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玉葱とクラリオン  作者: 水月一人
第一章
18/418

ここは優しい世界……

 開発のために動力を求めると言う実に真面目な理由で水車小屋にやってきたら、そこは世捨て人とジャンキーの蔓延る阿片窟の中に建てられた売春宿であった。何を言ってるか分からないだろうが、但馬にも何が起きたのかわからなかった。とにかく、なんかの片鱗だかなんだかもあって、今すぐブリジットを追いかけて釈明しないと変態の謗りを受けること間違い無しである。但馬は急いで引き返そうかと迷ったが、


「まあ、いいか」


 と、さっさと諦めた。どうせ92Gだし、嫌われたところで痛くも痒くもないし、これまでにも散々やらかしたし、今更どう思われようが大して変わらないだろう。せいぜい、今日のことを王様に告げ口されて困るくらいのものだが、そもそも誤解なんだし、それも依頼を達成すれば問題ないはずだ。


 それより問題なのは、水車小屋が水車小屋として機能していないことだった。小屋の外観を見ると、確かに水車が回っているのだが、それが動力として使われてる形跡はない。見た目だけの装飾なら、せっかくここまで来たというのに、当てが外れたと言わざるを得ないようだった。恐らく、粉引き所などは街中に、もっと別の形で存在していたのだろう。『水車小屋』とは言わずに、『粉引き所』に連れてってと言えば問題なかったのかも知れない……


 仕方ない……とにかく一旦、街に引き返して、今度は自力で探そうか。憲兵隊の詰所で尋ねれば教えてくれるだろう。常連だしな……などと思い、その場を後にしようとするのであるが、


「社長さん、社長さん。まんこ買ってよ! いいまんこあるよー!」


 帰ろうにも、幼女に袖口をグイグイ引っ張られて進退窮まった。


 但馬は貧乳と、ちっちゃい子供は大事にしようと心がけていた。彼らはこれからの日本社会の担い手、金の卵なのである。まあ、ここは日本じゃないが。ともあれ、そんな彼女らにお願いされては嫌とは言えず、


「いやっ、ちょっと、それはその……僕ちゃんは決してそういうのでなく」


 などとそれなりの抵抗は見せつつ、デレデレしながら水車小屋の前まで引っ張られてしまった。


 いかんいかん、女を買いに来たわけではないのだぞ。大体金もそんなには持っていない……持ってないよな? 金貨1枚ってどのくらいのサービスが受けられるんだろう……いけない。とにかく念入りに断りを入れねばと顔を上げたら、視界にヌッとでかい影が差した。


 力士である。


 どこからどこまでが化粧なのか地肌なのか分からない、化粧と言うよりもガンプラの塗装みたいなケバケバした男女が、にたぁ~……と、実にいやらしい顔をして但馬を見下ろしていた。その身長は巨漢のエリオスとタメを貼り、筋骨隆々な体躯はおそらく一撃で但馬の背骨を粉砕するに違いない。そんなごっついオッサンが、いろんなものをはみ出させながら、何故かゴスロリ衣装を着て、横綱のオーラを漂わせながらそこにいた。


 ごついゴスロリだから、ゴッツロリとでも形容しようか、


「あら~、近くで見ると、ホントいい男ねえ~ん。どうかしら、ボクぅ~、お姉さんと遊んでかなあ~い?」


 そんなクリーチャーが但馬のことをロックオンすると、値踏みするかのようにジロジロと、息がかかるくらいまで顔を近づけて、品を作って甘い声を出すのだった。ヒグマにテントの周りをうろつかれ、進退窮まった福岡大ワンゲル部の逸話が頭を過ぎった。こんな迫力を出せるのは、人類ではあと和田アキコくらいのものである。


 遊ぶって何を遊ぶんだ。ぶつかり稽古か。あかん、殺される……しかし、但馬は今、幼女に下半身をホールドされて動けない。軽く涅槃が見える。


「あ、あああのあのあの、その、僕……そんなんじゃなくって、おおお、女の人をかかか、買うなんて、めめめ、滅相もないっ!!」

「やだ~! かわいいっ! 照れてるぅ~」

「ひっ……ひぃぃぃ~~~!!!」


 かわいくない……かわいくないし、美味しくもないから、お願いだから掘らないで……ガクブルしながら但馬は左のコメカミをちょんと叩いて、何か有益な情報でもないかとステータスを確認した。


