第10話 夢(2)
「どうだったかしら。妖精になった気分は?」
「わたしを騙したんですか、女王さま!」
「騙したんじゃない。試したのよ、あなたが妖精と心を通わせるに足る人物かどうかをね」
「……」
斉藤香奈……カナサは怒りにも哀しみにも似た感情を、どう処理したらいいか迷ってしまった。ここは夢のなかだと、なぜだかはっきり認識ができた。現実ではないし、人間界でもない。
きっかけは夢だった。
もうすぐ自分の前に妖精の男の子がやってくる。でもその男の子は妖精としてのちからを失っていて、それはカナサがぶつかった拍子に奪ってしまったからだと。そのまま自分のものにするもよし、男の子に返すもよし。あなた次第だと、夢にでてきた妖精としか思えない女性はいったのだ。
「わたしは精一杯、男の子に寄り添ったつもりです!」
「あなたの自己満足よねえ」
「やろうと思えばもっと好き勝手できたのにしませんでしたけど!」
「あなたの自由よねえ」
「じゃあどうすればよかったんですか!」
「簡単なことよ」
女王は、彼女のかたわらまで寄り添うと、耳元に位置を固定した。
ふっ、と息を吹きかけられたので、カナサはぞくぞくしてしまった。
それでも怒りと哀しみは収らない。
「…………」
「あなた、妖精の女王をやってみる気はないかしら?」
はいっ?
何を言われたのかわからなかった。
妖精を探していただけの自分が、妖精になって、しかも女王ですって?
笑うところよね?
「あはははっ!」
「笑えるでしょう?」
「冗談もここまでくるといっそすがすがしいですね!」
「冗談じゃないから困っていたのよねえ、あっちもちょうどよさそうだし」
「あっち?」
「妖精界に新しい風を吹き込む準備よ」
なにをいっているのかしら、このおばさん。
どこかで、だれかが同じことを言っているような気がした。




