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【書籍化&コミカライズ】伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした  作者: ごろごろみかん。
3.伯爵令嬢リンシアは共同戦線を張る

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1話:お父様の多忙の理由

ルーズヴェルト卿の協力を仰いで起動確認した私は、その後リンメル伯爵邸に戻った。

お父様は変わらず不在のようだ。


自室に戻る途中、フローラが興奮気味に言った。


「すごい空間でしたわね、お嬢様……」


「そうよね……六人中三人が寝不足というのはなかなかの打率よね……」


確率にして、50%。

あの場では、半数の人間が慢性的な睡眠不足だったのだ。実に由々しき事態である。これ以上、その数値を上げてはならない。というか、向こう側の人間にはなりたくない。


私が頷きながら言うと、フローラが首をブンブンと振った。纏めた髪が乱れそうな勢いである。彼女は鬼気迫る顔で私を見ると、声をはりあげた。


「そうではありませんわ!お嬢様。あの方々は今や社交界でときめく、ご令嬢方にだ~~い人気なご令息がたではありませんか!!社交界人気ランキングでトップスリーを独占されている方々です!さっすがは私のお嬢様ですわ!!あの方々は見る目がありますわね!」


「わあ。そんなランキングがあるのね」


紳士のランキング表があるということは、淑女のものもあるのだろう。私は何位かしら。


自室に戻った私は、荷物の最終確認を行うと、予定表を確認した。

魔道具の調整が終了したので、多少予定は遅れてしまったが、明日出発すれば問題ないだろう。




晩餐には、エリオノーラ、レオナルド、お母様……そして意外なことにお父様の姿もあった。ここ最近、姿を見ていないと思ったのに。目を丸くしていると、どこかやつれた様子のお父様が苦く笑う。お母様とは一言も口を聞いていないようだ。

それに、コソッとエリオノーラが聞いてくる。


「お父様とお母様、喧嘩でもされたの?」


「そうねぇ……。お父様は忙しそうにしているから、その関係かもしれないわね」


間違ってはいないが、正解でもない、そんな答えを返すとエリオノーラは「ふぅん」と言った。そこまで気にしていたわけでもなかったようだ。すぐにエリオノーラは、隣のレオナルドとお喋りを始めた。


「ねえ、レオ。この前のティーパーティーの話だけど、あれは絶対レオに気があるわ。自信を持って」


「またその話?お前はすぐ、そういう方面に話を持ってくよな。だから知られたくなかったんだ」


「ま!せっかく教えてあげてるのに!それにレオだって満更でもなさそうじゃない。どうなのよ、そこのところは!?」


「……別に」


「ほらー!」


楽しげに話す2人の会話は気になるが、今から晩餐だ。お母様が咎めるように軽く手を叩く。


「食事の時間ですよ。レオナルド、エリオノーラ、私語は慎みましょうね」


お母様の注意に、2人は頷いて答えた。

そして、食事が運び込まれてきた。









(出立は、明日……)


ルーズヴェルト卿がリンメル伯爵邸まで迎えに来てくれるらしい。

まずは王都を出立して、西に向かって、港に向かう。そこからは船だ。


(定期船に間に合うようにしないと……)


それを逃してしまえば、次にくるのは翌日。一日のロスとなってしまう。


食事の後、私は自室に戻って、スツールに腰掛けていた。魔導書を読んでいたがいつの間にかウトウトしていた。


「……明日に備えて、もう寝ようかしら」


あの三人に注意をしたが、私も寝不足なのだった。とはいっても、彼らのような無茶はしていない。


だけど、通常より短い睡眠時間は確実に私の体力を奪ってきている。馬車の中で眠れるからいいか……と、少し無理をしていたのかもしれない。ふわぁ、と欠伸を噛み殺した時だった。


扉が叩かれて対応すれば、そこには執事のピーターが立っていた。


「お休み前に申し訳ありません」


「どうしたの?」


「旦那様がお嬢様をお呼びです」


想定外の言葉に、目を瞬いた。


意外な呼び出しに眠気もすっかり飛んだ。

ピーターに連れられて向かった先は、執務室だった。扉をノックし、入室の許可を問う。


「お父様、リンシアです」


「ああ。入りなさい」


その言葉を受けて部屋の中に入る。

お父様は執務椅子に座り、机の上には書類が何枚も広げられていた。


「ご用があるとお聞きしましたが……」


「明日が早いのにすまないな。だけど、お前が旅に出る前に伝えておかなければ、と思ったのだ」


この一ヶ月ほどで、お父様はだいぶ窶れたようだった。輪郭が鋭くなり、目元も窪んでいる。本当に、何をしていたのかしら……?


疲れた様子のお父様には休息が必要そうだ。そう思っていると、お父様が手で書類を示した。


「アウレリアにも後で話すが……。これは例の契約書に対する、告訴状だ」


「…………はっ!?」


驚いて執務机の上に置かれた書類を見ると、確かにそれは告訴状のようだった。





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