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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-フロストベルト・”宝珠金鉱山脈群島”

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第百四十三話、元素暴走―II

 俺は大気中の魔力をかき集める。“風”に変容した魔力が、俺の剣の片方へと集まっていく。


「“疾風の―」


 俺はそれらをまとめて、重ねて、薙ぎ払った。


「“輪舞ロンド”!!」


 複雑に絡まった重い風の刃が、巡り、回り、空気を切り裂きながら彼の元へと一直線に駆けていく。


 しかし、彼の前に薄い、透明な壁が立ち上がる。風の刃は次々と壁に当たり、そして、力なく地面に落ちて溶けていく。


「足りない」


 彼の前から、透明な壁が端からぺりぺりと剝がれていく。あれは……彼の一門が使う結界術。遠距離では、あれを使う余裕があり、防がれる……。


 剣技もダメ、魔法もダメ……ならどうする? どうすれば彼の元へと届く? まだ、俺が挑むに早かったか?


 考えていれば、後ろから、ドタドタと荒れた足音が聞こえてくる。大きな頭が俺の背後から近づき、その顎を広げ、その口先で器用に俺の背中の裾を掴み、そして放り投げられた。


 俺はそのまま背後の地面に着地し、飛竜の背中を見る。長い尻尾が、ゆらゆらとそこで揺れている。


「ヴォォァァァアアアアア!!!!!」


 飛竜が鳴き、彼の元へと突進していく。しかしまるでスピードが違う、巨体が彼に牙を見せて噛みかかるも、すでに彼はそこに居ない、見れば左の別の場所に立っている。俺が適当に放った風刃は、彼に片手で弾かれる。隙もない。


 続けて、飛竜が息を吸い込み、口元から白い炎を吐き出す。炎が彼を横切るが、彼は不明な手段でそれを防ぎ、過ぎ去った後には無事な彼の姿がある。


 彼は剣を構え、静かに空を切った。


「“輪月”」


 弧を描く白い斬撃が彼の剣から発生し、広がりつつ飛竜の元へと飛んでいく。斬撃は飛竜の左翼を半分に斬り、右翼の上の部分を欠けさせ、そして喉元を切りつけた。喉元には横一文字の傷が出来、そこから太い首の骨が見えている。


 多分、飛竜は無事だ。スピードは彼が上回っているが、飛竜はその強靭な肉体の総量で勝っている。飛竜はそう簡単には負けはしない。


 俺は彼の真横から切りかかり、一度、二度、三度と剣を打ち合う。


「剣の腕は鈍ったか?」


「……」


 足で蹴り飛ばされ、俺はごろごろと地面を転がり、すぐさま立ち上がる。向こうには、月明かりに照らされて、悠然と溶岩の上に立ち構えている彼の姿が見えている。


「倒す手立てがないのなら、終わりにしよう」


 彼の手がこちらに向けられる。彼の手の中には、球状の、不明な現象が渦巻いていて―


 同時に、彼は飛竜の方を向いた。俺も、無理矢理にそちらに意識を引かれる。


 大気が動いている。否、これは龍脈だ、大地を流れる赤い龍脈が、糸を引いて集まっていく、そう、飛竜の元へと。


 彼は、手のそれを解いて飛竜へと向き直る。


 飛竜の周囲には、赤い龍脈が可視化され、太い帯となって飛竜の体へと吸い込まれていく。なんだ、何かをする気か?


 飛竜は片脚を持ち上げ、地面を強く突いた。地面が波打ち、そして。


 周囲にはすでに、地面に穴が開いて溶けた灼熱の溶岩が見えていた。そこかしこにあったその穴から、一斉に、溶けた溶岩が噴き出した。


 それだけではない、飛竜を中心に地面がひび割れ、沈んでいく。地面から溶けたオレンジ色の液体が湧き出し、黒い岩の地面を飲み込んでいく。


 ここは火山島の頂上だ。飛竜は火口の蓋を開けたのだ。


 俺は揺れる地面に、一つの岩の上に膝をついて終わりを待つ。近くの黒い地面が割れ、次々に液体の中に沈んでいく。強烈な熱のプレッシャーをそこかしこから感じる。


 暗い、荒れた岩の広場だった頂上の舞台は、溶けた灼熱の溶岩の湖に変わった。


 飛竜の足元に何かあるのか、飛竜は溶けた岩に脚を突っ込み、平然とそこに立っている。彼は左向かいの方で、割れた地面の薄片の一つに立っている。俺もまた、オレンジ色の灼熱の池の上に浮かぶ、黒い一枚の岩の上に立っている。


