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第二十五話  森の離宮

お待たせしました。

スランプのどん底脱出です。

ポペルの森、ドダイトス山脈の西に位置し山脈から王都までの道を塞ぐかのように広がっている広大な森。いや、森というより樹海という表現の方が正しいだろうか。あまりの広さと木の密度から例え昼であっても日差しがあまり差し込まず夜や明け方のような暗さからこの地域の開発は殆ど進んでおらず、唯一森を横断する道…とは名ばかりの途中で消えかかっている馬車道しかこの森を抜けるルートは無かった。


本来この森の中に古くからある村を経由すれば少しの夜営は必要となるが特に問題なく森を通過できるのだがリーシェライト一家は…


「ねぇ、母さん。ここって本当に正式な馬車道なの?明らかに馬車道どころか歩道すら…道と呼べるものがないよね?」

「お母さん…お腹減ったよぉ~。森の中の村ってまだなのぉ~?」

「さーせん」



絶賛遭難中だった。




side  ソフィア


馬車道を歩いていたはずが気が着いたらやたら荒れている道に出てそこから進むにつれどんどん道とはとても呼べない場所に来て早や5日、既に私たちが居る場所はもう森としか形容のしようがない様な場所にまで来てしまっていた。

しかもこの森、同じような木が延々と生えていて目印になり難くまるで樹海のようなもので、さらには方位磁石(この世界で使えるかは不明だが…)を持っていないので方位すら分からずただひたすら最初に西だと思った方向に進んでいるだけだが本当に西に進んでいるのか、いやそもそも前にちゃんと進んでいるのかでさえ分からない状態だった。


「うぅ……おかぁさん…お腹減った……」

「アリシア…僕のビスケットあげるからこれで我慢して」


さらに最悪なことに鞄の中の食料が昨日の晩で尽きてしまい食料を得る手段が現地調達しかなくなってしまったことだ。…いや、食料となる植物や果物、動物がいる森だったらまだいい。この森、一切動物がいないのだ。森に入ってこの方全く動物に遭遇していない。正直森に入ってしばらくは野うさぎとか狸のような動物がいたのだが奥へどんどん進むにつれて見かけなくなって行きもう道と呼べる道がない所まで来た時には鳥の鳴き声すらしない静寂の空間に突入していた。果物に関しても雑木ばかりでそれらしき木が一向に見つからない。


そんなわけで元の道云々以前に速く食料を確保しないと本格的にまずい事態という訳だ。



「あれ?ねぇ母さん、何か前にお城があるよ?」

「……リオン、あなた疲れているのよ。とりあえずお母さんの分のビスケットあげるから食べなさい。」

全く、無理して自分の分の食料を妹にあげようとする所は流石私の息子といいたい所だけど幻覚を見てしまうくらい憔悴しているんじゃ駄目じゃない。目の前に広がるのはひたすら緑緑緑緑。ほらお城どころか建物だってないじゃない。

それにしても今朝からやたらと目がぼやけるわね……。そういえば遭難してから子供達にパンとかビスケット与えて私あんまり食べてなかったけどそれで体力的にやばいのかしら?いやいや、そんなことはない、そんなことはない。大の大人がたかだか数日飲まず食わず程度で倒れるとかそんなわけが無い。


「でもお母さん、本当におっきなお城がある…お母さん!?ちょっとお母さん大丈夫!?」

あれ?アリシアが3人に増えている。そしてぐるぐる回って………








side リオン


「母さん!母さんしっかりして!!」

僕に自分の分のビスケットを渡そうとした母さんが突然崩れるようにして倒れた。倒れた母さんの顔はやつれた感じになっていて蒼白で生気が感じられない。急いで頬を叩いたり揺すったりして起こそうとしたけれど全く起きる気配を見せなかった。


「お母さん!ねぇ起きてよお母さん!いやぁ…死んじゃいやぁ!」

アリシアが泣きじゃくりながら母さんを揺するが起きる気配が全く無い。


……そうだ、なんで僕は気がつかなかったんだろう。母さんは森で遭難してから食料は殆ど僕たちに譲って自分は碌に食べていなかった。しかも疲れて歩けなくなった僕やアリシアを交代で負ぶさっていて夜も何だかんだで警戒してずっと起きていた。これで倒れないわけがない。


もし僕がもう少し我慢して食料を母さんにあげていたら…もし僕がもう少し頑張って自力で歩いたら…もし僕が少し無理をして夜の見張りをしていたら……


そんな後悔がぐるぐると頭の中を駆け巡った。





「どうかなされましたか?」


「……え?」

突然の声に前を見るとあのお城の門から一人のメイドさんが出てきていた。メイドさんは静かに僕とアリシア、そして倒れている母さんを見て少し驚いた表情をしてから再び視線を僕に戻すと微かに優しそうな表情になった。

