18話
もってきた物を叩きつけるように、彼は執務机に並べていき最後にこう締めた。
「シェラザードとフェリシアの身柄を押さえてください。国庫に手をつけるのは大罪だ」
シェーラが自分がどうなるかも分からず、あの家に連れて行かれていた頃、城ではゲイルが集めた証拠を手に国庫を預かる大臣に詰め寄っていた。
「しかし、これだけでは手引きしたものが誰かが」
「手引きしたものはシェラザードと一緒に一度駆け落ちした、クリフ=ベンネルです。証拠は彼の作成したこの改ざんだらけの帳簿をみれば一目瞭然でしょう」
「いや・・・こういったことは慎重に・・・」
「分かりました。ではこの証拠を持って王の下へ参りましょう。これだけの証拠を並べてもまだ慎重にと王がいうのであれば仕方ありません」
「王に?!」
「幸いなことに私は謁見を申し込める立場と家柄がありますから」
さらりとゲイルがいった言葉に一気に大臣の血の気が引く。
それは彼にはそれが十分に可能であるからに他ならない。
「わかりました。すぐに兵をやりましょう。この証拠については預からせていただき詮議にかけるということでよろしいですか」
「頼みます」
「しかし本来であれば管轄外のこと。今後はこういったことはこちらに話を通していただきたいものです」
「わかっています・・・私的なことで申し訳ないが、私の大切な人がこの二人のせいで長く苦しめられている。このことを調べたのは彼女のことがきっかけだ。だが家名に誓って言う、この証拠に一切の偽りはない。ことを早急に進めようと無理を言っていることも分かっているが、このままでは彼女が殺されてしまうかもしれない。お願いです、力を貸してください。」
若く優秀であり、王子や王にも重用されているこの男の言葉と潔く頭をたれるその姿勢に、いかに彼がその女性を大切に思っているかが伺える。
「そこは聞かなかったこととしましょう」
先ほどまで苦い表情を浮かべていた大臣は優しげに微笑んで見せる。
日頃の仕事ぶりから彼が慎重すぎるほど慎重にことを進め、家柄を鼻にかけず真摯に仕事に取り組んでいるかは上からも聞こえてきている。部署が違うとはいえ、厳密に言えば彼のほうが上の位にいるのだから、はっきり言えば王子に話を通し王から指示を出してもらうよう話せばいいというのに、私たちの顔を潰さないためにきちんと話を通したのだろう。
その気遣いに自分は答えねばと部下への指示もいつになく熱のこもったものとなった。




