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教科『異世界』の時間だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-天使の羽編

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第十九話、天使の羽

 どこの街のギルドも、中に入れば内装は大体同じだ。受付があり、交流のための休憩スペースがあり、依頼紙を貼り出す掲示板があり、売店があり、近辺の情報をまとめた情報誌が置かれた情報室がある。


 だが、この街のギルドは、通りの他の建物と同じように水色の塗装が建物にしてあり、外観からしてなんだかお洒落な雰囲気を感じている。


 いつも通り依頼を見にギルドに来れば、入り口入ってすぐ、きょろきょろと何かを探している感じの子供が居る。


「どうしたのー? パパやママは近くに居るー?」


 俺が声を掛けると、凛とした顔が俺を見上げた。


「近くには居ないが、私は一人でも大丈夫だ。私も冒険者だからな」


 思いのほかしっかりした受け答えが返ってきてびっくりする。


「あなたも冒険者か? 今は人手が欲しい、あなたが私を手伝ってくれないか?」



「私の名前はツバキ、この街には最近移動してきた。冒険者としても始めたてだ」


 燃え落ちた灰のような髪色、髪の毛に癖はなく、頭からまっすぐ下に下りてきている。少女の頭は俺の目線より下にあり、凛とした目線が俺を見返してきている。


 少年っぽい立ち振る舞いだが多分女の子だろう。多分。最近子供の冒険者が多いな……世も末だ。まぁ俺もまだ子供だけど。


「初めて依頼を受ける際には、他の新米でない冒険者の付き添いが必要だという。あなたが私に付いて来てくれないか?」


 初心者冒険者の付き添い依頼か。ギルドでは、新人冒険者へのサービスが手厚く、この新人への付き添い依頼には、その付き添った人間に対してもギルドから少なくないボーナスが出たはずだ。俺としても美味しい話。


「別にいいけど、この街の近くのモンスターは手ごわくて、新人冒険者にはオススメしないね。手間は掛かるかもだけど、ほかのもっとモンスターの弱い狩り場のある町から始めた方がいいんじゃないかな」


「助言ありがとう。しかし、私は冒険者になる前からモンスターと戦っている。肉体の強度にも自信がある。この街の近くでも問題はない」


 肉体の強度って……少女(推定)の体を見るが、特段鍛えているというような感じは伝わってこない。まぁ、体つきは細くしなやかで、身軽そうではある。


「特異体質かなにか持ってるの?」


 シラアイの、鬼の血みたいに。すると少女は答える。


「身体強化の魔法が使える。力も強くなるし、肉体の強度も上がり、怪我を受けにくくなる」


「使い方を俺に教えてください」


「すまないが私の固有魔法なんだ。ほかの人が使えるところは見たことがない」


 固有魔法ってなんだ。お前だけしか使えない魔法なんてそんなのずるいぞ!


「まぁ、見てもらったが分かりやすいか」


 少女は立ち上がり、何やら言葉を唱える。ほわと、少女の周りにきらめく光と淡い虹が現れ、少女の体に吸い込まれていった。


「今の私が強化された状態だ。ほら、試しに私のお腹を殴ってみてくれ」


 と、少女はお腹をたくし上げ俺に見せてくる。白くて綺麗なおなか。


「倫理規定に引っかかるので無理です」


「何を言っているんだ? ……まぁいい、では両手を出してくれ」


 と、少女は俺に向けて両手を差し出してくる。俺も同じように差し出すと、手を絡めとられ握られた。


「今の私は、魔法により尋常ではない力を得ている。あなたに振りほどけられるか?」


 俺は引っ張ったが、確かに手はほどけなかったが、少女の体が軽く、俺が引っ張るままに付いてくる。


「かるいね」


「今はそんな話はしてない。頑張って振りほどいて」


 俺は後ろではなく、左右に開こうと引っ張ってみる。少女の腕は、まるで鉄骨で固定されているかのように微塵も開かない。


「ほんとだー、力つよーい」


 不思議ー。手が離された。ふわと、きらめく光が少女の体から抜けていく。


「そんなわけだ。力も強いし、耐久性にも自信がある。丸太で殴られても平気だ。狩りもきっと大丈夫だろう」


「おっけー、じゃあ外行くぞー」



 街の外に出てきた。世界は、鬱蒼と茂った巨大樹の森に埋め尽くされている。木々が作った木陰の中を歩いていく。見上げれば、青空は暗い枝葉の隙間の向こうにある。土の上に二人分の足音が歩いていく。


「君の背中のそれは、君の武器?」


「あぁ」


 と、彼女は背中のそれを手に取って見せてくれる。何でもない銀色の長い棒。持ちやすいようにか、棒の所々に溝がある。きらりと、周囲の森の景色をその細い鏡面の中に歪んで映している。


「刃がないね」


「私は不器用だ。刃の付いた剣では、私の手が怪我をしかねない。このロッドは振り下ろして殴るだけだ。私の力なら、剣で殴るのも棒で殴るのも与えるダメージに大差はない」


 ふーん。彼女の話に耳を傾けながら、俺は周囲の気配に意識を広げつつ、森の中を歩いていく。


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