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第五十九話 おのれローズ…

11/16 改変しました。

その光景を何と例えればいいのだろう。

土煙と爆炎が舞い上がり砂粒や砕石片が辺りに撒き散らされて、やはり貴族階級の住む区画なのか綺麗に整備された石畳みのメインストリートをまるで大きなミミズの大怪獣が通った後の容易に大きく抉れたその光景はまさしく異常。辺りにパラパラと砂粒の落ちる音だけが虚しく響き渡るその様は事態の壮絶さを静かに語っていた。


そして、その異常の対象であるローズはまるで石になったかのように動くことは出来ずただ目を見開くだけ。


さらに、ソフィアも一応何かプルプルと動いてはいるが一歩も足を動かすことはなくただ立ち尽くすだけであった。


―――――


あの瞬間、ソフィアが時間制御の呪文を紡いだ瞬間ローズの横を虚しく通り過ぎて行ったナイフは低い唸り声のような音を放ちながらまさに流星のように火炎と衝撃波をその周囲に展開しながら後ろへ…飛んでいた方向とは真逆の方向へぶっ飛んでいった。

当然通り過ぎて行ったナイフから完全に注意が逸れていたローズは突然の、意識が反応しきる前に迫りくるその脅威に対抗することは出来ず……彼女がソレに反応出来たのはそのまま流星ナイフを(・)通り過ぎた後であった……





「あれぇ~~?」

ソフィアはそのローズに当たらなかったナイフに疑問を抱いたが、疑問を抱くまでもなくそれは当然のことである。


ソフィアが使った時間制御魔法は対象物、今回の場合ナイフだけをこの星の自転時間から減速させた魔法で要するに星の自転方向とは逆の方向へモノを動かすように見えさせる魔法であり、そのためソフィアは月の位置から方角を確認してローズにナイフをわざと避けやすい、彼女曰く眠っちまいそうなスピードで放り投げローズが避けて油断したところで後ろからグサリ――というのが理想のビジョンだったが、当然初撃にてローズは攻撃を避けてナイフと星の対角線から出てしまっているためナイフが当たらないことは何も不思議ではなかった……。


そして、丁度ソフィアの真ん前から迫ってくる火の玉を見たことで寧ろ攻撃を仕掛けた自分がナイフと星の対角線にいることに気が付いたソフィアは自らの技に「この技使えね~~☆」という感想を残して真っ白な光に飲み込まれた……








「……か、母さん…………」

「…言いたいことがあるなら言いなさいよ……っリオン…」

ナイフは…ソフィアに届くことはなかった。どうやら途中で完全に燃え潰れてしまったようでソフィアの1m手前でその抉れた後も消失していた。


…問題はそこではない。



「…その~さ、あれはやっぱりしょうがないよ。だって母さんのとっておきの魔法だったんだから。威力だって物凄く高かったんだし……ね?」

「ええ……しょうがないわね。確かにしょうがない……わね」

魔法についても正直あれだけ思わせぶりにしておきながら殆ど使えないクズ魔法ではあったが用法によっては可能性はある。


それも問題ではない。



「え~と…え~と……そうだよ!僕とアリシアだって6歳くらいまでしちゃっていたんだからさ………」

「うん…うん…そうよね…そうだよね。リオンもアリシアも7年前はよくしちゃっていたわよね…」


問題は………ソフィアの丁度真下の水溜り。


……そして真っ赤なフレアスカートの丁度下腹部より下の布の色が心なしか濃くなって…もといぐっしょり濡れて水滴が滴り…



「うるせーーー解説!素直に26にもなって漏らした情けない大人とでも言えよ!馬鹿野郎!馬鹿野郎!!悪いか自分の攻撃を自分で喰らいそうになってビビッて漏らしちゃって!!くっそ~これもそれも全部ローズ!お前のせいだ!お前が全部悪いんだ!!」

「………え!?わ、私!?これどう見ても貴女が勝手に攻撃して勝手に自滅しているだけじゃない!なんで私のせいなのよ!!」

「母さん……流石にそれはないと思うよ?」


「……はっ!そうかこれはエンディミオンの攻撃だな!?恐らくス○ンドのような特殊攻撃で私を辱めようとしているに違いない!くぅ~~~おのれエンディミオン!」

結局全てエンディミオンのせいにすることでソフィアは無理矢理納得した。そう自分がこのローズに襲われているのも、…漏らしてしまったのも、減速アクセル自転ドラップが思いのほか使えないのも全部エンディミオンが悪いのだ!と真実を知ればあまりにも可哀想なことを平然と考えるソフィアであった。