『Julia.Female.Chimera, 199, 91, Age.38, 112E, 84, 108, Alv.0, HP.1653, MP.0,,,,,,,』


 確認して絶望した。なんだこのHPは。今まで出会った人間はせいぜい3桁だったのに、4桁だなんて、見た目通りこのマッチョは軽く人類を超越している。もしかして、出てくるゲームを間違えたボスキャラか何かじゃないのか。データがおかしい。ドラクエだと思ってたら、いつの間にかFFになっていた、そんな感じだ。本当に人類なのか……と、思ったところで、ようやく気づいた。


 Julia.Female.Chimera。キメラである。ステータス魔法を使うと、いつも先頭は名前、性別、種族の順で表示された。つまり、彼女は文字通り人間ではない。確か、例のイルカは人間のことをモルモット、亜人のことをキメラと言ってたはずだ。


 さらに驚きなのは、


「って言うかオッサン、あんたマジで女だったのっっっ!?」


 但馬が驚愕して腰砕けになっていると、彼女は頬っぺたをプクーッと膨らませてから、


「あらやだ。こんな美人を捕まえておいて、何言ってるの~ん? ぷんぷん」


 などと、図々しいことを言い出した。殴ってやろうか。


 しかし、実際、女性をオッサン呼ばわりするのは失礼であるし、ここはぐっと堪えて非礼を詫びることにする。こんな茶番さっさと終わらせて、街に帰らねばならない。


「あいや、すみません。確かに女性に対して失礼でした。ちょっとこういうところには慣れて無くってね」


 相手が本当に女だと分かると余裕が出てきた。実際に商売女であるのなら、金銭のやりとりが無ければ何もしてこないだろう。プロなんだから。


 しかし、亜人か……確か、ブリジット達は亜人と戦っていたはずである。しかし目の前の男女と、エリオスが頭をぶっ潰した者とでは、とても種族が同じようには見えない。向こうは確か猫っぽかったのに、オッサンはどこからどう見ても浜田雅功(ローランドゴリラ)である。


 もしかして、人間の亜種は全て亜人と言うのだろうか。だとしたら、ますますエルフのことが良く分からないが……


「あら、素直に謝るのね。お姉さん感心したわ~ん。特別に、あなたならタダで相手してあげも良くってよ~」

「ぎゃああああああ!! 断固拒否するっ!!!」

「嘘よ~ん。やっぱ失礼ね~。それに、本当はお姉さんはお客さんを取ってないの。見てくれで分かるでしょう~?」

「あ、そうなの?」


 いや、お目当ての娘が居なくって、店員におすすめを頼んだら、こういう力士が出てくる店って、結構あるって聞くけども……まあいい。そんなことよりも、もう用は無いので、さっさとお暇しようとしたのだが、


「でも、ホント、お姉さんのこと、女性扱いしてくれたのは久しぶりよ~ん。ちょっと感動したわ。お礼に、うちの看板娘を紹介してあげるわね~」

「いや、いい、いい! 必要ないから。つーか、俺、別に女買いに来たわけじゃないんだ」

「あらやだ。照れなくていいのよ~。ここはそういうことする場所なんだから~」

「知ってる知ってる。知ってる上で違うと言ってる。とにかく、俺もう帰るから」

「ナースチャ!」

「人の話聞けよ……」


 但馬は溜め息を吐いた。面倒くさいことになったが、逆らっても仕方あるまい。そもそも、間違って来てしまったのはこっちなのだ。とりあえず、その看板娘とやらにお断りを入れれば解放されるだろうし、大人しく待つことにする。


 一体、どんなのが出てくるのやら……期待しないで待っていた。


 しかし、その期待は大きく外れた。


 水車小屋の暗い室内から、軋んだドアが開く音が聞こえた。暗闇にボーっと浮かぶ顔、こちらを覗く目がまるで人形のように見える。幽霊のように足音を立てずにそれが近づいてきて、やがて部屋から出てきた人物が、外へ出てその全貌を現すと、但馬はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「なあに? ジュリア」

