表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/50

エピローグー1 僕が死んだ後の子どもらの会話

 エピローグになります。

 主人公の子どもを中心とする身内視点の話です。

 日本にいる幸恵や千恵子、総司らの下に、フランスにいる父の死の連絡が入ったのは、1976年の正月明け早々のことだった。

 年末年始の慌ただしさが収まったばかりの父の死は、少なからず3人を驚かせたが。

 取るものも取りあえずといった感じで、父の葬儀のために、フランスへと3人は行くことになった。

 昔ならいざ知らず、この頃になれば、当然のようにジェット旅客機が、日本からフランスへと毎日、複数飛ぶようになっていたからだ。

 だから、3人がフランスに赴いて、父の葬儀に参列するのに何の問題も無かった。


 3人がフランスの空港に到着すると、アランが待っていた。

 日本から来た兄姉を代表して、総司がアランと話をした。

「本当は、僕の妻の美子や、千恵子姉さんの夫の勇さんも来たい、と言ったのだけど、フランスまで行くのも大変だから、と3人だけで来た」

「そうですか、父も喜ぶと思います」

 儀礼的と言えば、儀礼的だが、兄弟間の会話をして、4人で教会に向かい、そこに集っていたフランスにいる身内と合流して、父の葬儀は無事に執り行われた。

 そして、葬儀後、改めて身内が集って懐旧談等をして、親交を深めることにしたのだが。


「日本にいた頃の父の話を教えてくれませんか」

 フランスにいる身内を半ば代表して、ファネットが、幸恵、千恵子、総司に尋ねかけると。3人は改めて顔を見合わせ、30年以上前の昔を語り始めた。


「もうね。りつ母さんと切れて、忠子さんだけを大事にしていたのに、りつ母さんは父の愛人と見られていて、もう酷い誤解だったわ。しかも、りつ母さんは陰で喜んでいたわね」

「キク母さんも不倫疑惑がしょっちゅう巻き起こっていたわね」

「お陰で、忠子母さんはしょっちゅう苛立っていたっけ。単に僕達と逢って、養育費を払っていただけなのにね。愛人手当じゃないっての」

 3人は苦笑いしながら、話した。


 その言葉を聞いて、アランが苦笑いをして話を始めた。

「フランスに来てからも、似たような話を父は引き起こしましたよ。僕が第二次世界大戦終結後も、世界を転戦したでしょう。だから、両親に妻子を預けたのですが、今度は、父と妻のカテリーナが不倫している、と根も葉もない噂が流れて、困りました」


 アランの言葉を聞き、夫に先立たれたショックから少し呆けていたジャンヌが、しゃんとして言った。

「あれには、カテリーナと一緒に困ったねえ。全く下手に否定すると、実は本当なんだ、という噂が逆に広まる有様だったから。よくもまあ、カテリーナが出て行かなかったものだよ」

「全く僕が実父同様に茶髪ですからね。そこに来て、祖父が黒髪、父のアランや母さんが金髪だから、仕方ない側面もありましたけどねえ」

 ピエールが苦笑いして言葉を継ぐと、日本から来た3人も一緒になり、笑いの輪が広がった。


「それにしても、父は不真面目だったんですか。日本で3人もの女性と子どもを作って、母とも子どもを作ってることから考えると、不真面目としか」

 ファネットが、心底、疑問を覚えたように言うと、ジャンヌとアラン、それに日本から来た3人は、あらためて首を傾げながら、真剣に悩んだような顔をしたが。

 目が笑い転げている。


「うん。不真面目じゃないよ。生真面目に子どもを愛していて、子どもの母とは別れても、子どもには逢って、養育費も支払い続けた」

「結局、子どもや孫が第一、だったのでしょうね。だから、私とも一時は別れた。不真面目とは、とても言えないわね」

 総司がいい、ジャンヌが口添えした。

 その言葉に、幸恵、千恵子、アランも深く肯いた。


 その場にいた全員が改めて思った。

 これだけの身内がこの場に集ったのだ。

 幸せな最期を父は迎えたと言えるだろう。

 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