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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-貴族の依頼

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第八十一話、貴族の依頼 ーII

「今日は絶対に成功させましょう!」


「ふむ。まぁ私としても、やる気を出して貰えるのはありがたいな」


 今日はこのおっさ……素敵なおじ様の介護……サポートのお仕事。


「素敵なおじ様は、今日はどうしてこんな危険なお仕事に?」


「媚びは要らん」


「おっさんは今日は何で狩りに来たの? あんま向いてなさそう」


「全部捨てるな」


 はぁ、と、おっさんは諦めたように息を吐いた。


「まぁ、私はそれなりに偉い立場にある」


「偉い立場すごい」


「仕事は、魔物と戦う人間を動かすような立場でな。しかし、基本は室内での仕事、書類や机を眺めながらの仕事だ。私自身が戦えない、ろくに現場も知らない人間であっては、下の者も言うことは聞かんだろう。私自身も、発言や思考に正確性があるか、不安に覚えることがある。だからこそこうして、定期的に現場の“戦い”に触れているのだ」


「偉い考えですねー」


 今日の仕事の危険度は大体“5”。世間一般的には、まぁ冒険者エンジョイ勢の上澄みくらいに当たる。ここら辺まで出来ていれば、まぁ大体の一般人よりかは上になる。大体の人間を納得させるには、十分な実績だろう。


「ちなみに、自信のほどはどれくらいで?」


「それなりにある。だが、外の場において“不確定要素”は付き物だろう。飛び出てきた不運で私が死んでしまっては、元も子もない」


「だからこそ、過剰な不運を取り除くための俺、ということですね」


 後ろからロッドで背中をつついてくる。はいはい、“と、ツバキ”な。


 しばらく森の中を歩いていれば、崖に辿り着き、そこには穴があり、洞窟が見えない暗闇へと続いていく。依頼の目当てはこの先だ。


 俺たちは洞窟の手前で立ち止まる。


「屋内戦闘、暗闇の中での戦闘は、どれくらい経験がおありで?」


「……まぁ多少はある。しかし、暗闇の中での戦闘が得意だとは言えないな」


 俺たちは荷物を漁り、洞窟内へと潜る準備をする。


「了解です。明かりを多めに付けますね」


 彼の得物は腰に佩いた直剣。成人男性の扱う、剣幅が太めで、重いものだ。リーチは槍ほどではないが、狭い場所で振るうとなると若干の注意が必要だろう。出来れば広い場所での戦闘を心掛けたい。


「強い明かりは、しかしモンスターを呼び寄せはしないか?」


「モンスターは視覚よりも竜視の感知の方が広いです。明かりで寄ってくるなら、明かりを付けなくてもモンスターは近寄って来ますよ」


 俺はツバキに照明を渡し、彼女は頭に、俺は肩の辺りにそれを付ける。また、別で手持ちの、投げ捨てて周囲を照らすタイプの明かりも準備しておく。光は、反射が弱ければ一方向からしか照らさない。複数方向から照らすには、複数の光源が必要だ。


「中では空気が薄い場合があるので、戦闘中の息切れには気を付けてくださいね」


「分かった」


「では、中に入りましょうか」


 俺たちは、洞窟の中へと進んでいく。


 洞窟は、車がギリギリ通れるくらいのトンネルの広さを保ち、まっすぐ、緩やかに下降しながら進んでいく。先頭に俺、真ん中におじさん、最後尾にツバキ。壁は滑らかでなく、また見えにくい場所に穴が開いており、どこかへと通じて空気の音を鳴らしている。


 今回の“依頼”は、ターゲット型の討伐依頼。特定の種類のモンスターを、指定の量倒して来たら達成だ。ギルドが街の周囲の生態系を管理するためによく出している奴。


「来ましたよ」


 俺は立ち止まり、その辺の壁の近くに光源を滑らせ、先頭を譲る。緊張するおじさんの背後に回り、向こうから近づいてくる足音を聞く。


 おじさんは腰からすらりと剣を抜いた。滑らかな剣の刃が光を反射して煌めく。


 向こうから現れたのは、ブクブクと太った灰色の、大きなドブネズミ。子犬ぐらいの大きさがある。


「ターゲット種ですね。感染が怖いので、攻撃は食らわない方がいいですよ」


「こ、怖いことを言うな」


「そいつの強さは“3”くらいです。そいつが無理なら今日は諦めましょう」


 依頼の危険度は大体最大値で表記する。今回の依頼は、幅で言えば“3”から“5“、上振れれば”5“が出てくるという感じだ。


 おじさんは黙って剣の柄を握り直し、向こうのドブネズミを眺めた。原生種から進化した、まだ原生種に近いタイプだ。まぁほぼ普通のネズミ。魔法も特殊なスキルも使ってこないだろう。しかし、明確に物理の攻撃手段がある。


 おじさんは剣を構え、掲げて突撃した。幸いここの天井は高いので、剣の先が天井に当たることはないだろう。しかし体に力が入りすぎだな。まぁ、ネズミ一匹仕留めるくらいには十分か。


 次の瞬間には、そこに伸びたネズミの体が横たわっている。


「ど、どうだ! やったぞ!」


「お疲れ様です。一回剣の汚れを落としましょうか。剣を出してください」


 俺たちは洞窟の中を進み、おじさんは次々と魔物を倒していった。動きはつたないがおじさんは腕力があり、力に任せて獲物を屠っていく。俺やツバキにとっては散歩できるくらいの狩り場だ。特に強い個体もなく、大きな苦戦もなく、やがて指定量の討伐を終え、俺たちは洞窟の外に出てくる。


「いやぁ、戦った戦った! すまんな、君たちに何もさせてあげられなくて!」


 がははと笑い、彼はバシバシと俺の背中を叩いてくる。


「なんなら、次からは一人で来れるかも、なんてな!」


「確かに、お強かったですねおじさん。ですが、観光気分で居たいのなら、崖の上の柵は撤去しない方がいいですよね」


「いやぁ……はは。すまん」


「それから、壁の外は安全圏外です。喜ぶのはいいですが、気を緩めるのは、壁の中に入ってからにしてくださいね」


「はい。そのようにします」


 おじさんはテンションを下げ、俺たちは静かに森の中を歩いていく。


 やがて、森の向こうに壁が見えてきた。そこには簡易な出入り口がある。俺たちは壁をくぐり、町の中へと入っていった。


「……いやぁ、あはは! やったな! 今日の依頼は成功だ!」


 俺は再び喜び始めるおじさんに水を差す。


「この後ギルドで討伐証明という面倒な仕事があるので、まだ終わった感を出すのはやめましょう」


「あー……」


 と、おじさんは歯切れが悪く唸る。


「それは、君たちがやってくれるんじゃないのか?」


「俺たちはおじさんの仕事のサポートなので、まぁ出来ないというのならやり方を教えて差し上げますけど」


「……分かった。自分でやろう。そうだな。ギルドで依頼を報告するまでが仕事だ。喜ぶのはその後だ。確かにそうだ。難しい場面は過ぎたが、まだ手続きは終わってない。最後まで気を抜かずやろう」


 そう言って、おじさんは真面目な顔に変わる。まぁ別に代わりにやってあげてもいいんだけど。面倒だしな。


 街の通りに出て、俺たちは冒険者ギルドの建物を目指し、街の中を歩いていた。



 その時だった。



 カンカンカンカンカン、と、壁の上で何かを鳴らす音が走っていく。


「敵襲!! 敵襲だー!! 平野の方向から魔王軍が攻めて来たぞー!!!」


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