休み時間、スキル石“潜影”
「この前のこれ、やっぱりスキル石だよね」
前々から何度も確かめて、ようやく俺の成長武器に一つ目のスキル穴が開いたことを確認した。スキル穴は一つのスキル石を嵌めることの出来る容量のようなものであり、スキルの登録されたスキル石を嵌めると登録されたスキルを何の練習もなしに使えるようになる。
俺たちの手元にあるのは、以前“真珠の森”で相手した、変なウサギから落ちたスキル石。ビー玉くらいの大きさで、真珠のような光沢があり、色は、煤で汚れたような汚い黒。
「使ってみて」
「分かった」
隣にはミナモさんが居て、俺の手元を同じようにのぞき込んでいる。
俺は、自身のアイアンソードの剣に、刃の横からその玉を押し付ける。確かこんな感じだったはずだ。玉は、突然武器に吸い込まれ消えてしまう。
「これで使えるようになった」
「うん」
「どう使うの?」
「適当に発動したら?」
俺は武器を構えて適当に「“発動”」と唱える。
突然、俺の視界が落ちた。俺の足は地面に呑まれ落ちていく。
「おっ、おぶっ―」
俺は地面の下に落ちた。呼吸が出来ない、地面の下には、暗い、深海のような世界が広がっていた。俺は今、地面の下に潜っているのだ。
浮力は上に働いているようであり、そのままじっとしていれば上へ戻れそうだった。重力は上向き、だが地中は水中ほど動きに抵抗がある訳じゃない。視界の上には地面があり、水面のように、向こう側が透けていて、屈んで必死に地面を叩いているミナモさんの姿がある。
落ち着いてじっとしていれば、やがて俺の体は上向きの浮力に引かれ、浮上する。ぽんと、体丸ごと地面から吐き出された。周囲の音と、重い重力とが戻り、俺は地上に帰ってくる。呼吸も戻る。
「あ、アオイくん!! どこ行ってたの!!」
戻った途端ミナモさんに服を掴まれる。
「なんか、地面に潜れるスキルみたいだね。ほら……これを落としたウサギも、同じように影に潜って移動してたじゃん」
ミナモさんは俺に詰め寄り聞いてきたが、俺の説明を聞いて、だんだんと落ち着いてきたようだった。
「どうする? ミナモさんもこれ使ってみる?」
「……要らない」
「要らない? 俺がこのスキル石は貰っていいの?」
「いいよ。一つ目のスキルは攻撃系じゃないと弱いし」
とは言っても、今の俺の手持ちにほかのスキル石はないし、スキルスロットを空けておくのもなんだ。俺はとりあえずこれを入れておいていいかも。
「地面の下はどうだった?」
ミナモさんが聞いてくる。
「なんか、暗い、深海みたいな世界? 緩い上向きの浮力があって、で、潜っている間は呼吸はできないね」
「……もしかして、下から見えてた? 私」
「見えてたよ」
ばっと彼女は服の下を手で抑える。ミナモさんの今日の服は普通にズボンである、別に、下からのぞいたって何かが見える訳じゃない。
「悪用禁止!」
「してないだろ」




