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【書籍化&コミカライズ】伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした  作者: ごろごろみかん。
2.伯爵令嬢リンシアは魔道具作りが楽しい

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19話:例えが酷いのではなくて?

私は、文官になるために、死にものぐるいで勉強して、復習して、多方面を納得させるために奔走した。とにかく、物凄く苦労をしたのだ。


『好きな男と一緒にいたいから♡』な~~んて、甘い考え(スイーツ脳)で入れるようものじゃないのよ。そんなに甘くないわ。

寝言を言うには時間が早すぎるっていうのよ……!


私の言葉に、セリーナが気分を害されたのかこちらに視線を向けた。それに、私は笑みを浮かべる。


「では、聖女様も文官登用試験を受けられるのですね。参考までにお伝えいたしますが……文官登用試験合格に必要な勉強時間は平均二、三年と言われておりますわ」


「ハッ……?二、三年!?」


知らなかったのだろう。唖然とする彼女を、私は目を細めて見た。


「ですが、今からでも全く問題ないと思います。やる気さえあれば、ね。聖女様さえよろしければ、私が使用した教材をご紹介しますわ」


ふたたび笑みを見せると、今度こそセリーナは黙り込んでしまった。

二、三年も勉強したくないと思ったのか、今すぐ魔法管理部に入りたいと思ったのか、そもそも文官には興味ないが、ルーズヴェルト卿のそばに居たいだけなのか……。


おそらく三つ目のような気がするが、文官も魔法管理部も、そう簡単に合格出来るものでは無いのだ。

特に魔法管理部はそうだ。筆記試験に合格しても、最終試験、つまり検証テストで落とされる確率は八割にも上るという。


文官の中でも、魔法管理部の試験は最難関だ。


完全に黙り込んでしまったセリーナに、やっと落ち着いたとみて、アデルハルトが声をかける。


「聖女様。これ以上の遅れは、私も庇えません。お叱りを受けるだけでなく、(ペナルティ)が発生するかもしれませんよ」


罰、という言葉に先程の私の言葉を思い出したのだろう。セリーナは短く舌打ちをすると、声を荒らげた。とても、聖女とは思えない振る舞いである。


「分かったわ。行けばいいんでしょ!行けば!!みんなして、私の魔力にたかる蝿どもが……!」


そう吐き捨てて、セリーナはちら、と振り返ると私を強く睨みつけてから──その場を去った。



まるで嵐のようだった。セリーナの後ろ姿を見送った私は、ふと思った。聖女とはとても思えない物言いだったのは、ともかくとして。


(聖女に群がるのが蝿なら、あなたは蝿に集られる肥溜めとか、生ゴミとか、そういうものになってしまうと思うのだけど……)


それはいいのかしら。少し気になったが、もうセリーナは去ってしまった。今更尋ねることはできない。


回廊に静けさが戻ってくると、私はルーズヴェルト卿に声をかけた。


「ルーズヴェルト卿」


彼の視線がこちらに向く。私は、先程の問答で得た確信を彼に伝えた。


「例の件、おそらく黒だと思いますわ」


「──」


ここは回廊で、誰が通りがかるか分からない。意図してぼかした言い方に、ルーズヴェルト卿が目を見開いた。


「……魔法管理部に向かうのでしたわよね?詳しい話は、そちらで」







「ああ、こちらにいらっしゃったのですね」


そうして、魔法管理部に向かう途中、王太子殿下の従僕であるコンラート・クラインベルクがこちらに向かって歩いてきた。

先程、執務室に控えていた従僕だ。ティーセットを配膳してくれたのは彼である。


クラインベルク様は、濡羽色の髪をひとつに纏め、背に流している青年である。

確か、子爵家の出だったはずだ。


彼は私たちを見つけた安堵からか、ホッとした様子だった。


「王太子殿下の命で参りました。先程、聖女様とお会いされたと伺いましたが、問題ありませんでしたか?」


「問題はありましたわ」


「えっ」


固まるクラインベルク様に、私は苦笑した。


「申し訳ありません。誤解を招く言い方でしたわね。問題はありましたけれど、ちゃんと対処しました。聖女様は速やかにお勤めに戻られましたわ」


「そ、そうですか」


私の言い方に、何か感じるものがあったのだろうか。ぎこちなく、クラインベルク様が頷く。

私は彼を見て、妙案を思いついた。というか、少し困っていたのだ。


「それはそうと、ちょうどいいところに来てくださいましたわ。これから私たちは、魔法管理部に向かう予定ですの。クラインベルク様もご一緒いただけると、大変ありがたいのですけれど……」


いくら仕事といえば、私には(不本意にも)婚約者がいるのだ。異性と2人きりになるのは体裁が悪い。


隙を見せるつもりはない。揚げ足取りなどされたらたまったもじゃないもの。

婚約破棄は、カミロの有責で、10:0でしなければ意味が無い。

そのために、今私は動いているのだから。

迂闊な真似はしたくない。


私の意図を察したのだろう。クラインベルク様が心得たように笑みを浮かべた。


「承知しました。では、ご一緒させていただきます」









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― 新着の感想 ―
職場で異性の同僚でも男女2人きりは外聞が悪いのか。もしかしたらオフィスに他の同僚が居るのでは。これまで魔法管理部の人員構成は触れていないし、オフィスすら訪れていないと思うのですが。
例えるなら蜂とかにしないと自分が花を名乗れないんだよなぁ 蝿扱いだとマジで自認がう◯ちになってしまう・・・
主人公のやり返しぶりが楽しいww それはそうと濡場ってエロシーンですよね? 濡場色の髪ってのはクラインベルク君が可哀想過ぎるので、別の色にしてあげてくださいw
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