。もちろんシモーヌもビアンカも久利生もシオもだ。ルコアは子供だったが両親である<メイガス・ドルセント>と<ディルア・ルバーン>の人柄があればこそその精神を受け継いだ彼女も素晴らしい人間に育ってくれたと思う。まあ、ルイーゼについては戸惑いもしたが、そこはレックス達が間に立ってくれたことでなんとか折り合いもつけられた。ルイーゼも別に攻撃的な人間というわけじゃないしな。
とにかく、俺は大変な幸運に恵まれたと実感してる。その事実に感謝せずにいられない。
<リリエ・エグレン>に関しては、
<ただ彼女に遺伝子と同じものを有している獣>
であった竜生という形での出会いだっただけになんとも複雑ではありつつ。特に俺にとっては新のこともあったから。
さりとてその件については<リリエ・エグレン>には何の責任もないのは分かってる。その責任をリリエ・エグレンに問うのは言いがかり以外の何ものでもないさ。地球人社会では、
『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
とばかりに言いがかりとしか思えないような形で恨みをぶつけるのもいたが、これまた<心の働き>というものだよな。心ってヤツは時として道理も何も超越してしまうものなのは事実だと思う。
俺としてはそういうのは好ましくないと思うしそんなのが当たり前にならないように心掛けていきたいと思ってるが、この辺りも『心を持つ』からこそままならない部分でもあるだろうなあ。そこもわきまえておかなきゃ人間という生き物のコミュニティはまともに成立しないだろうなと実感するよ。
現に、俺自身が地球人社会で暮らしていた頃にも、俺にはまったく意味不明な形で俺を嫌ってる人間もいたしな。
『誰かを一方的に貶めようとする振る舞いに賛同しなかったから』
嫌ってるらしいのがいたんだよ。いや、理不尽にも程があるだろ。
とは言え、これまた<人間という生き物の現実>なのも事実だしな。その事実から目を背けていても上手くはいかないさ。
面倒と感じることはありつつそれも忘れないようにしなきゃと心掛けてる。




