メイフェア編 大雑把な対処
旭音は今日もメイフェアの傍で過ごしている。他のパパニアンはそんな彼女を怪訝そうな表情で見たりするものの、だからといってイジメたりもしない。と言うか『できない』よな。なにしろ自分達が絶対に敵わない存在のすぐ傍にいるし、実際に<自分達が絶対に敵わない存在>が彼女を守ってるしな。
だがそれだけだと不満が蓄積されていってストレスが溜まっていってやがては爆発する可能性もあるだろうが、そもそもこの群れは<ストレスが溜まりにくい環境>が出来上がってるからその辺りも上手く作用してるんだろう。
そういう<実例>を目の当たりにすることで俺も多くのことが学べるよ。
もちろん野生に生きるパパニアンの在り方をそのまま人間に当てはめることはできないが、ある程度なら参考にすることだってできるだろう。ただその<ある程度>ってのがそれぞれ違ってたりするから面倒なだけで。
野生の獣の在り方をほとんどそのまま人間に当てはめてる奴も、当人はその辺りをわきまえてるつもりだったりするんだろうな。だから聞く耳を持たなかったりもするし、
『人間と人間以外の動物は違うという話とも矛盾しない』
と考えてたりもするんだろうさ。
こうなるともう俺が何を言ったところで<馬耳東風><馬の耳に念仏>なんじゃないか? そしてこう言うと、
『上から目線だ!』
とキレたりもする。本当に面倒だな。人間という生き物は。
さりとてそれを嘆いていたところで問題は解決しない。状況は好転しない。あくまでも『そういうものだ』という割り切りの上で『じゃあどうするか?』というのをそれぞれの事例で考えていくしかないんだ。
その点、パパニアンの世界は人間のそれよりはシンプルだとしても、<個別の対応>が必要なことは変わらないと思う。一般的なパパニアンの場合はそこまで対処できないんだろうけどな。と言うか、普通はそこまでする必要もないんだろう。<社会>自体が小さいし、同じパパニアンのそれであっても<他の群れ>はほとんど<別の世界>に等しいくらいに関わりもないわけで。
対して人間(地球人)の社会は<別の国>であってもたとえ国交がなくても互いに影響を及ぼし合ってきたからこそ、
<細かいことを考慮しない大雑把な対処>
では拙かったということだな。人間(地球人)社会全体に及ぼす影響は決して無視できないんだ。
<惑星ごと他のコミュニティを破壊できる力>
を持ってしまった以上はな。<自分に返ってくるもの>も途方もなく大きいし。