「お客よ。あんた、今日からまた客を取ってもらうから。いいわね?」

「うん……」


 伏し目がちの大きな赤い瞳が、ちらりと上目遣いに但馬を捉えた。目にかかるくらいに伸びた前髪から、広いおでこが覗いている。細く整えられた眉毛が、眉間で困ったように皺を刻んでいた。まだ若いだろうに、それは消えることがないくらい深い陰影を作っていた。顔は小さく、恐ろしく均整のとれた顔立ちをしており、まるで造型師が削り出したかのような作り物めいた美しさを湛えている。そして、こんな場所にいるくせに、信じられないくらい光沢を持ったサラサラの黒髪を持ち、二つ結びにしたその美しい髪が腰まで伸びて、それが体にまとわりついて、なんとも言えない色気を発していた。


 ……これ、売春婦なの?


 正直、ここまで美しい少女は生まれてこの方お目にかかったことが無い。そんな子が、今目の前にいて、しかも、どうせやることは決まってるんでしょう? と言わんばかりの格好をしていた。


 白のホットパンツに、アクセントにフリルがついた黒いマイクロビキニ、その上に薄手のサマーカーディガンのようなものをつけ、わざと肩をはだけて羽織って居た。少し肌に食い込むのが気になるのか、時折、手遊びのようにビキニの紐を直すと、小ぶりだが形のいい下乳がプルッと震え、なんとも言えない波形を作った。肌は染み一つ無く真っ白で、手足は長く、一体内臓とかどこにしまってるの? と言わんばかりの細い腰が、ありえないくらい高い位置に存在していた。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれる?」


 これが売春しちゃいけないだろう……ハリウッドとかで、赤絨毯を踏んでてもおかしく無さそうな女の子だぞ……? 


 但馬が信じられず、ポカーンとした顔をしていたら、彼女が怪訝そうに首をかしげ、サラサラと前髪が音を立てた。その仕草がまた絶妙で、彼のハートをわしづかみにした。


「あら~、気に入ったみたいね~ん。この子は可哀想な子なのよ~。親が借金残したせいで、こんなところで働いているのぉ~。一度は身請けが決まって足を洗ったんだけどね~、それがご破算になっちゃって、またお金を稼がないといけなくなったの」


 ジュリアと呼ばれたオッサン女の声で、ようやく我に帰ってこれた。いかんいかん。もの凄く可愛いものだから、ついあっけに取られてしまったが、自分はここに女を買いにきたわけではない。決してスケベ目的で来たわけではない。断じてそんなことはあり得ない。しかし、そうか、借金のかたに親に売られてきっと苦労しているのだろうなあ……助けてあげたいのは山々だが、しかし別に但馬はここに女を買いにきたわけじゃないから、残念だが、仕方ないなあ。但馬が買わなくっても、別の誰かが買うだろう、きっと、人気もありそうだし。だから平気だ、平気だが、別にそれなら但馬が買ってもいいんじゃないのか? もちろん、自分がここへ来た目的は、動力確保と言う真面目なものだったが、当てが外れて手持ち無沙汰なこともある。そういえば、ブリジットはそもそも自分が女を買いに来たと思っていたのだし、そう、始めから対外的には自分は女を買いに来たのだ。ならば問題あるまい。一度は身請けが決まったのに、それがぽしゃった。可哀相ではないか。だからボランティアだと思って、彼女にお金を渡したらきっと喜んでくれるんじゃないだろうか、その見返りとしてお礼を受け取っても悪くないだろう、ウィンウィンの関係だ。なんかこの場合ウィンウィンと言うとローターが動く音みたいで卑猥だ。ところでさっきから気になっているのだが、あれはBカップではなかろうか。AでもCでもない。Bカップである。但馬はBカップが好きだ。Aほど動きが少なくもないし、Cほど豊満感がない。もう膨らみかけのツボミというほどでもなく、かといって成長余力も残している。これからの時代を担う若人にぴったりのサイズだ。そして丁度男の手のひらにフィットするサイズがBだとも言うし、Bカップを見るたびに、こう後ろからギュッと抱きしめたくなる。胸を。正に包まれるために生まれてきたサイズといって過言でもないだろう。ああ、Bカップ。素晴らしきBカップ。もしも彼女がBカップであるならば、但馬は溢れんばかりの包容力で包み込んであげたい。ところで但馬にはステータス魔法がある。もしもそれで彼女のサイズがBであったならば、ここは一つ暖かい気持ちになって、前途ある若者を応援するのも悪くないのではなかろうか、主に金銭的に。Bカップかなあ……Bカップじゃないかもなあ、ちょっと自信ないなあ、Aカップかも知れないなあ~……いやあ、残念だ。Aカップだったら残念だ。と言うわけで、ステータスオープン、ていっ!


