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勇者と王女のワールドエンド  作者: 小来栖 千秋
第二章 クルニカ王国、伝承の地編
30/83

(12)

 

 エルベルトがセイスブリュックの基地に帰ると、ノランが血相を変えて走ってきた。

「どうした?」

「不味いことになりました! ゴルドナはクルニカを攻めるつもりのようです!!」

 ノランの話を聞いて、エルベルトも顔色を変える。

「この国をか?」

「はい! スパイが口を割りました。セイス大河に架かっている橋に割かれている軍を探っていたようです。クルニカとゴルドナを繋ぐヨーラスブリュックを攻め落とすつもりのようです!!」

「ヨーラスを!? 宣戦布告は?」

「まだのようです! しかし、取り逃がしたスパイが情報を伝えているとなれば、近日中には――」

「すぐに伝令を送れ! 父上にもだ! 援軍を要請する!!」

「かしこまりました!」

 誰もがゴルドナ帝国の戦力はまだ回復していないと見ていた。それほど先の戦争は長引き、大きな損害をそれぞれの国に及ぼしたのだ。

 しかし。

(考えが甘かった……ッ。セイス大河を失えば、クルニカの防衛網はあっさりと攻略されかねない……!)

 南からセイス大河を北上し、支流をさらに上れば、クルニカ王国の都はすぐそこだ。そうなれば、クルニカ王国は簡単に負けてしまう。それだけは、免れなければならない。

「こちらからもヨーラスに援軍を出す! 二個大隊を送るぞ。俺が指揮する!」

「セイスブリュックからもですか!? ドンゴアへの対処は――」

「そっちはエレナ王国のベンタイム城塞にお願いする。エグバート陛下に親書を書こう! 早馬の準備を急げ。――いや、連絡鷹の用意を!」

 次々に指示を出して、エルベルトも自身の用意を始めた。

 セイスブリュックの駐屯基地は慌ただしくなる。セイス大河は、クルニカ王国を他国と隔てる国境線だ。そこを侵略されることが何を意味するのか、知らない者はいなかった。



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