 飛竜が、口を開いた。喉元から、赤い光が生まれる。


 俺は瞬時に体の周囲に風の陣を展開させ、身を守った。飛竜の口からは、真っ赤な何かが飛び出した。目を塗り潰すような強い、赤の光だった。おそらく、それは最も強力な“炎”の魔法。それは、深度“9”の龍脈を用いた“竜門ドラゴンズブレス”。


 真っ赤な赤い奔流が飛竜の口から生み出され、溶岩の上に立つ彼を襲った。彼は堪らず上空に飛び出し、地面を赤い炎が通り過ぎる。足元の、加熱され気化した溶岩が大気中に一気に広がり、空気で冷え、輝くオレンジ色の霧となって地面を過ぎていく。


 彼は空中に飛び出し、そして溶岩の池の上に落ちた。彼は液体である岩の上に平然と着地する。足元を見れば、ただ溶けた岩が……違う、彼が降り立った途端、冷えて固まった溶岩の地面がある。


 彼は、それから地面に手を付いた。


「お前との力比べには付き合ってられん」


 彼の手の付いた地面が、どろりと溶けて小さな穴を作る。彼は溶けた溶岩に直で手を触れている。

また、飛竜の体の周囲で動きがあった。溶岩が盛り上がる、間欠泉のように、いや、不自然に持ち上がり、柱となって溶けた岩が空に伸びていく。太く大きな柱だ、それが何本も、飛竜の周囲に立ち上がり、そして飛竜の方へと倒れていく。


 溶けた灼熱の柱が砕け、飛竜の体を覆った。飛竜は溶岩くらい何でもなさそうではあったが、それは一斉に固まった。


 飛竜は頭を振る。胴体や翼を飲み込んで、溶岩の塊が飛竜の体を覆っている。


「これで少しは、大人しく―」


 どろり、赤い光が噴き出し、飛竜の体を覆う溶岩が一斉に溶けて、地面の池へと滴り落ちていく。飛竜は平気な顔して体を振り、体に付いた輝く液体を振り落としている。


「……やれやれだな」


 飛竜は溶岩の檻を脱し、喉を鳴らして彼の方を睨んでいる。


「やはり、こいつは殺すしかないか」


 俺の周囲は溶けた灼熱の池だ。俺はかろうじて浮いた溶岩の岩の上に立っているが、この上からでも周囲の溶岩が発する熱気を過分に浴びている。俺はあいつらのように平気で溶けた岩には触れられないし、見えている液体の中に飛び込めば俺は死ぬ。当然だ。


 でも、もう行くしかない。


 俺は膝を屈め、小さな安全地帯を飛び出し、溶岩池の空中へと飛び出した。


 5秒だ。“元素”は彼の能力、あらゆる物質を操り、そして生成する。世界を広く見渡しても他に類を見ない最強の能力、ではあるが、その能力には弱点もある。


 “元素”は能力の使用に際して、脳に掛かる負荷が高すぎるあまり長時間使えない。彼は、確か5秒ほど使えばもう気絶してしまうと言っていた。オールコピーにはスタミナ切れの概念がないため、累計では5秒以上の使用もあるだろうが、彼の能力は必ず5秒以内で完結する。


 彼は普通の人間だ、彼だって、溶岩に触れれば焼けて死ぬ。本来は。そうならないのは、彼が溶岩に対して“元素”の能力を使っているから。


 であるならば、彼を5秒以上溶けた池の中に押し込めれば、彼は能力の使用上限に引っ掛かり、自分の身を守り切れず焼けて死ぬ。


 だから、連続5秒だ。彼に連続して5秒以上能力を使わせ、溶岩に落とし込む。


 俺は足の裏から“結晶”を生み出し、溶岩の池に触れる前に巨大な“結晶”を作り出す。俺はそれを足場にしてまた跳ねる。虹色の濃い鮮やかな“結晶”塊は、溶岩の熱に負けてぴきぴきと瞬く間に自壊していく。


 同じことを三回繰り返せば、そちらに彼の立つ平らな溶岩の足場がある。俺はそこへ向けて、まっすぐ飛び込んだ。


「何を勝機に見たか」


 俺が上から切りかかれば、彼は青白い直剣でその一撃を受け止める。


「浅い」


 俺は弾き飛ばされ、背後に吹き飛ばされる。背中に、迫る溶けた溶岩の面が見える。準備が……間に合わない。



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