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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-幽霊火山

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第六十六話、収穫がない収穫

 俺たちは黒い岩肌を下へ下へと降りていく。道は常に真っすぐでなく、カーブや坂、段差を繰り返しながら、空間はまだまだ続いていく。


「みんなは今頃何してるでしょうか」


「まだ一日目だしねー。自由にやれてるといいけど」


 あの子たちからここまで目を離して動くのは初めてだから、落ち着かない気持ちも頭の端っこにある。とは言え、転移を繰り返して転移剣の魔力残量が底を尽きかけており、自然回復で次の転移が行えるまで時間がある。考えても何も出来はしない。


「ツバキは、たまに休みとか取らなくてもいいの? 行きたいところとか」


「休みの日も狩りに行きますよ」


「別の休みの日は?」


「先生と鍛錬です」


「さらに別の休みの日」


 うーん……と、彼女は何かを考えている。


「ショッピングです」


「へー、何買うの?」


「新しい力」


 ほかの趣味とか一緒に探してあげた方がいいだろうか。


 黒い岩肌を降りていくと、下からモンスターの群れが現れる。


「複数タイプですね」


 下からやって来たのは、黒い、大きな溶岩弾。ひび割れ、隙間から赤い光がのぞく黒い岩の塊が生き物のように跳ねてやってくる。


 そしてもう一種類。走る電球? 真っ白に光を放つ電球のようなものに足が生えて、それが坂を登ってきている。


「よく分かんないのが来たなー」


「殴ればみんな同じですよ」


「ああいうよく分かんないのは爆発するのが多いんだよ」


「……遠距離から刺激しますか」


 ツバキが腰に差している杖を手に取り、泡を撒く。大きな泡はふよふよと空中を漂い、下のモンスターたちの前方にて待ち構える。


 モンスターたちは泡を気にしていないようで、まっすぐ走ってくる。奴らの目の前で、パチンと泡が弾けた。


 溶岩団子たちは感覚が鈍いようで、跳ねつつそのまま向かってくる。走る電球は泡の衝撃にその場で立ち止まる。


 俺は手の平をかざし、電球へ向けて三叉の風の爪を発射する。鋭い三本の風の爪は向こうの電球の体を易々と貫通し、光が強まり爆破!


「……っ!」


 閃光弾のような強い光を放ち、電球は生命を終えてその場で崩れ落ちた。隣で目をぱちぱちとさせ、ツバキは頭を振っている。さてはまともに見たな。


 三体の溶岩団子はもちろん気にせず斜面を登ってくる。俺はツバキの前に立ち、剣を構える。


 ごん、ごんと、その足音から黒い岩の団子どもは明らかに質量がある様子だ。剣で殴っても足で蹴っても容易に跳ね返せはしないだろう。


 俺は腰元の魔道具を外して赤い光弾を発射、光弾はモンスターの背後に着地し、二体を巻き込み爆破。


 一体が無事、爆破を受けた二体は地面を跳ねつつなおも進行を続けている。二体の体の三分の一くらいは爆破の衝撃で砕けているが、まだ支障はない様子。


 俺は力を込めて先頭の一体に剣を振り下ろす、破片が飛びつつ岩の合間に剣が食い込む。かてぇ、重てぇ。


「ツバキー、まだー?」


「は、はい!」


「物理が効きづらい、魔法攻撃で倒すよ」


「分かりました!」


 俺は背後でツバキの復帰を確認し、背後に数歩跳んで団子から距離を取る。


「“ウォーター・ボール”」


 俺が放った水球がそれぞれ溶岩団子に着弾し、溶岩塊は水浸しに。ふしゅふしゅと隙間から蒸気が立ち上っている。


 ツバキが接近、槍が団子の体に突き刺さり、冷気が槍から伝っていく。一匹目が地面に落ちて動かなくなり、ツバキは続けて背後の二匹を凍らせに向かう。


「今ならいけるかな」


 俺は凍り付き、落ちた黒い溶岩塊に近寄り、剣を振り下ろす。先ほどは妙な粘性があった溶岩塊だが、今はツバキの氷で凍り付き、衝撃が伝わりヒビが奥まで入る。ガン、ガンと何度も剣を振り下ろして溶岩塊を崩していく。


「先生! こっちの二匹も凍らせました!」


「おっけー」


 ツバキの軽いロッドではこれを砕くのはきつかろう。俺はそっちに落ちた、半壊の溶岩塊に近づき、同じように剣で殴って体を壊していく。


 やがて、三匹とももう動かなくなっていた。俺たちは岩の欠片からコアを探し出して拾う。硬いもの殴って手が痛ぇ。



 やがて最下層に着いた。最下層と言っても何か特別なものがあるわけではなく、無作為に広がる空洞や空間の、一番下の部分である。上の方で見ていた強い橙色の光はあまり見えなくなっており、空洞全体がぼんやり暗い。


 しばらくそこらを歩いていたが、何もめぼしいものは見つからなかった。


「何もありませんね」


「そうだな。……“熱さ”も、心なしか弱まってるか?」


 俺は上を見上げる。そこには黒い岩の天井がある。


「そうですね。そういえば、下って行っていたらいつの間にか熱さを感じなくなってます」


 ってことは上か……結構降りて来ちゃったな。


「少し肌寒いです。先生、ズボンください」


「あぁ? お前のなんてわざわざ持って来てねーよ」


 彼女は今、体の中を水着に着替え、上半身だけ冒険者用の上着を着るという妙な格好。


「先生のでもいいですよ」


「俺は下に下着来てんだよ。俺がパンイチで歩いていたら変態だろ」


「私が変な人みたいに言わないでください。私は別に先生の格好なんて気にしませんよ」


「ほなえぇか。ってなるわけねーだろ」


「早くください」


「あげない」


 俺たちは気の済むまで最下部を探検した。



 俺たちは帰りの斜面をせっせと登ってきて、最初の荷車を停めた小部屋まで戻ってきた。


「……」


 やはり上に登るほど“その影響”があるようで、ツバキの視線が若干胡乱だ。


「今夜は水風呂にしましょう」


「手間掛かるし……熱いお湯の方が疲れ取れるぞ」


 ツバキは小部屋の壁に背中を預け、ぼーっとそこで座っている。


「……体が良くないならお前だけ撤退してもいいぞ」


「問題ないでーす」


 いつものお前はそんな言い方しないんだよな。


「限度は自分で見極めろよ。俺はお前のすべてを見切れるわけじゃない。特に、精神的余裕とか、残りの体力とか、そういう目に見えない部分は俺から見ても見えにくい」


「大丈夫って言ってるんですけど」


 じゃあ反抗期かなぁ。俺は小さい桶に冷えた水を入れ、彼女はそこに足を浸してぴちゃぴちゃと遊ばせていた。



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