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教科『異世界』の時間だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
ー30

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休み時間、同階交流会

 勇者には生活の部屋が与えられている。その建物の同じ階のメンツで交流会? みたいなものを開くと言われ、俺たちはワカバさんの部屋に集合した。と言っても、同じ階の四人が一人の部屋に集まっただけ。あんまり移動はしてない。


 部屋の中に入り、床に置かれた丸いテーブルの席の一つに、俺は小さくなって座る。慣れない甘い、女の子の部屋の匂い、集まっているのはミナモさんと、なんとなく顔を知っている程度の同階の二人の女の子。


 落ち着かなく周りを見渡すと、ここは俺の部屋より二倍広い。どうやら二人の部屋は、二部屋ぶち抜きで一部屋になっているようだ。ベッドも二段で圧縮されたりと、なおのことこちらの部屋が広く感じる。窓から見える外の景色はほぼ同じ。部屋の作りは似てるし、中身だけが違って、なんか不思議な気分。


「なにそわそわしてんだ? お前」


「……いや。別に。いつも通りだけど」


 よく分からないまま俺はキララさんに否定を返す。


「あはは、まぁそのうち慣れるでしょー」


 と、ワカバさんが助け舟を出してくれる。


 先に言葉を発した方、短い金髪と金眼が特徴のキララさん。たぶん一つくらい年下、口調はどこか乱暴で勝ち気。冒険中でもその性格は発揮されているようだ。


 もう一人の、黒髪のおっとりとした雰囲気の女の子がワカバさん、お盆を持ってきて、乗せた飲み物とお菓子をそれぞれの前に置いていく。ワカバさんは同い年……あるいは年上かな? 童顔っぽいからちょっと分かりにくいが、とりあえず雰囲気は俺たちの中で一番大人だ。この二人は、よく一緒に行動しているのを見かけている。


「私こっちがいい」


 と、ミナモさんが俺の前のそれと彼女のお菓子を勝手に交換している。黄色風味と赤色でたぶんなんか違うのだろうが。俺の答えを聞く前に換えるな。


「じゃあ、とりあえず、あらためて自己紹介とかからする?」


 ワカバさんも席に座り、これで全員が席に着いた。喋る言葉を考えていれば、そう彼女から提案してくる。今日招集したのも彼女だし、ワカバさんはいろいろと先導してくれそうだ。ありがたい。


「格付けから始めよう」


 と、ミナモさんが何か言いだす。


「かくづけ?」


「一番弱いのと、一番強いのを決める」


「自己紹介からでいいだろ」


「あはは、じゃあ私からいい?」


 ワカバさんを皮切りに、それぞれ順番に、名前や簡単なプロフィール、戦闘で使う武器の種類や使う魔法なんかを言い合った。


「じゃあ格付けに移ろ」


 やるのかよ。


「どういう基準でやるんだ。仲間同士でもチャンバラしたいの?」


 俺がミナモさんにそう聞くと、彼女はいったん空を見上げて考える。


「討伐数?」


「無理にペース崩して怪我でもしたら大変だよ」


「アオイくん腰引け過ぎ」


「今日は平和な交流会じゃなかったの?」


「いいぜ」


 と、キララさんが会話に割って入ってくる。


「今後、もしこのチームで動いたりするなら頭が必要だろ。強い奴が指示出すなら命令もすんなり通る」


「誰がリーダーでも言うこと聞いてあげなよ」


 え? 本当にやる気? 今から? ミナモさんとキララさんは立ち上がり、もう外に出る準備を始めている。今日は楽しい平和なお茶会じゃなかったの?


「賛成が二だな。ワカバは? どうする? どっちに賛成だ?」


 と、すでに行く気満々のキララさんはワカバさんに聞いている。


「私は……そうだね。中立を保つよ」


「賛成が二なら反対の意を示さないと賛成が多数で決定だよ」


「よし。じゃあ賛成が多数だな。外行くか」


 一応俺にも聞けよ。



 という訳で、俺たちは街の外に出てきた。今日のルールは、出来るだけ強いやつをたくさん倒して来たら勝ち。勝ち負けに興味はないが、かと言って手を抜いて低い成績を出したくない。しかし……いつもはミナモさんと行っていた。単独での狩りは今日がほぼ初めてか?


 とある丘の上、一本の木が生えて、丘を降りたらそこから森が広がっている。ここが、スタートとゴール地点、制限時間は三時間。


「じゃ、獲物は早い者勝ちな! 言っとくが横取りは無しだぞ!」


「私こっち行くから付いて来ないで!」


「あぁ!? てめぇが脇に逸れろ!」


 と、ミナモさんとキララさんの二人はさっさと仲良く丘を降りていく。大丈夫かなあの二人……。ここら辺は、今の俺たちならもう楽な狩場とはいえ、一人の時に何が起こるかなんて分からない。俺たちはまだ経験が浅いし……。


 二人の背中が競うように丘を降りていく。残された俺たちは彼女らを見送り、顔を見合わせる。


「あれ? キョウゲツくんは急がなくていいの? もたもたしてるとキョウゲツくんが最下位になっちゃうよ?」


「まぁ……今行くけど」


 ふふ、と彼女は楽しそうに微笑む。そう言う彼女は、余裕なのだろうか。


「キョウゲツくんが最下位になったらわたし、何お願いしようかなー」


「強い人の命令をぜんぶ聞くなんてルールは無かったよ」


 数時間後、それぞれ成果を手に集まった。ワカバさんは、討伐大会には参加すらせず、一人家に帰って四人分の夕食を作ってくれていたらしい。それを除くと、俺が最下位だった。


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