表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/50

第28話 やはり、澪じゃなかった忠子とは、と思ってしまいました。

 僕は、ジャンヌを見送りながら、改めて想った。

 この時代なら、そこまですることはない、と言われそうだが、ジャンヌの出産に立ち会いたい、とどうしても想ってしまったのだ。

 だが、そのためにはスペイン内戦を、速やかにフランコ、右派の勝利で終結させる必要がある。

 僕は内心では公私混同にも程がある、と想ったが、右派勝利のために邁進することになった。


 その一方で。

 ジャンヌを僕が見送った直後に、土方勇志伯爵には、僕の肩を叩かれながら、呟かれてしまった。

「本当に間違った結婚になったな。お前の義父にこぼされたよ。まさか、婿との間の子を、娘が勝手に堕胎するとは思わなかった。婿のしたことも大概だが、だからと言って、娘が黙って堕胎するとは、とな」

 その呟きを聞いて、僕も想った。

 やはり、忠子、いや、澪と僕は、どうにも合わない関係だったのではないか。

 結婚という決断をした以上は、夫婦は仲良くすべきだ、と言われそうだが、何事にも限度がある。


 僕が、幸恵や千恵子、アランといった妻以外の子に対する養育費を支払わねば済む話かもしれない。

 そうすれば、妻、忠子が主張するように、僕の家の家計は安泰で、総司の弟妹を育てられる。

 だが、幸恵や千恵子、アランの養育費を僕が支払う以上、僕の収入だけでは、総司の弟妹を育てるのは不可能とは言わないが、家計が苦しい事態が生じる。

 だから、僕は忠子に内職等で働いて欲しかった。

 でも、忠子は、ふざけないで、私は働かない、という態度を頑として崩さなかった。

 そもそも、幸恵や千恵子、アランの養育費を支払わねば済む話でしょう、と忠子は言うのだ。


 これがジャンヌなら、いやりつやキクでさえ、内職等をして家計を助けようとするだろう。

 ジャンヌなら、あなたの子は私の子よ、と(内心はともかく)笑いながら、内職等をする。

 りつやキクも、ブツブツ言うかもしれないが、生活のために仕方ない、と内職等に励むだろう。

 しかし、忠子は、養育費を支払うな、私の子を大事にして、の一点張りなのだ。


 浮気をした自分が悪い、と言えばそうだが、それなら養育費を支払わないのが、正しいのだろうか?

 アランはともかくとして、幸恵や千恵子は忠子と結婚する前に、僕がキクやりつと関係を持って出来た子なのに、今の妻を大事にして、養育費を支払わずにいるのが正しいのか?

 

 そして、ジャンヌもりつもキクも、少しでも自活しようと懸命に(この世界では)働いている。

 だが、忠子は働かない。

 僕や周囲がそれとなく働きかけると、そもそも論を持ち出して、僕を悪者にして、養育費を支払うな。

 それで、全てが収まる話ではないの?何で私が働かないといけないの?夫が悪いのよ!私が働くのはおかしい、と声を極めて主張するのだ。

 確かに、幸恵や千恵子、アランの養育費を僕が支払わねば済む話かもしれないが、それが本当に正しい方策なのだろうか、と僕は21世紀の記憶というか、知識もあるせいか、どうしても考えてしまう。


 結局は、忠子の主張が完全に間違っている、とは言えないが、僕と考えがどうにも合わないのだ。

 夫婦はお互いに助け合うべきものではないだろうか?

 お前、僕が浮気したのが、そもそも悪い、と一刀両断されても仕方ないけど。

 でも、という想いが僕はしてならないのだ。


 そんな想いを内心で固めながら、「白い国際旅団」の一員として、スペインへと僕は、土方伯爵らと共に赴くことになった。

 本来から言えば、アランの所属する日系兵中隊を、僕が旅団長を務める旅団の指揮下においても良かったが、公私混同を僕がやらかしそうで、僕は土方伯爵に頼んで、指揮下から外してもらった。

 そして、日系兵中隊は獅子奮迅の働きをスペインで演じた。

 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >結局は、忠子の主張が完全に間違っている、とは言えな>いが、僕と考えがどうにも合わないのだ。 ここは多分、男女で感想がハッキリと別れそうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