『Anastasiya_Shikhova.Female.Human, 157, 42, Age.14, 81B, 56, 82, Alv.0, HP.74, MP.18, None.Status_Normal,,,,, Prostitute, Lydian,,,,, Prayer.lv5, Cast.lv5, Rote.lv9,,,,,』


「なん……だと……」


 まさか、Aカップだと思っていた少女の胸が、なんとBカップであった。自信はなかったが当ててしまったからには仕方ない……とか言ってる場合じゃない。


「ジュリアさんジュリアさん?」

「なにかしら~ん?」

「彼女、いくつなの?」

「上から81、56……」

「スリーサイズじゃなくて、年齢! Age!」

「あら~、今年いくつだったかしら。確か14歳ね~」


 ズガンッッッッッ!!


 但馬は後頭部を鈍器でやられたような衝撃を受けた。胸のサイズとか気にしてる場合じゃなかった。


「馬鹿なっ! 青少年保護条例はどうなってるっ! アグネスは!? 鬼女が黙ってないぞ!」

「何のことだかさっぱりよ~」

「いや、だって、14歳とかありえないでしょう? 年齢的に、そういうことしちゃいけないでしょう?」

「?? 14歳は立派な成人よ~ん? お姉さん、ボクが何考えてるのか分からないわ。買わないんだったら、どっか行って頂戴よ、もう……」

「合……法……だとっ!?」


 その瞬間。


 但馬は駆けた。


 阿片窟を走りぬけ、バラック小屋のオッサンを蹴り飛ばし、物乞いを吹っ飛ばして駆けに駆けた。泥を蹴り上げ、水溜りを飛び越し、砂埃を上げて駆け抜けた。やがて穀倉地帯が見えてくるとその脇を全力疾走し、駐屯地のある丘とは別の斜面を突き進み、いくつもの斜面を上り下りして、ついに森の手前までくると、辺りに誰も居ないことを確認し、


「ユニバアアアアアアアアーーーーーーーーッス!!!!」


 そして吼えた。


 但馬の魂の叫びが、ローデポリスの街中に響き渡った。森に潜んでいた魔物たちがざわめきだした。駐屯地は敵襲を想起し、警戒態勢に移行した。港では海鳥が一斉に飛び立ち、船が波もないのに揺れた。


 但馬は止め処なく流れ出る汗を拭った。居ても立ってもいられず、こんなところまで駆けてきてしまったが、未だに興奮は冷めやらない。だってそうだろう?


 ここは優しい世界……


 山本圭壱がいていい世界……


 合法ロリの世界なのだ!!


 なんというファンタジー。ドバドバと涙腺から塩水を垂れ流し、但馬はこの世界に来て良かったと、初めて心の底から純粋にそう思えた。


 そうだ、祝砲を上げよう。


「高天原、豊葦原、底根國……いろいろすっ飛ばして……なぎ払え迦具土ィィィ!!! ィヤァァアアホオオオォォーーーーイィィーーー!!!!」


 突如、光球がリディアの空に出現した。


 それは昼間だというのに燦然と輝き、太陽を消し去るほどの光を放った。


 やがてそれは天高く上ったと思えば、


 ズドドドドドドドーーーーーーーーーーーン!!!!!!


