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勇者と王女のワールドエンド  作者: 小来栖 千秋
第二章 クルニカ王国、伝承の地編
47/83

(29)

 

 クルニカ王国は東部が海に面した国だ。

 四方を他の国に囲まれたエレナ王国と違って、東部を海に、西部の国境をセイス大河に守られているため比較的平和な国と言える。長期的に争っているのは、地続きである北のドンゴア帝国だけだ。

 その東海岸沿いにあるムニス。

 漁業を主な生業としている者たちが多く暮らしているさほど大きくない町だ。小さな港にはいくつもの漁業船が並んでいて、ちらほらと漁帰りの人々も見える。夏を目前として、旬な魚が大量に釣れているようだ。

 そんな長閑(のどか)な町に、『四人の処刑者(クアトロ・エヘクトル)』の四人はいた。

 彼らがいるのは、町の小さな酒場だ。

「――大丈夫なんですか?」

 唯一の女性であるソニアが、大怪我を負ったリカルドを気遣う。

「あぁ、この程度なんてことはない」

「もう三〇超えてんだから、無理すんなって」

 タメ口で一番年長であるリカルドに話しかけるのはアレクシスだ。

「うるさい。ドッシュ将軍からの命令だ。なんとしても成し遂げなければならなかったのだぞ」

「分かってるよ。っても、『闘神姫(ヴァイオレント・プリンセス)』も勇者も取り逃がしちまったんだ。どうすんだ?」

「……任務は継続中だ。そうだろう?」

 と、同じテーブルに座っているもう一人の男へふった。

『四人の処刑者(クアトロ・エヘクトル)』の四人と同じテーブルについているのは、ドッシュが特別作戦班に同行させたスパイの男だった。彼は『四人の処刑者(クアトロ・エヘクトル)』の戦いを離れた場所からじっと見ていたのだ。

「……え、えぇ。皇帝陛下からはなんとしても捕えるようにと命令が――」

「ということだ。俺たちは任務を続行する」

「その怪我で?」

「言っただろう。この程度の怪我など問題ない。皇帝陛下の勅命をしくじるわけにはいかないからな。でなければ、わざわざ軍に同行した意味もなくなる。何のために外へ来たのだ」

「へいへい。それで、奴らはどこに行ったか分かるのかよ?」

「さぁな。まったくだ」

「……はぁ。そんなんで任務続行って言われてもなぁ~」

「しかし、問題はないだろう。殺してしまったが、特別作戦班の連中は勇者たちが東行きの馬車に乗っていたと報告していた。戦いから二日経ってしまったが、まだクルニカの東地域にいるはずだ。そうだろう?」

 と、リカルドはスパイの男に確認する。

「え、えぇ。やつらは奇妙なオーブを使った後、東のほうへ逃げていきました。馬車が向かっていた方角からも東に何か目的があるのだろうと――」

「――それで、とりあえずこの町に来たってわけね」

 スパイの話に、アレクシスたちも納得したようだ。

 それで、とダビドが口を開く。

「どこから捜索を? ヨーラスブリュックでの戦いももう終結したようですし、いつまでもこの国に残ることは出来ませんよ」

「あぁ、気になる地域がある。そこを調べたら、本国に戻るぞ。今回は例外で国外任務についているが、本来は国内が主な活動領域だ。いつまでも帝国を放っておくわけにもいかないしな」

「……分かりました」

 話を終えて、『四人の処刑者(クアトロ・エヘクトル)』とスパイの男は立ち上がる。

 リカルドが口にした気になる場所とはどこか。他の四人は誰一人として、ぴんと来ていないが、リーダー格のリカルドについていく。

(……おとぎ話の勇者は宝玉を探してパンゲアを探しまわっていた。――となると、あのお姫様が勇者を連れている理由も同じものだろう)

 その口からは、不敵な笑みが零れていた。



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