表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-50

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

299/525

第五十八話、空を舞う

「試作品を持って来たんだ。テストに付き合ってくれ!」



 荷車の様子を見に行くと、ミドリがツナギを着た少女に絡まれている。また、脇に知らないどでかい荷物が増えている。


「おぉ! キョウゲツ!」


「久しぶり、オチバ。久しぶりでもないな。今日はどうしたんだ? 忘れ物か?」


 俺が聞くと、黒髪の少女は満面の笑みで語りだした。


「こいつは銀翼シルバーバード、人間が乗って空を飛ぶための代物なんだ!」


 宿屋の隣の空き地に、大きな銀色の一枚板が置かれている。その金属板は全体的に平たいが、カモメの影のような、左右対称一対の翼のような形になっている。ツバサの中央に“D”の字の取っ手が二つ付いているが、これに掴まるのだろうか。


「こいつは、自分で揚力や加速を発生させられるのか?」


「出来る機能も付けているが、基本は風に乗って滑空を行うタイプだな」


「こんな重い金属板が……」


 俺が二つの取っ手を掴み、持ち上げると、軽い。アルミより軽い。しかし、金属板は剛性が強いようで、持ち上げても翼の端がたわんで歪むようなことはない。軽くて硬い。しかし弾性はあるようで、ゆらゆらと揺らすと僅かに羽の先が揺れる。


「優秀な素材だな。これに乗るだけで、人間が空を飛ぶのか?」


「誰もが、とは言えないな。今これで飛ばせるのは80kgぐらいまでだし、乗るのにもコツが要る」


「で、一般の体でそこそこ丈夫そうな俺にテストして欲しいって訳か」


「構想して形にしただけで完成じゃないからなー」


 と、宿屋のそばで騒いでいれば、ツバキが降りて来てこちらに歩いてくる。


「やぁツバキくん! 面白いものを持ってきたんだ! 君も一緒に見てみるかい?」



 ブロックタウンは、ベージュの巨大な一枚岩に、風雨が削って出来た巨大な窪地に出来た町だ。俺たちは町の外壁の階段を上って岩の上へ。


「確かあっち側は下が砂漠になってたはずだから、練習するならそっちに行こう」


 俺たちは岩の上を歩いて岩の縁へと。


 風が吹いている。そこは崖の側で、岩肌はほぼまっすぐ垂直に下に降りている。石を投げても下に着くには数秒掛かる。下には、ベージュの岩が崩れて出来た岩石砂漠が広がっている。ベージュの一枚岩は大きく森に囲われているが、ここの崖下辺りは、若干土の地面が出て広がっている。


「それじゃ、GOだ」


 ツナギを着た少女が、そこでにこやかに見つめている。隣にツバキも付いて来た。


「ちゃんと飛べるんだよな」


「それをこれから確かめるんだろう」


「お前の想定してる飛び方を教えてもらっていいか?」


 ふむ、と少女は頷く。


「基本は高所からの滑空だ。乗ってバランスを取っていれば、緩やかに高度を下がりつつ長い距離を移動できるだろう」


「見たところ本体は軽いが、ひっくり返ったりしないのか?」


「ひっくり返っても飛べるぞ」


「ひっくり返らないのか?」


「ひっくり返らないようにバランスを取りたまえ」


 自力でか。魔法による姿勢制御機構とかは載せてない。まぁそっちの方が飛びやすいのだろうか。上に乗っても、取っ手に掴まりぶら下がっても飛べるらしいが、後者は危なそうなのでやりたくない。


「空中に飛び出して、取っ手に掴まりつつ翼の中央に足を乗せる」


「そんな感じだな」


「ブレーキというか、降りる時は?」


「地面に近づいたら、前方を持ち上げる、するとブレーキが掛かって、木の葉のように真下に落ちる」


「本体による加速とか揚力の機能とかは?」


「最初はなしだ。自由落下による飛行を行ってみてくれ」


 まぁ聞いときたい条件はこれくらいか。


 俺は銀色の横に長い翼を、取っ手を掴んで持ち上げ、岩の崖の端の端まで寄る。長さは、左右にそれぞれ俺の身長くらいある。下には遠くの地面が見えていて、何の補助も受けずに落ちればまず無事じゃ済まない。まぁ俺は“潜影”を覚えているので、高所からのダメージはほぼ無効化できるが。


「準備はいいかー?」


「俺の姿を目で追って落ちるなよ」


「あはは! ツバキくん、私の手を握っていてくれ。落ちそうになったら止めるんだ」


「それじゃ行きますよー」


 俺は頭上に逆さに振り上げていた銀の翼を、前に突き出し、翼は取っ手を上にして落ちていく。


 俺は取っ手を握って体を引き寄せ、翼に乗った。ぐっと、空気が弾力を持って俺の体を受け止める。すげぇ。景色が前から後ろに動いているが、俺は今浮いている。


 風を切って銀の翼はまっすぐ空を伸びていく。紙飛行機が空を飛ぶような、緩やかな滑空。しかしそこには人一人分の重さが乗っている。遠くにある足元の地面が、勝手に動いて流れていく。空には雲がある。


 多少の風が翼を左右に揺らす。立ち上がったらひっくり返ってしまいそうで怖くて、俺は屈んだまま取っ手の間に居る。翼は風を受け、左右の先端が上に沿っており、意外にも翼は安定している。少し体重を右にずらせば翼は右へ、左にずらせば左に曲がる。


 試しながらしていると、そのうち丘の地面が迫って来て、俺は言われた通り、取っ手を掴みぐっと翼を後ろに持ち上げ、翼の前方を上に上げる。ふわと、一瞬浮く力が消えて、それから僅かに後ろに進みつつ翼は地面に落ちた。


 下は岩石砂漠だが、岩のそれぞれはそこまで硬くない。落ちた所を見てみれば、下にあった細かい石は潰れて砕けており、羽の下を確かめてみても傷は付いていない。


 俺は崖の方を振り返る、崖の上でオチバが手を振っている。あそこまでこれを戻すの面倒だな……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