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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
ー火の都

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第九十二話、ご褒美バトル

 火星支部に帰ってきた。


 中に入ると、ログハウスの中、今は居るのは一人みたいだった。そこでツインテの女性が、ソファから降りてネコの前に屈み込み、ちょいちょいと指でネコをあやしている。ネコは無言で座って眺めている。最初にソファで雑誌を読んでいた先輩だ。預けていたバックパックからネコが起き出し、外に出ていたようだった。


「ただいまーカラット」


 カラットと呼ばれた女の子は振り返り、床に屈んだままの姿勢でこちらを見る。


「お帰り、お疲れさま」


「いやぁ、今回は上手くいったよ。今回は、女の子だったんだけど、これがまた良い子でねー。小さいのに、お茶やお菓子も貰ってしまった」


「そうなの」


 カラットさんの視線が、つつつと、こちらに移ってくる。


「で? そっちのは?」


「大丈夫だったよ。特に何もなく」


「そ」


 彼女は立ち上がり、つかつかとこちらに歩いてくる。


「あなたも、お疲れさま。冷蔵室にアイスがあるから、食べたいのなら取っていいわ」


 と、カラットさんは俺に言ってくる。


「……何よ。聞こえてるなら、返事の一つでもしたらどう?」


 彼女は心外だというような表情で俺を見下ろしている。


「いや……ちゃんと、俺と話してくれるんですね、って」


「ま、私の仕事の邪魔をしないならね」


 なるほど。俺は、勇者と冒険者は同じような仕事だと思っていたが、たぶんそうじゃない。


 冒険者は“実力主義”、力があればいろいろまかり通る。でもここは“成果主義”、仕事で成果を出せるかどうかだ。冒険者はモンスターを倒す仕事で、勇者は人を守る仕事だから。仕事に対する責任が違う。


「ありがとうございます、カラット先輩。アイス、ありがたくいただきます」


「そ」


 と、床をとてとてとネコがこちらに歩いてくる。俺は彼女を抱き上げ、肩に乗せる。


「何よ、そのネコ、あなたの子?」


「……すみません」


「……まぁいいわ。大人しい子みたいだし」


 「にゃあ」と、俺の肩でネコが鳴く。



 *



 翌日。火星支部のログハウスの、裏口を抜けた所にある広いグラウンド。


 周りには森に囲まれた中、そこに広く均された広大な土地がある。イメージとしてはゴルフ場に近い。面で言えば平らなものの、地面は周りの地形に沿って隆起を繰り返している。


「君は、そのお弟子さんをいつも連れているんだね」


「将来有望な子なので。色々見せてあげてるんです」


「そりゃあいい」


 森の中広がる平地に、俺とホオズキ先輩が向かい合って立っている。


 俺は練習用の木剣を持ち、向こうに立つ彼女は、まぁ当然だが槍を持っている。柄の短い、小型の槍だ。ふわふわメガネのお姉さん。髪は、今日は一応後ろの方でぐるぐるとお団子にしてまとめられているが、メガネは外さないまま。冒険者で、特に戦闘中にメガネを掛けている奴はほぼ見ない。外れたり壊れたりしないのだろうか?


 ツバキは広場の縁、木の下辺りに膝を抱えて座ってこちらを見ている。ツバキは勇者ではないし、俺もまだ新米なのでここでは融通が利かない。申し訳ないが、彼女には今日も大人しくしてもらうしかない。


「あまり怪我はさせたくないのでね。早めに負けを認めてもらえると助かるよ」


「723位相手なら大丈夫ですよ」


「あはは、君はちゃんと、“その順位”を馬鹿に出来る実力かな?」


 森の広いグラウンドの中で、双方武器を構える。ホオズキさんのメガネがきらりと光る。


「準備はいいかい?」


「いつでも」


 “決闘”と、お互いに合言葉を口にする。


 彼女は先に動くタイプではなかった。向こうで柄の短い槍を構え、ただ俺の出方を静かに窺っている。……槍の根元から、何かが滲み出ている。金色の液体だ。それが槍から垂れて、木製の柄を伝い、つつつと滑って地面へと落ちていく。


「なんか漏れてますよ」


「まぁ気にしない」


 彼女はじっとこちらを見据えたまま、静かに答えた。あくまで待つタイプだろうか。こっちから行くか。


 俺は身を屈め、一気に駆け出す。大地にわずかに生えた草を踏んで、俺は地面の上を掛けていく。彼女はこちらに構えた。


 流体が飛び出た、それは輝く金色の液体だった、それは、まるで空中をキャンバスにするかのように意思を持って広がり、彼女の前方に、盾のように、カーテンのように広がる。


 俺は気にせず突っ込み、思いっきり剣で殴り掛かる。


 ”バギィィ!!!”と、手の中で木剣が折れた。


「あっ……」


 俺は思わず立ち止まる。手の中の木剣を見下ろし、そしてそこで俺を見ている先輩の顔を見る。


「タイム!」


「許そう」


「ツバキ!」


 俺が手を振ると、向こうで彼女が隣に置いてある荷物を漁り、バックパックから不釣り合いな大きさの、鞘に入った剣をにゅるんと取り出す。


「行きますよ!」


 彼女はそれを下から振りかぶって投げた。俺は慌ててそちらに寄って、地面に落ちる前に剣を受け取る。鞘から抜き去り、鞘をその辺の草の上に投げた。


 剣を構えて、彼女に向き直る。


「タイム終わりです!」


「承知した」


「剣の刃は潰してないので気を付けてくださいね!」


 先輩は、黙って口の端を上げる。


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