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第34話 第二次世界大戦終結を迎えての僕の決断

 事実上の第4部の始まりになります。

 第二次世界大戦が終わった際、実は僕はかなり悩む羽目になった。

 日本にいる子ども達は、皆、成人に達し、僕から見れば孫ができるようになっている。

 つまり、もう皆、独り立ちしていて、父がいなくても大丈夫と言ってよいのだ。

 一方、僕の末娘、ジャンヌが産んだファネットはまだ6歳で、傍に両親がいるべき歳だった。

 だから、ファネットのことを想えば、僕は日本に帰国せず、フランスに行くべきだった。


(厳密に言えば、この世界の千恵子は軍務にかまけていたために、まだ、子どもを産んでいないが、それ以外の幸恵にも、総司にも子どもが出来ていた。

 そして、千恵子にしても、本来から言えば予備役軍医士官に過ぎず、第二次世界大戦が終わった以上は、動員解除の名簿に載り、予備役編入処分を受けて、土方伯爵家に、家庭に入ることになっていた。

 そして、戦争終結後に千恵子も身籠ったらしい、と僕に伝えてきた)

 

 そして、千恵子や総司どころか、日本にいる幸恵までもが、

「もう、私達は大人になったのだから、お父さんの自由にしたら」

 と僕に言って来たのだ。

(細かいことを言えば、幸恵は手紙を書いて寄越した)


 総司、幸恵、千恵子にとって、僕と忠子の不仲は良く知っていることだった。

 僕は決して口に出さなかったが、幸恵も千恵子も頭がいいので、自分達がいるから、僕と忠子の仲が上手く行かないのでは、と一時、悩んだことがあるらしい。

 総司に至っては、それこそ僕や忠子とほぼ同居して成長したのだから、両親の不仲は辛いことだった。


(ちなみに、篠田りつが結局、独身を押し通したのも、これが影響したらしい。

 周囲が、例えば、千恵子を弟夫婦の篠田正の養女にする等した上で、結婚したらどうか、という勧めを何度かしたのだが、りつは断って独身を貫いた。

 篠田正は、この世界でも実子に恵まれなかったので、せめて千恵子を自分の養女に、という話を兄妹間でしたこともあるが、りつが断った。


 何故かといえば、僕と忠子が不仲なので、ひょっとしたら、忠子が離婚に応じ、僕が自分の下に奔ってくるのでは、という夢が、りつにはどうにも諦めきれなかったらしい。

 そして、千恵子を正の養女にしては、僕からの養育費の支払いが止まり、僕との縁が切れる、とりつが考えすぎてしまったのもあった。

 そうなった場合、幸恵のことからしても、僕は千恵子の養育費を支払うつもりだったが、恐らく周囲の養育費を支払うな、という圧力はかなり強く、僕が屈した可能性は否定できない。


 勿論、プライドの高いりつは、僕にそんなことを決して言わなかったが。

 千恵子は、りつ母さんが独身を貫いたのは、そう考えたからに違いない、と僕に語ったし。

 僕が戦死した世界の流れからしても、りつがそう考えていても、全くおかしくなかった)


 そして、美子が総司の息子を産んだことから、岸家の後継ぎ問題が一段落しているのも大きかった。

 忠子は、自分の初孫ができたことで、美子を一応は岸家の嫁として認め、孫をかすがいとして、キクのことを嫌うのを(少なくとも表面上は)止めたのだ。


 こうしたことからすれば、この際、お父さんは、ファネットのこともあるし、フランスに行けば、と総司や幸恵、千恵子が口を揃えるのも無理は無かった。

 それに周囲の状況もあった。

 第二次世界大戦終結に伴う軍縮の嵐は、日本に襲い掛かっており、軍功がそれなりにある僕にまで、予備役編入の肩叩きが行われる有様になっていた。


 実際、6個師団を誇っていた海兵隊は、中国本土が蒋介石の下に再統一されたこともあり、4個連隊基幹にまで再編するとしてリストラの嵐が襲い掛かっていたのだ。

 こうなっては、僕と言えど安閑として現役続行はできなかった。

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