「貴女…さっきから何を言っているのよ!?エンディミオン様を呼び捨てにして、訳の分からないことばかり言って……気持ち悪いのよ!」

「あぁ?エンディミオンのただ性交することしか頭にないアーグルとかスニーティとかと同等の屑野郎なんざどうでもいいって言ったんだよw」


「う…嘘……こいつがエンディミオン様を罵倒までした?あ…あり得ない……さっきまで本当に泣いていたのに…心を挫いたはずなのに……」


未だ腹部にぶち込んだ鉛玉の痛みに憎しみを孕んだ視線を向けてくるローズを無視して駆け抜けながらコンテンダーに次弾を装填。本当は殺すのはやりすぎと思うのだがこの手の輩は何しでかすか分からないのと俺個人の因縁があるため確実に殺す!そして銃口をローズに向けた瞬間、嫌な気配に咄嗟に飛び退くと案の定さっきまで私がいた場所から黒透明な触手が湧水の様に生えてきていた。


風の鉄槌に触手の魔法、いやまだあるかもしれない。

昔やったRPGゲームでは闇属性の敵は炎水風土それぞれ闇の~という名前ではあるが全部の属性の魔法を使えていた。考えすぎかもしれないが対人戦の命のやり取りなら下らない固定概念は捨て去るべきだろう。ローズが再び暗黒の触手を展開し攻撃態勢を取ったことからこちらも警戒を強めて中距離を保ちつつ先程の場所から私に向かって伸びてくる触手を走って避けながら期を伺う。


…しかもどうやらローズは減速アクセル自転ドラップの恐怖から完全に抜け出してしまったようだ。正直減速アクセル自転ドラップに怯えていた表情はちょっぴり…本当にちょっとだけ可愛いと思ってしまったが、再びエンディミオン病が発症したのか焦点の合わない妖怪の様な表情へ変わってしまった。



………勿体ない。


「やっぱり……やっぱり貴女は悪魔よ!罪を認めて泣き出したと思ったら今度はそんな平気な顔でエンディミオン様を罵倒して!気持ち悪い!気持ち悪い気持ち悪い

気持ち悪い」


ローズは焦点の定まらない目で私を見据えて四方八方へ暗黒の火球を放ってきた。案の定別属性の魔法を使ってきやがった。それにしてもこえぇよ…その顔。

焦点の合わない目でボサボサの髪を振り回しながらキーキー声で喚き炎をブッ飛ばしてくる。さながら昔行ったお化け屋敷で最後に待ち受ける山姥みたいだな、とか

要らないことを考えながら後転して火球を避ける。

「エンディミオン様は私だけ…私だけのモノなのに。だからエンディミオン様の子供も私のモノ。…せっかくベジャン様にあんたを貰ってくれるようにしたのに!」

ベジャン?そういえばスニーティの奴も言っていたが白の国の王で私の捕獲に噛んでいる奴だったっけか?…というかさっきこの女、ベジャンに私を貰うようにけしかけたとか言ったよな!?恐らく女癖が悪いエンディミオンの夢中であるソフィアを排除して自分に目が向くようにする工作だろうが、なんてことしてくれたのでしょうこのくそったれ!だからあのスニーティとか白の国の兵にベラストニア戦争でやたら狙われたのか!

「…よく知ってるよテメェみたいな気に入った男を見つけると醜い顔を隠すように熱い化粧をしてどんな汚い手を使ってでも篭絡しようとして、(アサギ)みたいな男には余興と高級ブランド品を買うために在りもしない痴漢の罪を着せて金を奪い社会生活も滅茶苦茶にするようなクズ女…」




こいつの言を聞くたびに心の中がイライラとしてなにかどす黒いものが噴出するような錯覚を覚える。


あれは今でも鮮明に思い出せれる。一時期会社員として先輩や上司に罵倒され胃を痛くしながら何とか耐え抜いて生活していた時期。その日も夜遅くまで残業して帰る途中で突然後ろにいた化粧臭い女が叫び出して俺のことを痴漢痴漢と叫んで俺は即刻駅員に取り押さえられて警察へ連行させられた。警察を介した女の話では俺が化粧女の尻を触ったとか何とか証言しているらしいが嘘言え!俺はその時片手は携帯を握って前に出していたし片手はつり革を掴んでいた!しかも女の証言では右側から触られたと言っていたが右手はつり革にある。俺は何処ぞのゴム人間か?当然それを訴えたのだが世の中は女性に優しい(笑)のため結局俺の証言は無視されて俺は多額の慰謝料を支払わさせられて、会社ではより罵倒されて精神を病み、一時期自殺未遂をするまでになった。当然会社はクビになり再就職をしようとしたのだが前科持ちの俺をどこの会社も受け入れるはずもなく、結局何事にもやる気がなくなりフリーターとなってだらだらと生きてきた。


