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第25話 総司の中学校生活、千恵子の女学校生活とアランのこと

 かくして、総司と千恵子の進路が決まり、総司は神奈川県立横須賀中学校へ、千恵子は横須賀市立横須賀女学校へと、1929年4月に無事に進学を果たした。

(なお、その前の汐入小学校卒業式において、今度は総司と千恵子と手をつなぐことは無かったが、結果的には、僕は忠子とりつの双方に挟まれて、父兄席に座る羽目になってしまい、またも、胃の痛い想いをすることになった。

 とはいえ、子ども達が在学している間の運動会や学芸会といった学校行事の際には、僕はできる限りは顔を出して、総司や千恵子、更には幸恵とも小学校内で顔を合わせるようにしていたので、入学式の時程、あの人は誰だ、という視線を浴びることは無くて済んだ。

 というか、6年も経つ内に、僕はそういう人だ、と生暖かく、周囲から見られるようになっていた)


 そして、幸恵も高等小学校に無事に通っており、日本にいる僕の子どもは順調に進学を果たしていた。

 また、姉弟の仲も極めてよく、それこそ幸恵の異父妹になる美子や和子までも姉弟の輪の中に入った。

 だから、例えば、総司は(旧制)中学校5年生の時に、今や料亭「村山」の若女将になった幸恵、高等女学校5年生の千恵子、高等小学校2年生の美子、小学校5年生の和子の4人の姉妹(?)と連れ立って歩くことも多かったので。


 こうしたことから、総司は、良く知らない人から、あいつは誰だ、4人も女の子を連れ歩いて、両手に花どころではない奴だ、と目を付けられることが多かった。

 そして、総司が名乗ると、ああ、あいつ(つまり、僕のこと)の息子か、流石に父子だな、と少し呆れの混じった言葉を掛けられることが多発した。


 姉妹と一緒に歩いているだけなのに、と総司はぼやくが。

 村山三姉妹に、篠田千恵子と名字の違う女性4人と、総司が歩いていては、そう言われても仕方ない気が僕はしてならない。

 しかも、千恵子はともかく(千恵子は、正直に言って理知的で清楚な雰囲気を漂わせており、平均以上の容貌ではあったが)、村山三姉妹は、母親譲りの美貌(と色気)を誇っている。

 周囲の男性から、総司がやっかまれるのも無理は無かった。


 そんなやっかみの嵐もあったが、総司は横須賀中学校で懸命に励み、海軍兵学校を目指した。

 千恵子も、横須賀女学校で、ほぼ首席の地位を譲らなかった。

 そして、総司は横須賀中学校を卒業して海軍兵学校に、千恵子は横須賀女学校を卒業して東京医学専門学校へ、と1934年4月に進学を果たした。


 さて、同じ年に僕の末っ子、野村亜蘭ことアラン・ダヴーも、フランスのサン・シール陸軍士官学校への入学を無事に果たした。

 アランと僕とは、第一次世界大戦終結の際に別れた後、直接に顔を合わせることはできなかった。

 その代りに、お互いに誕生日やクリスマス(新年)の際等に、写真のやり取りをして、また、手紙を郵便で月に1回程度、僕とアランはやり取りをすることになった。

 何しろ、僕は日本に、アランはフランスにいるのだ。

 だから、こういった交流になるのは止むを得なかったが。


 幸恵や千恵子、総司は、3人が小学生の頃に、僕とアランの交流を知り、更にアランの写真も見た。

 アランの写真を見た3人は一驚した。

 僕も驚いたが、本当に髪と目の色を変えただけの僕の幼い頃と言ってよい姿でアランは成長したのだ。

 そのためもあり、3人はアランを自分達の末弟と認め、手紙のやり取りも、少しずつお互いにするようになっていった。


 僕としては、素直に喜べた事態だったが。

 このことに、キクはともかく、りつは少し不機嫌になり、忠子に至っては更にへそを曲げた。

 アランは、僕が不倫してできた子なので、りつや忠子は思い切り気に食わなかったからだ。

 事実上の第2部の終わりになります。

 

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