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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-エピローグ6、フロストベルト・“古代樹林”

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第二百四十八話、風のキャラバンーII

 道は森の中に入っていった。カラカラと、荷車は茶色い砂肌の道の上を進んでいく。周りには木々が生え、視界は薄暗く。道の上には木が生えておらず、森の切れ目の間の光の中を、荷車がカラカラと進んでいく。


 やがて小さな広場が見えて、俺たちはそこで休憩を取ることにする。ネコがツチを連れて森の中へと入っていった。


「お二人さん。私のことは気にせず、木か何かだと思ってくれていい」


 荷台の中から声がする。


「思ってるけど」


「さぁ、うら若き乙女と男子が森の中で二人きり。何が始まるのかな?」


「うるさい木だなぁ」


 俺は、木陰に置かれた幌車の上に上がっていく。空の光は豊かな枝の葉っぱに覆われ、荷台の幌に隠されて、ここは二重に暗い。森の中、湿った、土の匂いのする風が運ばれてくる。


 ミナモさんも、恐る恐る幌車の中に入ってくる。


「あ、美少女!」


「あ、美少女」


 わーと、ミナモさんから、そっちの下半身根っこ少女へと近づき、手の平を合わせている。


「ミドリちゃんはねー、たまに街の中に紛れ込んでくる、やばげな小動物とかを倒しといてくれるんだよ」


「捕食行動だろ」


「私は街の中の平和に一躍買っているのだ」


 ふふんと、緑肌の少女はない胸を張る。俺は、幌車の中に、縁に背中を預けて腰掛ける。


「寂しくないか? 俺が居なくて」


 荷車の背後に佇む、植物型の彼女に話しかける。肌は薄い緑色、体の下から半分が茶色い根っこであり、一目で人間でないと分かる。


「寂しいと言ったら、ずっと私だけのものになるのか?」


「……」


「残念ながら、あなたの歩く場所はもう、私が立ち止まった場所から遠ざかっている。弱いままのあなたとなら、あるいは、一生旅をしても構わなかったかもな」


 風に、さらさらと、天井の木の葉が揺れている。


「お前からは、歩いて来ないのか?」


「私は立ち止まるのが得意なのさ。後ろから誰かが来ればそれを迎え、そしてその背中が遠ざかっていくのを見送る」


「そうか」


 でも……と、緑肌の少女は荷台の上から、森の景色を眺める。


「あなたのように、遠く上に居る人間か、それとも地べたに居る人間か。その二つだけだったら、次にあなたへと上がっていく、間の道しるべが居なくなる。私は私の居る場所で、みんなを迎え、送り続ける。次に私が旅をするとしたら……それは、次に現れる、あなたでない誰かだ」


「だから、近所の子供たちに唾付けてんのか」


 ふふふと、少女は笑みを含める。


「そっちは趣味だ」


「手は出すなよ」


 くぁと、対面に、同じように床に腰かけているミナモさんが、欠伸を漏らす。


「眠りたいなら眠ってていいぞ。私がここで起きている」


「俺は起きてるぞ。久しぶりの顔だ。とりとめのない話をしよう」


 ミナモさんはこてんと小さく横になり、俺とミドリが話をしていると、そのうち、がさがさと音が、森の中から戻ってくる。


「ごしゅじんさま! 蛇捕らえました! ヒメトラの狩りの腕は衰えていませんよ!」


「もう、泥だらけじゃない! 荷台に上がる前に体の土を払って! 汚れるでしょ!」


 ネコとタヌキは荷台の隣で、再び上から水を浴び、体を震わせて泥の混じった水を飛び散らす。




 カラカラと森の中、荷台はのんびりと人の歩調で進んでいく。俺たちの乗る荷台の前には、肩に猫を乗せた青髪の少女が歩いており、何やら話している。


「わ、わたしはもうタヌキではありませんよ。人として生きていくと決めたのです。だから、そのような扱いはおやめください」


 俺は荷台の中、縁の木板に背中を預けて床に座る。膝の上にタヌキを持ってきて、そのふわふわモフモフもちもちな体を堪能する。


「じゃあ明日からねー」


 ぼふ、と、白煙が目の前から湧き起こる。俺の膝の上に、短い茶髪の少女が対面して座っている。


「せ……セクハラです。先生」


 まだまだ幼さの残る顔立ち。少女は膝立ちで俺の前に立ち、影となって俺の顔を見下ろす。んー……。


「タヌキに人権はないよ」


「なっ……モンスター差別ですか!」


「俺と君の仲じゃないか」


「親しき仲にも礼儀ありですよ!」


「難しい言葉を知っているねぇ」


「そ、そんなに私の体を触りたいのなら……」


 と、子供っぽい少女が、声をつかえさせながら言ってくる。


「こ……このままでも。どうぞ」


「じゃあ遠慮なく」


「えぇ!?」


 俺は少女の両頬を手の平で挟んで、むにむにとその柔らかい肉を手の中で動かす。


「毛皮ないよツチ」


「ありませんよ!」


 気が強くなったかもなぁ。仕事をしている中で度胸が付いたのだろうか。しっかり者だぁ。


 俺は少女の体を引っ張ってちょいちょいと誘導し、そのまま俺の前に座らせて、後ろから少女の体に腕を回し、頭の上に顎を乗せる。


「ツチは綺麗になったねぇ」


「おじいちゃんみたいなこと言うようになりましたね……。というか、やっぱり小動物的な扱いしてますよね? これ」


「お小遣いが欲しいかい? 先日たくさん褒賞をもらってねぇ」


「要りません。今はもう、私は自分の手で稼げますから。先生こそ……その。何か欲しいものないですか?」


 少女は俺の腕の中で頭を回し、こちらをちらと見上げてくる。


「手の届く温かい毛皮」


「触らせません。金で買える幸せを言ってください」


「ツチは、俺は何を貰ったら喜ぶと思う? いっぱい俺のことを考えて欲しいなぁ」


「可能な限り面倒くさい方向にもっていきますね……」


 ぶつぶつと、ツチは渋い顔をして呟いている。


「お金は余ってるからねぇ。ツチちゃんは、俺のことを喜ばせることが出来るかな?」


「私の体を差し出せば余裕です」


「言い方ねー」


 陽光の降り注ぐ青空の下、道の上、荷台に揺られてからからと俺たちは進んでいく。


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