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教科『異世界』の時間だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
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授業:魔法操作

「これは“導器どうき”、これは魔力と非常に親和性の高い素材で出来ており、中に魔力を通すことが出来ます」


 青空の下、白い校庭の上。先生の前に数人の生徒が集まっている。今日はいつもより数が少ない。先生は手に、小さな金属らしき棒を持っている。


「この“導器”は、魔法操作に特化した小型のものですが、通常のものは、剣や斧などの大きな武器の形をしています。“導器”はその形の武器としても扱え、さらに武器に魔法を纏わせ攻撃することもでき、魔法を放つための“器”にもなる。それは攻撃に魔法を織り交ぜることの出来る非常に優れた道具です」


 へー、“導器”。この世にはまだ面白い武器があるな。


「しかし、これは一本一本が高価なので皆さん全員に与えることが出来ません。気になった方は自分でお金をコツコツ積んで購入してください」


 ……残念。いくらぐらいするんだろう。でも自分の魔力を通すんだから、自身の魔力量には余裕が必要、魔法には敵との相性があるし、強いのは魔法で有利がとれる相手だけ。


 面白そうだが万能では無さそう。今すぐには要らないか。


「ここに、小さな“杖”型の“導器”が五本あります。今日はこれを使って、より複雑な魔法の操作に挑戦してみましょう」



 “導器”は属性の変換器を兼ねるらしく、自身の魔力は“導器”に通した時点で”導器”が持つ固有の属性に変わる。今ここにある五つの“導器”は、それぞれ“炎”、“水”、“風”、“雷”、“氷”の五種類、人間界でメジャーな“大自然系”の五大属性。


 今日の生徒は七人なので最低二人は順番待ちだ、欲しい杖が被った場合も順番待ち。多分、そのせいで今日の人数は少ないのだろう。


「前回までに、自身の魔力を用いて魔法を発生させるところまではやりましたね。前回までの魔法はただ魔法を発現させるだけの原始的なものでしたが、今日は”ボール型”を始め、壁のように展開したり、矢のように放ったりなど、いろいろな形の魔法に操作できるようになりましょう」


 第一属性というものがある。身体属性はそのまま自身の魔力の属性を表す属性だが、身体属性は属性一種類だけとは限らず、複数の属性が複雑な割合で混じってる場合があり、その場合は最も割合の大きい属性を第一属性とし、これを身体属性として名乗る場合が多い。


 この第一属性で言うと、俺は“風”だ。ミナモさんは“水”、モモモは“氷”らしい。


 ”導器”は五本しかなく、ここには七人いる。今は俺は休憩のターン。暇なので“氷”の杖を持ったモモモの練習を見守っている。モモモは宙に杖を掲げ、そこに魔法を集めているようだ。空中に何かが出来ていく、逆さの鋭い錘状の氷、それは見る間に少しずつ大きくなっていく。


「す、すごいですねモモさん! 氷の無いところでこれだけの氷柱を!」


 モモモはいつもみたいにふざけた様子はなく、真剣にゆるやかに回るつららを見守っている。氷の槍は、やがて人の頭ほどの太さとなった。


 モモモは杖を構えなおし、まだ杖を氷の槍に向け続ける、ゆるやかに回っていたそれは加速し、高速回転を始める。周囲の風が巻き込まれ、白い冷気を帯びながら氷の槍は回っている。


「おらぁ!」


 気の抜けた掛け声の後、氷の槍が地面に突き刺さる、それは多量の砂をまき散らしながら地面を掘り進んだ。後には、地面に空いた子供が入れるくらいの穴と、役割を終え横たわり、結露を垂らしながら徐々に空気に溶けゆく氷の塊とが残っている。


 モモモは膝を付き、ゆっくりとその場に倒れ伏した。俺が近寄り彼女の体を起こすと、顔に砂をいっぱい付けて彼女は目を回している。


「キョウゲツぅ……目がぁ……」


「はいはい、あっちに魔力回復の薬が置いてあるからそれ飲んで寝てようねー」



 順番が来て、俺は“炎”の杖を借りた。俺の身体属性は“風”で、“風”の魔法は自然と使えるようになったが、他の属性の魔法はまだまだ覚えられていない。


 一応、属性の魔石を使った直後なら、一回や二回魔石なしでも成功させられるのだが……なんかこう、すぐに感覚が薄れてしまって、中々ものにならないのだ。


 というわけで道具の補助を借りる。変換器は“雷”を頼んでいたのだが、そっちは危なくてまだ練習しきれてない。魔法の練習は魔力を消耗する、また魔力を消耗すれば体に疲労も現れるとあって、なかなか練習する機会を日常的に確保しづらい。


 まぁとりあえず今日は“炎”の魔法に慣れよう。俺は杖を構え、ぼーっと、全身の感覚に意識を集中させる。


 体の中、皮膚の内側、半分液体のような、空気のような何かが、俺の体の内部を揺れ動き、満たしている。この半液体は、意識を集中させればどこかに偏らせたり、体の一部、たとえば手の平から放出させたりできる。俺は魔力に意識を集中させ、それらを杖に移動……させていると、不思議な感覚に気づいた。


 杖はもちろん、俺の体の外側にあるが、魔力的には杖は俺の体と同化している。まるで体の一部みたいだった、魔力を動かせば、杖に触れる指から、するすると魔力が杖の中へと移動していく。俺は杖の先から魔力を出してみる。


 いつもは太いクレヨンで描いているような気分だったが、今はシャーペンで文字を書いている気分。いつもより精彩に魔力が操れる。


 見てみれば、俺の目の前で赤い魔力の流れがくるくると、螺旋を描いて渦巻いている。この形に特に意味はないが、なんとなく操れるので俺は自由に魔力の形を変えていく。俺はその渦巻きの魔力に着火し、それを魔法として起こさせた。


 赤い渦巻きに火が灯る。ぺろぺろキャンディーみたいな炎の渦が、目の前に明るく色濃く浮かび上がり、そして燃え尽きてすぐに消えた。目の中に渦の線の残影が残っている。


「おー、すごーい、花火みたーい」


 ぺちぺちと、脇で小さな観客が小さく拍手している。モモモか、寝てろ。


「ほかにも大道芸やってよー」

「誰が大道芸人だ」


05/15:誤字修正しました! 誤字報告ありがとうございます!

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