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【書籍化&コミカライズ】伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした  作者: ごろごろみかん。
3.伯爵令嬢リンシアは共同戦線を張る

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7話:秋のホラー案件

どうやらルーズヴェルト卿は、マリア先生と内密の話がしたそうだったので、私とクラインベルク様は先に部屋を出る。

懐かしさを覚える構内を歩きながら、私はまず、受付窓口へと向かうことにした。

マリア先生から学院長に話を通しているとのことなので、泊まる部屋を確認しなければならない。


(懐かしいわ……以前ここにいた時は、何としてでも卒業しなければと必死で……。またここに来ることがあるなんて思いもしなかった)


しかも、地下の禁書室への立ち入りを許してもらった。これが、浮き足立たないでいられようか。目的は調査だけど、ワクワクする気持ちを抑えられない。


(せっかくマリア先生に会えたのだもの……!早駆けの腕輪の魔法式を見てもらいましょう。講評をいただきたいわ。改悪化はしていないと思うけど……ああ~~~これなら、今まで作った魔道具全部持ってくるのだったわ!!)


そんな場合では無いけれど、でも、マリア先生に会えるのはものすごく貴重だもの。今になって、あれも持ってくれば、これも持ってくれば、と考えていれば、並んで歩いていたクラインベルク様が苦笑した。


「……本当に楽しそうですね、レディ・リンシア」


「えっ!?そ、そうですか?それは失礼しましたわ……はしたないところを」


「いえ、そういう意味ではありません。とても生き生きとしていて、あなたらしい。そうですね、水を得た魚、という言葉がまさに当てはまるように思います」


クラインベルク様の言葉は、心底そう思っているようだった。それに、私は肩を竦めて答える。


「ふふふ、ありがとうございます。仰る通り、私は魔道具造りが大好きなのですわ。マリア先生を心から尊敬しています。私もあの方のように、素敵な魔道具を造ってみたいものですわ!マリア先生の魔道具造りはとっても素敵なんですのよ。キラキラしていて、色鮮やかで、光が集まったと思ったら、一気に魔道具が生成されますの。まるで夢の景色のよう……」


魔法学院にいる時は、本当に楽しかった。毎日が驚きと発見の連続で、一年があっという間に過ぎた。当時に思いを馳せていると、思わず声に熱が入ってしまう。思わず語ってしまったことに気がついた私は、取り繕うように言った。


「……失礼しました。つい、熱くなってしまいましたわ。でも、本当に素敵なのです。クラインベルク様も機会があればぜひ、見てみてくださいませ」


私の言葉にクラインベルク様が微笑んで応えた。


そして、受付窓口に向かうと、私たちはそれぞれ寮の空室を借りる予定となっていた。鍵を受け取り、クラインベルク様とは一時間後に地下の禁書室に繋がる扉の前で待ち合わせをすることになった。

ルーズヴェルト卿にも伝えて貰えるらしい。


(この部屋も、久しぶりだわ……)


私に用意された部屋は、私が学生時代住んでいたところだった。扉を開けて、一歩足を踏み入れると、当時と変わらない空気が私を迎え入れる。


ふらふらと導かれるように私はソファに腰を下ろした。窓の外は既に真っ暗だ。

調査を始めても、地下だし、禁書室だし、深夜まで続けるのはやめた方がいいだろう。

私は本日使える時間を計算すると、気合を入れて席を立ち、荷解きを始めた。





そして軽食を摂り、ルーズヴェルト卿と合流を果たすと、ついに私たちは地下に足を踏み入れた、のだけど。


「さ、寒っ……!!ちょっと、いくらなんでも寒すぎじゃありません!?それに暗すぎてぇいッッ!!」


長い階段の先、地下は暗いししかも寒い。

マリア先生に持たせてもらった魔力灯を手にしているものの、これで照らせる範囲は微々たるもの。これなら前世の懐中電灯の方が、まだ明るかったわ……!!

まるで人魂のようなそれを手に突き進むが、暗いし寒いし、お化け屋敷としか思えない。

オマケに、目に入らなかった段差に突っかかって、転びそうになる始末だ。

前から勢いよくすっ転びそうになると、強い力で腰を引き寄せられた。


「だ……大丈夫ですか?レディ・リンシア」


あまりの転びっぷりに、ルーズヴェルト卿も困惑したらしい。恥ずかしい限りである。


「……ありがとうございます。ルーズヴェルト卿」


手を離してもらい、今度はしっかり地に足をつけ、足を踏み出した。それにクラインベルク様が言う。


「しかし、本当に暗いですね……。それと、声が聞こえます」


「声!?!?」


その言葉に思わず飛び退きそうになった、が先程の二の舞にはならないよう、足には力を込めておく。


(声!?何も聞こえないのだけど!?声ですって!?)


身構える私に、クラインベルク様がルーズヴェルト卿に尋ねた。


「聞こえませんか、ルシアン」


「いいえ。精霊の声は……ああ、これは」


と、続けてルーズヴェルト卿まで納得したように言うではありませんか……!!

二人には、私には聞こえない声(音?)が聞こえている!?

思わず私は、壁に取りすがった。


「何何何、何ですの!?お二人して悪ふざけかしら!?そういうの良くありませんわ!!だいたい季節柄、ちょっと遅いではありませんか!冬一歩手前にホラー体験とか求めてなくってよ!!」


「レディ・リンシア。あなたも少し、耳をすませて下さい」


「嫌ですわ、何ですのその死亡フラグは!?」



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