「おねぇさん…お母さんを……お母さんを助けて下さい!」

「なるほど。おおよその事情は分かりました。今すぐそちらの方を屋敷に運びます。お二方も中へお入り下さい」

それだけいうと指をパチンと鳴らして新たに二人のメイドさんを呼ぶと新たにやってきたメイドさんも倒れている母さんを驚いた表情で見つめ気を取り直すと素早く、だけど丁寧に屋敷へと運んでいった。


「さ、お二方も中へお入り下さい。すぐに係りのものに御召し物と晩餐の準備をさせます故」

メイドさんに案内されてお城の城門をくぐるとそこは先程の森とは別世界が広がっていた。日の光に照らされた手入れの行き届いた庭にピカピカの噴水、大聖堂等で置かれていたものと全く謙遜ない程の出来の彫刻。それらが適切な配置でゆったりとした空間となっているまさにお城…いや王宮の庭といっても全く不思議じゃない完成された庭が広がり、さらにその先には先ほどは遠くて分からなかったが、かなり立派なお屋敷…というよりもう既にお城としか呼べない建物がそこにはあった。


「お…お兄ちゃん……すごいねこのお屋敷…」

「うん…それより母さん大丈夫かなぁ…」






「きゃぁぁぁぁ!アリシア様可愛い!とっても似合ってますよ」

「リオン様もかっこいい!!あの、将来彼女とか候補なければ私を貰って…」

「シルヴィア、貴方は何を寝ぼけたことを言っているのかしら?速くお二人のお召し物を調えなさい。既に晩餐の準備は済んでいるのですよ」

…これはどういうことなんだろうか?最初に出会ったメイドさん、リオネッラさんに連れられた僕とアリシアはそのままこの部屋でメイドさん達にとっかえひっかえの着せ替えをさせられていた。ちなみに母さんはただいま治療中でどうやら睡眠不足と栄養失調、疲労で倒れてしまったらしくお見舞いに行きたいのだけど絶対安静とのリオネッラさんの言葉で会うことは出来ないでいる。


でも何でただの旅人でしかない僕たちにリオネッラさんやメイドさん、執事さん達は丁重に接してくれるのだろうか?それに僕やアリシアに様付けまでしているし…


「リオン様、アリシア様、お召し物の準備が整いましたので一階の晩餐室まで起こし下さい。」

どうやらようやく着替えが終わったみたいだ。何か僕は知らないうちにどこかの王子様みたいな豪勢な服を着ているし指にもいつに間にか綺麗な光を放つ宝石の指輪が嵌められているし。


そういえばアリシアは……

「お…おにいちゃぁん……どうかな…?」

そこには――――お姫様がいた。いや、お姫様としかいえないアリシアがいた。美しく彩られた薄水色のドレスによってただでさえどこかお姫様の様な容姿をしている彼女がより…というか完全なお姫様として生まれ変わっていた。しかも美しく梳かれた銀色の髪にはいつかアリシアが欲しいと言っていた青い宝石の髪飾り…より明らかに綺麗で澄んだ青色の宝石の髪飾りがその月の光のような髪をより引き立てている。


「あ…アリシア…なの?本当に?」

「う…うん。ねぇ似合っているかな?」


はにかみ聞いてくるアリシア。正直似合っているなんてものじゃなくてまるで欠けたピースが完全に嵌るといった具合にその格好でいることこそが本来の姿と言えるほどのレベルだった。


そう、正しくお姫様…


「お、お姫様だなんて…恥ずかしいよ……」

声に出てしまっていたらしい。なんだか恥かしいな…。

「えっへん、当然ですよ!この私シルヴィアがコーディネイトしたんですから。それにお姫様というのも間違いでは……っと、これは禁句でしたね。ではお二人共一階の晩餐室まで案内します」


そのままシルヴィアさんに案内されて晩餐室へ向かうとそこはまるで母さんが昔はなしてくれた物語のダンスパーティー会場のような広い広いお部屋に長机が一つと椅子が二つ用意されていて机にはスープが一皿だけ…?やっぱり僕らみたいなどこの馬の骨とも分からない者にはこれだけで十分と思ったのかな?それとも実は嫌われているとか。とはいえ数日ぶりのマトモなご飯であることは確かだし母さんの看病もしてくれているのだからこれくらいで文句を言ってはいけないし文句を言うのは筋違いと言うものだ。