だが、心の底では激しい憎しみがあった。罵倒した会社の奴ら…信じるどころかまともに話も聞かなかった警察。手がつり革にあり犯人じゃないのを知っていながら罵倒し冷たい視線を飛ばしてきた周囲の連中。そして裁判で有罪になった瞬間大声で高級ブランドメーカーに注文の電話を入れる糞女。


「絶対ブチ殺してやる…!加速アクセル弾丸ショット

俺の憎しみの全てを弾倉に込められた弾丸に詰め込み、静かに引き金に手を掛ける。


―――――


撃鉄が下り火薬に火がついたと同時に暴発する寸前まで込められた魔力の爆発的加速魔法によって音の速度をも凌駕する推進力を得て、石畳を破壊する衝撃波を放ちながら銃口から解放され光の矢となってローズへ向かっていった。


「―――――ひぃ……っ!」


が、弾丸はローズを突き刺すことなくその1m前で完全に焼き潰れてしまった。

「くそ!混入魔力量が多すぎたか…!だが今度こそはあの顔に風穴ぶち開けてやる!」

恐怖に歪むローズの顔に一瞬、あの女の顔を幻視する。あの…裁判で嘘泣きをしありもしないストーカーの罪まで俺に着せて最後は有罪判決が出たと同時にほくそ笑みながら俺を見下し

『あら残念だったわね?でも誰からも好かれない、愛されないアンタみたいなクズの話を信じるわけないじゃない。警察も周囲の人もこの私がお礼とお願いをしたら皆味方になってくれたわ。あぁそれとお金ありがとうね~これで彼としばらく遊んで暮らせそうだわ☆』と俺にしか聞こえない声で告げたあの化粧女……


『頭大丈夫か?いや元々使えないクズだったしまさか痴漢なんてするとはなぁ。ザマァw』

『女の子に卑劣な行いをするなんて最低ね。ねぇ早く消えてよ。すみませーん!ここに変質者がいます!!』

『お前さ、前科一犯…それも痴漢だろ?それがうちで働くなんて評判悪くなるんだから雇わなくて当然だろ?馬鹿ですかー?』

『ケッ…結局こんな裏カジノに売り飛ばされて。親にすら捨てられるとは哀れだな』


どいつも…こいつも…みんなみんな俺を見下して…馬鹿にして…好き勝手言いやがって……






『あんたなんか愛してくれる人この世に一人もいるわけないじゃない』

『誰からも愛されないエンディミオン様のお遊びに勝手に本気になってる愚かな女なんか誰も相手にするわけないじゃない』



誰からも愛されない?……誰からも?………あぁそれなら………




「あーそーだ!!俺は誰からも愛されないさ!みんなからの嫌われ者だ!だったらどうした。テメェらが俺をいらないというなら俺もテメェらの居るこんなくそったれな世界なんざ必要ねぇ!そもそも愛情なんてただの性欲でしかねぇーんだよ!!殺してやる!殺してやらぁこの糞アマ!!このヤリ○ン!何が愛情だ!何が恋だ!テメェもエンディミオンもみんなみんなぶち殺してやる!!」




―――やめてアサギさん!何も殺さなくても!それに彼女はあの人が愛した人。私殺したくない!!


「あああああああ!!!殺す殺す殺す殺す殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!」

一瞬ソフィアさんの声が聞こえた気がするが俺は自らの中から湧き上がるどす黒い何かを押さえることが出来なくてただローズに…エンディミオンに…そしてあの糞女や俺を馬鹿にした職場の奴らへの殺意と憎しみに飲まれて……それを弾丸に込めて怯え這いつくばるローズに銃口を向けて引き金を絞り―――――









「やめるんだ!ソフィア!!」

その男の声に引き金を絞ることの一点に動いていた俺の体は氷の様に動かなくなってしまった。


ソフィア(アサギ)が壊れました……が、SOFIYIIIIIIII--!!といって無双するのと憎しみに囚われるの…憎しみの方がマシな気が…

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