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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-フロストベルト・”宝珠金鉱山脈群島”

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第百三十二話、城壁破壊

 溶岩洞窟の中を歩いていくと、側面に、ぽっこりと出たお腹のような岩の膨らみがあった。見れば、その膨らみの丸みには、大小さまざまにきらきらとした鉱石が埋まっているのが見える。どうやらここは鉱脈があるみたいだ。


「でかい岩肌にたくさんの鉱石があるな。……持って帰ったらオチバは喜ぶだろうけど、どうやって採掘するべきかね」


「全部ぶっ壊せばいいんじゃないか? 瓦礫から石を拾えばいい」


 隣から声がして、キララさんみたいなことを言うなぁ、と、隣のワカバさんを振り返ると、黒髪の少女は肩に巨大なハンマーを背負っている。


「ぅぉおお前オチバじゃねーか」


「ただいまー」


 オチバは俺の隣に並び、俺を見てにかっと笑ってくる。


「お前いつの間に。いやお帰りが早いだろ」


「親方に言ったら、“その人のサポートをする方が先だ。力を貸して、たらふく貴重な素材を集めてもらってこい”と言われてな。確かにそうだと思って、戦闘用の装備に着替えてきた」


 オチバは変わらずピンク色のツナギを身にまとい、そして今回は、前の採掘用のハンマーとは違い、彼女の胴体ほども太さがある、大きな槌を持っている。金属製だが、それは鋼一辺倒ではなく、表面から内部まで何やらごてごてとしている。


「いや……お前、戦えんのか?」


「おや、私が戦えないと、いつか言ったか?」


 彼女は不敵に言い返してくる。


「質問に質問で返すな」


「はは、そいつはすまない。昔は鎧を着て、大剣を手に戦っていた」


 と、オチバは遠い目をして返す。


「今は?」


「新武器の開発では、私はある程度自分で武器を使いこなして戦う。実は、私は戦場からそう遠くない」


「馬鹿には、分かりやすく聞かないと答えられないか? お前は、『この深度“9”で戦えるのか?』って聞いてんだ」


 彼女は俺の顔をちらりと見て、それから、肩に背負った大きなハンマーに目をやる。


「最近は、ライフルと斧を組み合わせた“ライフルアックス”という武器の開発を行っていた。巨大な斧を地面に振り下ろせば、それはそのまま揺るがない銃座となり、敵に近づかれたら弱いというライフルの弱点を、斧型の形態で補完する」


 彼女はまた、あらぬ説明から始める。


「しかし、これが思ったより難しくてな、銃筒が曲がると弾が打てないし、長い銃筒を空洞にすると、斧を振った際の強度が確保できない。 “銀化”のような補強の素材を使おうにも、武器全体に掛かる負担が大きければ、消耗が激しく、長期の使用には耐えられない。“絶対に壊れない素材”で作れるならまだしも、これはコンセプトから根本的に破綻していた」


 そう言って、彼女は正面の溶岩壁を見つめる。そこには、大量のお宝が埋まった暗い岩の壁がある。


「しかし、私はどうしても武器にロマンが欲しかった。あと、私が使う、かっこよくて強い武器が欲しかった。私はコンセプトを改良し、実用にも耐えうるよう、それを槌型に落とし込んだ。それがこのハンマー。“榴弾”と“槌”という、まったく異なる分野の二つの武器を合わせて作った、私が考えた最強のハンマー」


 そう言って、彼女は体を回し、背中のそれを俺に見せてくる。太い牙を断って付けたような、平らな面と尖った面とある、曲がったハンマー。


「名を“大陥没グレートクレーター”。簡単に言えば、爆発して加速するハンマーさ。君の問いは、『私はこの深度”9“において戦えるほどの強さを備えているのか』、だったな。ならば答えよう。この武器は、『この深度“9”においても通用する威力がある』と」


