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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
―風のキャラバン /-フロストベルト・”巨人の遊び場”

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第百十六話、時の階梯―III

 山中の縦穴の底、花畑の広場の中には、二人の人影が立って向かい合っている。


 時の賢者の使う時魔法には、種類がある。


 一つは、今まで使って見せていた時魔法。時間を加速させれば力や重さが軽くなり、減速させれば逆に力や重さが強くなる。


 もう一つが、時の”重魔法”と呼ばれる魔法。


 先んじて使っていた時魔法では、存在を固定し、時間を加速させれば重さが下がり、時間を減速させれば重さが上がる。時間を二倍にして二回殴っても、等倍で一回殴るのと同じ威力しか与えられない。これが今までの時魔法。


 一方、重魔法では“時間を加速させる”。時間が加速したら、拳はより速いスピードで相手を殴ることになる。だから、時間が等倍の時より、威力は高くなるし、殴れる回数が増える。弱点が無くなり純粋な強化のみになる。


 重魔法のデメリットを挙げるなら、先に見せたものより、魔力消費が重くなり、また、加速や減速の時間の上限が小さくなる。オールコピー相手だとスタミナ切れの概念がほぼ無いので、デメリットは後者のみ、相手の加速の上限が少し遅くなることだけになる。


 相手が重魔法を使い出した。相手の攻撃は速くなり、そして重くなる。これから、加速している間の攻撃も致命的になる。


 風が吹き、足元の花々が揺れる。向こうには、白いマントを被った、白い髪の青年が立っている。手には刀を持ち、仮面のように顔に黒い渦を被り、また、足元にも黒い渦が見えている。


 向こうで人影が刀を握り直している。と、隣にトンと足音が降り立つ。


「そろそろ、私も混ぜて貰っていいかしら?」


 彼女はちゃきと、どこかから取り出した、細めの直剣を手にしている。ツバキの気配を探れば、彼女は高い壁に棒を突き立て、凍らせて壁にくっ付き留まっている。


「お前、相手の動き見えんのか?」


「あら、先に殺せば関係ないわ」


 彼女の足元から次々と影の帯が飛び出し、そして抜け出した。影の帯と彼女の影との繋がりは切れ、影の帯は空中を自在に飛んでいる。足を地面に付けているべき、みたいな縛りは無かったのか。あるいは、彼女との影と繋がっていることで何かしらのメリットがあり、今、彼女はそのメリットを捨てたのか。


「一人、対、二人とたくさん。これで勝てそう?」


「お前は勝つ気で降りて来たんじゃないのか?」


「私は楽しみに来たの。勝ち負けはだから、あなたが決めてね」


 そう言って、漆黒のドレスを纏った少女は、剣を持って向こうの人影へと走り出す。空中を泳ぐ影の帯たちが、彼女の動きに合わせて一斉に突っ込んでいく。


 重魔法を使うようになった、だから、今までのインチキみたいな瞬間加速が出来なくなった、訳じゃない。奴は自由にどちらも使える。


 人影の姿が掻き消え、瞬間的にバットの背中に回り、後ろから、奴の刀が容易に彼女の首を刎ねた。彼女の首が宙を舞う。


「バット!!!」


 尻尾が伸びて先の蕾が広がり、頭を咥えて飲み込む、彼女の頭が問題なく首から生えてくる。くそ、悪魔が、びびらせやがって。


 バットに斬撃はほぼ無効か。しかし彼女の体にコアのような弱点はないのか? 探られ、壊されればバットだって死ぬだろう。彼女ばかりにタンクを任せるわけにはいかない。


 状況が複雑になれば、予測が付きづらくなり、俺の一連の魔力強化は使いにくくなる。だが、単純に手数の増加は好転だろう。影の帯は自由に空を舞い、時に硬化して奴へと突っ込み、確実に奴のタスクを増やしている。


 俺も剣戟が飛び交う戦闘の最中へと飛び込む。時の賢者は早送りのように飛び回り、コマ送りのように現れては襲い掛かってくる。飛び回る影の帯もバットの剣も、俺の攻撃も、まだ奴の体を捉えるには至っていない。


 やがて、現れた奴は、影の帯の一つに手で触れた。何かが掛かる、同時に、奴は重魔法を使っていた。


 刀が影の帯を切り飛ばす。影の帯は今まで通り硬化を使ったのだろう。


 しかし、影の帯は切り飛ばされ、壁まで飛んで、ずりずりと地面に滑り落ちる。


「スミちゃん!!」


 バットが叫ぶ、影の帯は壁下の地面でよろよろと動いている、辛うじて生きているようだ。しかし戦線復帰は望めない。


 重魔法を重ねて使われたのだ。相手に、そしてこちらに、時の重魔法で減速されたなら、時間が遅くなり、そして被ダメージが大きくなる。相手に、そしてこちらに、加速と減速の重魔法をそれぞれ使われれば、攻撃は当たり、そして強大な一撃が与えられる。


 ぱん、ぱんと、次々と空中を浮かぶ影の帯が跳ね飛ばされ、周囲の地面にあたって落ちていく。


「もういい、みんな下がって!」


 四匹が壁の下に落ち、そして残りの帯は空中へ高く逃げて行った。


 地面に残った時の賢者が、俺とバットを見る。



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