表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした  作者: ごろごろみかん。
2.伯爵令嬢リンシアは魔道具作りが楽しい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/62

9話:魔法大国からのお手紙

彼はしばらく沈黙した後、頷いて答えた。


「元々これは、あなたからの依頼ですから。依頼結果をどうするかは、あなたにお任せします」


「あら……信頼していただいてる?」


「既に、あなたは魔法管理部の人間で、聖女対策本部の一員ですからね。信じていますよ」


あっさり言われ、今度は私の方が困惑した。




その時、続き扉が開かれた。眠たげに欠伸をしながら部屋に入ってきたのは、王太子殿下だ。彼は私の姿に気がつくと、目を瞬いた。


「ああ、すまない。レディ・リンシア。待たせてしまった?」


その言葉に答えたのは、私ではなく、ルーズヴェルト卿だった。彼は懐中時計を取り出して、時刻を確認しながら言った。


「流石だな、ヴィンセント。時間ピッタリだ」


「覚えさせられてるからね。嫌でも目が覚めるというものさ」


嫌な習慣だね、と続けて王太子殿下はソファに座った。彼に促されて、私もその斜向かいに腰を下ろす。


そういえば、ずっと立ちっ放しだったわ……。


ルーズヴェルト卿が控えていた侍従にお茶の支度を命じた。


ちら、と顔を上げる。

王太子殿下は、先程まで寝ていたとは思えないほどいつも通りだった。

このまま外に出ても、先程まで仮眠していたとは露ほどにも思われないだろう。切り替えが早いのだと思う。


彼は首を傾げ、柔らかな笑みを浮かべた。


「それで、レディ・リンシア。本日のご用向きは?」


「はい。まず1つ目ですが、王太子殿下。今件──聖女セリーナの違法魔道具使用の疑いについて、今現在、判明していることをご教示いただけますか?情報共有は、大事ですもの」


私の言葉に、王太子殿下が頷いて答えた。


「その件については、私も手配を進めていた。ルシアン」


王太子殿下がルーズヴェルト卿を見ると、彼は本棚から新たな冊子を2、3冊ほど手に取り、戻ってきた。ルーズヴェルト卿がそれをドサッとテーブルの上に置く。

1冊1冊の量は、かなりのものだ。思わず目を丸くした。


「こちらが、現状を纏めた報告書です。王太子殿下の無茶な要求に従い、まる2日かけて作成しました」


(えっ、突貫で作ったの!?)


既に作成していたとかではなく!?

驚いたが、私のせいで余計な労力が発生したのだ。私は申し訳なくなった。


「それは……お手数をおかけしましたわ」


ちらりと窺えば、ルーズヴェルト卿の目元は赤みがかっていた。しかも目も充血している。

さっきまでは気が付かなかったけれど、青灰色の瞳の下には、くっきりとクマがあった。


(ひゃ~~~~!!申し訳ないわ!!)


ただでさえ、ルーズヴェルト卿にはカウニッツ伯爵家の件で、動いてもらっているのだ。

過剰労働、という言葉が頭を過ぎった。

ルーズヴェルト卿に命じているのは私では無いけれど、間接的に私のせいである。


(今度、何かお礼の品を贈ろうかしら……)


いや、彼が最も欲しているのは睡眠だろう。

それなら、安眠グッズ?よく眠れる魔道具の方が喜ばれるかしら?


そんなことを考えていると、ルーズヴェルト卿が首を横に振った。


「ああ、今のはあなたへの言葉ではありません。……聞いてるよな?ヴィンセント?」


睨まれた王太子殿下がにっこりと笑う。


「いやぁ、優秀な側近がいて私は幸せ者だね!」


「俺は魔法で動くタイプのビスクドールでもなければ、睡眠を不要とする特異体質でもない。何回言えば分かってくれるんだ、お前は?俺を過労死させる気か?」


「大丈夫大丈夫!その時は私もフェリクスもレディ・リンシアも!皆で仲良く総倒れさ!」


「えっ」


何か今、巻き込まれたような……!?

巻き込まれたわよね、完全に!?

過労死とか、絶対嫌なのだけど!?


思わず王太子殿下に視線を向けると、彼は私にバチン、とウィンクをした。

何かのアイコンタクト……なのかしら。

どちらにしても、過労死組からは脱退したい。心底そう思う。


その時、ルーズヴェルト卿がため息を吐いた。


彼も本気で言っていたわけではないらしい。そのまま話を進めた。


「……現状報告書ですが、最初に経過、そして調査結果、と並んでいます」


突然、話が戻ったので面食らうが、私は冊子を手に取って確認した。ルーズヴェルト卿が説明を続ける。


「調査結果はあなたもご存知の通り、全てナシのつぶてでした。……ですがまあ、空振りだったことがわかっただけでもひとつの収穫でしょう」


「ありがとうございます、ルーズヴェルト卿。後ほど確認させていただきますわね。では、本日私が登城した2つ目の用件なのですが」


顔を上げて、私は王太子殿下を見た。

ひとまず、ルーズヴェルト卿への贈り物の件は、一旦保留だ。


私はシャトレーヌの先に繋げた小物入れから、先日届いた手紙を取り出した。


数日前、エルドラシアの教授から返信があったのだ。


私は、すっとその手紙をテーブルの上に置いた。


「エルドラシアの教授(せんせい)から、お返事がありましたわ」


想定よりずっと早かったのだろう。

王太子殿下とルーズヴェルト卿は虚を衝かれたように私を見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