休み時間、“雷”の変換器
頼んでいた変換器が届いた。俺は部屋を出て、街の外壁近くの荒野までやってくる。
街の中で扱える魔法には多少制限があるが、人や建物に害をもたらすような使用は、もちろん町の中では禁止だ。住んでるアパートの裏にも空き地があるが、そこは周りの建物との距離が十分でなく、いまだ制御の利かない魔法の練習はできない。
ということで、俺は何もない荒野までやってくる。近くに教室のある建物もあるが、校庭は空いてない時がある。
校庭では他の生徒たちが遊んでいたので、俺はそのまま荒野に伸びていく道を進み、適当な所で脇に逸れる。そこには何もない草原が、街を取り囲む壁まで広がっている。ここら辺にするか。
俺はバッグから変換器を取り出す、確か体の一部に取り付ければいいんだっけ。俺は服の上から、バッジのようなそれを取り付ける。
何か変わったような感覚は……あぁ、なんかピリピリしてきた気がする。気のせいかな? まぁとりあえずやってみれば分かるか。
俺はいつものように、魔法を撃つ準備を始める。まずは、全身を満たす魔力を意識する。魔力の貯蔵は十分、それを、手の平のほうへとかき集め、寄せていく。
手の平の中心に穴を意識する。そこから魔力が押し出され、外へと漏れてくる。空気中に漂うぴりぴりとした黄色の光。いつもの”風”の魔力じゃない、“雷”の変換器はちゃんと機能しているようだ。
俺は、手元に十分な魔力が引き出されるまで待つ。手元に丸い、淡い光の塊を作る、あとは起爆するだけ。
「“サンダー・バースト”」
俺が唱えると、光は収縮し、途端、瞬間的な稲妻の光を放って周囲に広がる!
「いったぁ!!!」
起きた雷は所かまわず周囲にあるものに激突、雷が俺の手に触れた途端、そこから強力なゴムで叩かれたような鋭い痛みが発生する。俺は飛び退る。
俺は強い痛みの衝撃が残る手の平を見下ろす。これは……なんだ? どうすればいい? 手元で起こした雷は、どうしてもすぐ近くにある俺の手を攻撃するぞ?
何も思いつかなかった俺は、家に帰って“雷”の変換器を棚にしまった。