 と、盛大な音を立てて、爆風とともに弾けとんだ。


 その日、ローデポリスの家々の窓ガラスが、数千枚も割れたと言う。謎の現象に人々は慄き、市内は厳戒態勢が敷かれ、子供たちは外出禁止になったそうな。


 そんなこととは露知らず、なんか魔法をぶっ放した影響で賢者タイムみたいな心境になった但馬は、


「いかんいかん……」


 と呟きながら、来た道を戻っていった。


 丘を転げ落ちるように駆け抜け、穀倉地帯を舐めるように通り過ぎ、天に向かって命乞いみたいなことをしてる浮浪者の脇をすり抜け、数軒が吹き飛んだバラック小屋を尻目に、水車小屋まで帰ってきた。


「買おう」

「わっ! あんた……一体どこへ行ってたの~? 急に走って消えちゃうもんだから、もう戻ってこないと思ってたわ~」

「すまない。買おう」

「それにしても、さっきの凄いのはなんだったのかしら~? ここからだと良く見えなかったのよね~。あんた、知らな~い?」

「知らん知らん。買おう」

「そう……残念ね。え? 買うって……?」

「買おう」

「あ、あ~、やっぱり~? うちの看板娘を袖にするような人、居ないわよね~……ナースチャ! ナースチャいらっしゃ~い」


 但馬が消えたので一度部屋に戻っていたらしき少女が、またひょっこりと顔を覗かせた。相変わらず、何か困ったように眉間に皺を寄せて、上目遣いに彼のことを見上げた。


「アナスタシア……」

「え?」

「アナスタシア、です。お買い上げ、ありがとうございます……」


 その仕草が一々可愛い。但馬は頭がクラクラした。


 さっき賢者タイムみたいになったと言うのに、もう勃起力が53万くらいにまで跳ね上がっている。


 こら、あかん……きっともの凄いドロッとしたのが出るぞ……


 思えば異世界に来て、ろくなことが無かった。でも今日まで生きてきて本当に良かった。天国のお爺ちゃんお婆ちゃん。但馬は今日、童貞を捨てます。きっと濃厚な遺伝子を後世に伝えてみせるから、安心してくれよな。


 そして、まるで酸欠の鯉みたいに鼻の穴をパクパクさせつつ、鼻息が荒くなった但馬がいよいよ彼女に触れようと手を伸ばしたら……


 グイグイ……


 と、但馬の肩を引っ張る手が伸びた。


 例の客引きの幼女だろうか? もう大丈夫だよ、お兄さんまんこ買うからね……と思いつつ、また彼女に手を伸ばそうとしたら、


 グイグイ……


 と、今度は但馬の上着が引っ張られた。


「って、なんだよ! もう! お兄さん、いま忙しいの!」


 しつこく引っ張られるので、イライラして但馬が振り返ると、そこには幼女など居なくて、


「……よう、先生。俺らが非番なのに、インペリアルタワーの便所掃除を延々させられてたと言うのに……」


 ビキビキと、青筋を立てたエリックが指をポキポキと鳴らした。


「分隊長がもの凄い形相で歩いてくるから、理由を聞いてみれば……嘘だと言ってくれよう、先生……」


 心底呆れ果てたと言わんばかりに、マイケルが天を仰いだ。


「ねずみ講騒動で、俺らは厳罰を受けていたっていうのに……そうかい、先生はこんなところで女を買ってるなんてなあ……あははははは!」


 まるで目が笑ってないシモンが嬌声のように笑い声を上げた。


 但馬はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「まあ、待て、話せば分かる」

「問答無用! 天誅~!!!」


 そして但馬はボロ雑巾のように畳まれた。何しろ相手は現役軍人三人であるから半端無い。


「ぎゃあああ! 正直すまんかった! すまんかった! 俺が悪かったから許して! おまえら結構鍛えられてるから、マジで洒落にならんのじゃあああああ!!!」


 突如現れた軍人三人にボコボコにされる但馬を見ながら、ジュリアがやれやれと言った顔で呆れていた。アナスタシアはそんな騒動を見ながら、


「……それで、お金は。くれるの?」


 と言いつつ小首を傾げた。その仕草がまた一段と可愛いものだから、但馬は涙がちょちょぎれるのを止めることが出来なかった。あと少し、ほんの少しで自分も世紀末リーダーになれたのに……


 但馬波留、19歳。来年はいよいよヤラハタなのである。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こんな長文怪文書は久々に見たきがする……過去最長が確か1万五千字だった
[良い点] なんやこいつやばすんぎw
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