第七十八話、天災 ーII
「僕は、内地では天才だったんだ」
からからと、車輪が草原の上を進んでいく。
「偉い人や強い人の、教える技術を何もかも飲み込んで。俺は内地で持てはやされた。一緒にいろんな人が学んでいたけど、地位も年齢も関わらず、俺が一番強かった。俺は一度として負けなかった。俺は天才だったんだ」
荷車が草原の中の道を、曇り空の下を進む中、彼の暗い声音の独白は続く。
「……だけど、壁の外に一歩出た途端、俺の栄光は終わったよ。実際のモンスターを前にして、俺の剣は動か「今日のご飯なんだろねーヒメトラ」「パンですよ!」「作るのツチなんですけど」話聞いてくれる?」
俺は荷車を先導して歩きながら、面倒な顔をして後ろを振り向く。
「もう大体わかった」
「俺が俺の言葉で心のうちを吐き出すことが、大事だとは思わない?」
彼は諭すように俺に言い返してくる。
「まぁ……じゃあ、陽気な音楽とか流しながらなら、ついでに聞いてあげても」
「雰囲気ぶち壊しだけど」
はぁ、と、彼は荷車の上に座り、諦めたように息を吐く。
「とにかく、俺は安全な内地で育って戦闘の才能があったけど、いざ戦場に出てみれば、傷の一つも付けられない無能だったんだ。俺はただ、戦いの技能を覚えたり磨いたりが好きだっただけで、実際の戦闘には向いてない。俺は戦力外だ」
隣でツバキが振り向き、荷車の中の彼に言う。
「すみません、もう少し短くまとめてもらえませんか?」
「これ以上? だいぶ端折ったけど?」
俺は隣を歩くツバキに話しかける。
「ツバキ、要はこの人は装飾用の剣なんだよ。形も出来も見事だけど、刃が潰れてて、ものを切れない」
「なるほど。たたないでかチ「ツバキ」」
俺はツバキの両頬を手で挟んで黙らせる。綺麗な顔が俺を見上げる。どこで覚えてきた。
「すみません、使えない槍使いさん。うちの弟子が失礼を。最近思春期なんです」
「ごめんね。“使えない槍使いさん”呼びはやめてもらえるかな? 同じだから」
からからと、俺たちの歩みに合わせ、荷車は道の上を進んでいく。
「で?」
「“で?”って……まぁ、一応俺の話は終わりましたけど」
「そうですか。大変でしたね」
「軽いね」
「まぁいいんじゃないですか? 安全な内地でも、例えば俺たちにやって見せたみたいに、お手本を見せて他人を育てる、みたいな使い方もあるわけですし。無駄な才能じゃないですよ」
俺たちは荷車を先導し、ただ土の道の上を歩いている。後ろから返答が返ってこなくて、俺は背後の荷車を振り向いた。じっと、彼は俺の顔を見ていた。
「そう……なん、だね」
「“そうなんだね”って何ですか? 今はあなたの話をしてるんですよ」
「いや、まぁ……そうだね」
彼は俺から目を逸らし、向こうの草原の方を眺め始めた。話は終わったのだろうか? 後ろを向いたままでは首も痛いので、俺は前を向きなおして歩き出す。
「あ! ごしゅじんさま! この人泣いてますよ! ふにゃ! な、何するんですか! ヒメトラの顔に触らないでください!」
荷車は曇り空の草原の中、平穏に車輪を進めていく。
雷狼
灰色の大型のオオカミ。恵まれた体格と魔力を用いて他を蹂躙する。黒い黒雲と雷鳴とともに現れる。大きな力を持ってこの世に生まれたばかり。他者の命や建造物を破壊したりして遊ぶが深い意味はない。
戦闘役割
キョウゲツ :物理/魔法アタッカー(対単体、近/中距離)/ヘイトタンク/サポーター
ツバキ :物理(+魔法)アタッカー(対単体、近距離)
槍使い :物理/魔法アタッカー(対単体/範囲、中距離)




