休み時間、不祥事
部屋に帰ってくると、ごそごそと音がする。右手を見れば、キッチンで何かをしているミナモさんを見つける。
「……何してんだお前」
「……お腹が空いて」
彼女はそこで固まって、気まずげに言葉を返す。
「……一応鍵は渡したけど、本当に緊急の時以外は使うなって言ったよな? 鍵をどっかに落として、部屋から締め出された時とか」
「緊急でお腹が空いて……」
緊急じゃないよそれ。と、見れば彼女が手に持っているのは布巾のようで、その隣には、ごみを入れる袋らしきものも落ちている。
「なに? 掃除してくれてんの?」
「……ただ食べ物もらうだけじゃ、悪いかなーって」
「だから、俺のキッチン掃除してくれてんの? その労力で食べ物買いに行った方がいいんじゃない?」
「ほら、そこは持ちつ持たれつで……」
部屋に勝手に入るなって禁は……まぁいいや。
「ふーん、殊勝な態度だな……って、うん?」
彼女の傍らのごみ袋をのぞき込むと、何やら知ってる匂いがする。
「……ずいぶんゴミが出たんだな」
「えっ? あ、うん、なんかいっぱい出て……」
俺は無言で冷蔵器を開けて中を覗き込む。
「……ずいぶんたくさん食べたんだね」
「……いやぁおかげ様で」
「汚したんだな?」
「……」
俺がそう聞くと、がぎと彼女の全身が固まり、つつと彼女の視線は逸れていく。
「お前、俺んとこの鍋の中身ひっくり返して、だから今、それを綺麗に掃除してんだな?」
「いや……」
彼女は、ふわふわと揺れる声で答える。
「アオイくんが帰ってくる前には、綺麗にするつもりだった……」
「お前ごと捨ててくるぞ」