 話が長い。


「一言で言え」


「火力は足りてると思います。今の私の体はそんなに鍛えてないので攻撃からは守ってください」


 それを最初に言え。


「試験運用は?」


「さすがに深度“9”で試したことはない。だが、ちょうど私は君が戦っているのを見たし、その上で、私はこれが通用すると思ってる」


 えぇ……? 見ただけ? 大丈夫かなぁ……。


「ちっ。エアプがよ」


「あぁ!? 私のグレートクレーターをバカにしてるな!? だったら今から見せてやるよその威力!」


 そう言って、オチバはハンマーを地面に垂らして構え、向こうの膨らんだ溶岩壁を見つめる。


「おい待て。そこは“破壊して大丈夫な壁”か?」


「私を考えなしだと思っているのか? ここの裏にマグマ溜まりはない。この膨らんだところを壊しても、空洞への崩壊に繋がる可能性は低い」


 ちゃんと地形は把握してんだな。どうやったか知らんけど。


「なんだ、じゃあ大したことないんだな、その武器」


「はぁ!? じゃあ全部ぶっ壊してやるよ!」


「やめろ考えなし」


「まぁいい。みんな下がっていろ」


 オチバに言われ、俺たちは、見える壁と反対側の空洞へと非難していく。


 丸く膨らんで突き出た溶岩壁の前に、ハンマーを携えた一人の少女が立っている。


「行くぞ!」


 彼女は声を上げ、重いハンマーを持ち上げて走り出す。こいつ、思ったより筋力があるな。動きを見るに、あのハンマーは彼女の体重と同等かそれ以上にある。重い足音が溶岩の地面を踏んでいく。


 着実な歩みが、ついに溶岩壁の前に到達した。彼女は下ろして引っ張ってきたハンマーを、下から振り上げる。


 壁に着弾する直前、ハンマーが尖った方が赤く赤熱する。


「“バースト”!!」


 瞬間、ハンマーが急激に加速し、壁にめり込む。ハンマーの平らな面は加速した衝撃を溶岩壁に余すことなく伝え、丸く膨らんだ溶岩は、正面から叩かれ、まるで餅のように凹み、波うち、波紋を生んで、黒い岩肌に蜘蛛の巣状の亀裂が走っていく。


 そして壁が弾け、一気に崩壊する。


「っオチバ!!」


 俺は地面を駆け、一瞬で彼女の体の元に到達、オチバの体を抱え、真上からなだれ落ちる溶岩を前に、真後ろに飛ぶ。


「あぁ!! 私のハンマーが!」


「定員一名だ!」


 俺は脇に抱えたまま、崩落し流れ落ちる溶岩壁を目の前に見送る。彼女の武器があの中に残ったままだが、まぁ後で発掘すればいい。


 魔力強化が解け、脇に抱えた彼女は体重に引っ張られ、地面にずり落ちる。


「ったく、無茶すんじゃねーよ」


 彼女は膝に付いた砂を払い、地面から立ち上がる。


「火力の余波に対して私の防御力が低すぎるな。これは、全身鎧でも着てた方がいいか。でも、ただでさえ武器も重い……」


「冷静に分析してんじゃねーよ。つーか、榴弾なら、持って生身で突っ込む必要ないだろ。ワカバみたいに、離れた所から撃って様子を眺めてればいい」


 と、俺が言えば、オチバは視線をこちらに戻して、言い返してくる。


「榴弾自身に、軌道を補正して命中させる機能はないぞ。そして、重い爆弾は必ず放物線を描き、弾速も遅く、見られればまぁ、避けられてしまうだろう」


「その“命中率”を、身を挺して補完するってか? それは“自分の体を危険に晒すリスク”と見合ってんのか?」


「うるさいなぁ、そこは君には関係ないだろ」


「誰がお前の体守ってやると思ってんだ」


「確かに」


 俺はオチバの正面に回り、彼女の体や顔を確かめる。


「ったく、無茶しやがって。怪我はないか? 破片は当たってないか?」


 俺の言葉に、彼女は目を逸らしながら答える。


「だ、大丈夫だぞ」


「“大丈夫だ”じゃねぇ、ちゃんと自分で自分の体を確かめてから言え」


 とりあえずオチバの顔を触って確かめるが、少し煤のような汚れが付いているだけで、目立った傷はない。なんのつもりか、オチバは目を泳がしながらそこに突っ立ったままでいる。


「まぁ顔に傷はないか。体は大丈夫か?」


 俺が聞いても、彼女はぽーっと、俺の顔を見上げたままでいる。


「……なるほど、ツバキはこういう気分か……」


「あぁ?」


「私の体が気になるか? 触って脱がせて、全身確かめていいぞ」


 と、ツナギを着た少女は、両手を広げて俺の何かを待っている。


「んなこと一々やってられるかよ。無事なら無事でさっさとハンマー拾ってこい。顔を殴るぞ」


「はぁ? 私は君に守られる側だぞ!」


「勝手に自称してんじゃねーよ」


 膨らんだ溶岩の壁は砕け、広い地面に粉々になって広がっている。俺は緊急でそこに居たボランティアを三名ほど収集し、広場に散らばった溶岩の中から、五人で石を拾い集めた。



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