僕とアリシアはメイドさんが引いてくれた椅子に軽く頭を下げてから静かに座りいつも家でやっている食事前の挨拶…ではなく教会でやっていた食前のお祈りを済ませてから食事に取り掛かった。


……けど


「失礼、そのフォークとナイフの持ち方はマナーがなっておりません」

「皿の音を一切立てずにお食べ下さい。」

「リオン様?何故メインディッシュがまだですのに御席をお立ちに……もしや料理が口に合いませんでしたか!?」


と、こんな感じで一口食べるたびに何かと駄目だしされてしまった。なんとか言われたとおりのフォークとナイフの持ち方を実践し、お皿の音を立てないように注意しながらスープを食し、次々と運ばれてくる料理に唖然としながらいつも片手で掴みながら食べていた肉の丸焼きをナイフとフォークで綺麗に切り分けながら食べ……と、今までで最も疲れる晩御飯だった。


でもどこか指摘された動作がやけに浸透しやすかったのは気のせいだろうか?




「ねぇお兄ちゃん、これから私たちどうなるのかなぁ?それとお母さん大丈夫かなぁ?」

「分からない…分からないけど……何だかここの人たちそんなに嫌な感じがしないんだけど」

不思議だった。初めて会う人ばかりなのにまるで昔というか赤ちゃんの頃に会ったことがあるような懐かしい感じをここのメイドさんや執事さんから感じた。その証拠にあの人見知りのアリシアが何だかんだでメイドさん、特にリオネッラさんを受け入れていたところだ。


そういえばここのお屋敷って多分どこかの貴族様の物なんだろうけど僕たちみたいな部外者を入れてしまっていいんだろうか?それとここの主人って誰なんだろう?









side ソフィア


「なぁにこれぇ?」

目を覚ましたら天幕付きのやたら豪勢なベットで寝ていた。確か最後に覚えている光景はリオンとアリシアと3人で巨大な肉を食べまくる……あれ?でもあれ何だか夢だった気が……そうだ!森で急にリオンがお城があるとか幻覚を見てしまってそこから―――の記憶が無いのだが…


「気が付かれましたか御嬢様」

「うひゃっい!!?」

急に声を掛けられ変な叫び声を上げてしまった。見るとそこには初老の執事服を着た男の人が立っていた。

「あ、あの~どちらさまで?それと私はなんでここに?そしてリオンとアリシアは?」

ふと、執事の老人の目が温かく優しいような感じで私を見つめているような気がするが気のせいだろうか?

「私はこの屋敷の執事長を勤めさせておりますジルドと申します。御嬢様はこの城の門前で倒れられたため屋敷に運ばせて頂きました。リオン様、アリシア様につきましては現在晩餐室で御食事を取られております」

執事さんは的確に私の質問に答えてくれた。


「そ、そうですか。すみませんご迷惑をおかけしたみたいで…。とりあえず子供達の顔が見たいので晩餐室に向かってもいいですか?」

とにかく二人の安否が気になる。まぁ晩餐室で食事中というのだから間違いなく無事どころか豪勢な食事まで貰って宜しくやっているようだから安心かな?…あれ?その食事の代金とかって…もしかして、というかやっぱりというか後で私が払わなくちゃいけないよね。




…お金足りなくない?



「なりません。御嬢様にはとあることを達成するまでリオン様、アリシア様に御会いになることは許しません」

あああああああああああ。やっぱり来たよ金の請求!この執事さん助けてくれたいい人だと思ったらところがどっこいとんでもねぇ悪徳商法してきやがった!どうせ子供二人が食べた無駄に高い料理代金とか今現在私が使っている天幕付きベットの使用量とかで相当な額を請求されるに違いない!まさかこんな異世界のこんなわけの分からん森の辺鄙な屋敷でまでこんな悪徳商法が蔓延っているとは…この世界はやはりどこもかしこも悪だらけじゃねーか!しかも私の最後の癒しであるリオンとアリシアまで奪われて…


「御嬢様にはこれから私指導の下、魔力を完全に操る術"錬魔術"を学んで習得して頂きます。本当は"攻の術"が良かったのですが如何せん時間がありません故ご理解下さい」


「………は?錬魔術…?」

一ヶ月の間お待たせしてご迷惑をお掛けしました。

とりあえずスランプは脱却しましたが文章の書き方が久々に書いたので正直雑です。またいつスランプに陥るか分からないのでとりあえず話を進めることを最優先で書いていきたいと思います。申しわけありません。

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