休み時間、対人闘技場
「勇者協会における新たな施設への転移を解放しました。よければご利用ください」
魔方陣を抜けると、そこはコロシアムだった。
「おー、すごーい」
「広いな」
そこにはドーム状の施設が広がっている。
ここは闘技場、特に、人と人とがやり合うことの出来る対人の闘技場だ。闘技場の外側には特殊な膜が張ってあり、この内部で受けた負傷は、外に出る際には治っているという。また、致命的なダメージを受けると強制的に場外に排出され、その際の傷も治る。その性質上、筋トレのような体を鍛えるトレーニングをここでおこなっても意味がない。
不思議な空間だな。まるで、夢の中で戦ってるみたい。
コロシアムは、決闘の行える中央のグラウンドと、その外側を段上に囲む観客席とあり、この特殊な膜はグラウンド内に張られてある。内部で魔法などを外側に撃っても無力化される。なお魔力の消耗は補われないそうで、魔法の練習にも不向き。
四人でぞろぞろと観客席に上がり、とりあえず下での試合を見てみる。
「やってるねー」
ここは勇者の施設であり、今土の上で戦ってる人たちも勇者、あるいは勇者見習い。
「私たちもとりあえずやってみるー?」
「……だれと?」
「まず自分たちで、じゃない?」
ミナモさんは自然にそう言ってくるが……想像できない。
「受付で申請すれば、実力の近い人を探せるらしいぞ」
「えー、知らない人とやるの怖くない?」
キララさんもワカバさんも乗り気のようだ。
「……知ってる人と、殴り合いたくないけど」
俺がそう言うと、
「木剣で打ち合うくらいなら大丈夫じゃない? 間違って当ててもケガしないし」
「えー……?」
「キョウゲツくん、そんな甘いこと言っててどうするの? 魔物の中には人型のタイプも居るんだよ? ちゃんと相手できる?」
「うーん……」
ワカバさんが、俺の顔を覗き込んでそう言ってくる。俺はとりあえず顔を逸らして言葉を濁す。
「まぁとりあえず中入ろうぜ。殴り返さない奴はタコ殴りだ」
「じゃあ中入んないよ俺」
「いいのか? 外でやったら傷が残るぞ」
「外でもやらない俺」




