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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
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第五十五話、要求

「先生、前みたいなダンジョンに潜って、ひたすら戦いたいです」


 森の中、カタカタと車輪が進んでいる。荷車を先導して足音が二人。森の中、一段下がって、土の道が森の中を進んでいる。


「スキル? とやらの習得には、とにかく経験値が必要なんですよね。ぽっと出のモンスターをちょいちょい倒していくだけじゃ、極みとやらには到達できないでしょう」


「ダンジョンかー」


 固定化された狩場では能力が偏って育ってしまう。だから長期的にそれをやることはないのだが、まぁ、短期的にどこかで集中して鍛えるのはありかもしれないな。


「そんなに急がなくていいじゃない? スキルなんて、一中一夜で身に着くようなもんじゃないよ」


「私は先生だけが出来ることがあるというのが腹立たしくてなりません」


「一生怒ってるじゃん」


「次は置いて行かれません。そのためには、特別な“装備”が必要なんですよね?」


 神はあらゆる現象に対しての強い抵抗があり、ダメージを与えるには専用の手段が必要になる。龍脈を消費して放つ魔法や、剣を振るだけの攻撃では、神はほぼ傷つかない。特別な手段としては、同じ階層の神の力だったり、あるいは技術を熟練して発現できる“スキル”だったりがある。


 スキル石を使用して定型的に使えるスキルとは異なり、自身で習得したスキルには、なんというか、威力に幅がある。同じ消費、同じ型、同じスキルを同じように発動させたとしても、強い人のスキルはなぜか強いし、その刃は神にも届きうる。スキル石を使用しただけのものより、自分で習得したものの方が“強い”。


 まず見ないと思っていたのだが、旅をしていればちらほらと神の姿が見えている。彼ら彼女らは無作為にこの世に生まれ、そして、時に人に牙を向ける者も居るようだ。旅をするなら、出会う脅威に対して無力であってはいけない。ツバキにもその“対抗策”を持っていて欲しい。


 対抗するだけなら、同じ神の力を所有するというのもあるが、残念ながら、この世界に広く加護を配ってくれるような力のある神は居ない。居たとして、“女神様”、この世界の人界にて広く信仰を伸ばし、人間に武器を与えて人界の防衛戦力に大きく貢献している“武器の神性”が居るが、今はその代表人格はどこかに姿をくらましている。


 今のツバキが手の届く対抗策として、“スキル”を習得するか、あるいはどこかから神の力や宿したものを拾ってくるか。


「まぁ近くに似たようなことができる場所はあったかなー」


 専用の狩り場に籠もれば、残りの非戦闘員は置いていくことになるが、今はヒメトラだけでなく人数も増えている。少しは目を離しても寂しくないだろうか。


「ほかの子たちはー? なにか行きたいとことか、やりたいことの希望はあるかい」


 俺は道の上を歩きながら、背後の荷車に呼びかける。


「わたしは、パンを焼けるようになりたいです」


 と、荷台の中のクッションにこてんと座ったタヌキから声が返る。


「パンかー、いいねー。専用の道具とか必要? あと、書籍とか、あるいは町の教室とか」


「とりあえず独学でがんばってみます。道具も、旅の道中でしたいので、特別なものは使わないようなものを考えてます。でも、いっぱい練習したいので、材料が必要なのと、あと出来を問わずいっぱい出来ちゃいます」


「まぁ五人居れば消費は足りるでしょ。無限の胃袋も居るし」


 俺は、荷台の中の中央に佇む、薄緑の植物少女に目をやる。


「わたしは不味いのは食わないぞ」


「いつのまに選り好み始めてんだよ。舌が肥えたか。練習したの食わないならツチが上手くなった後のも食うなよ」


「まぁ、試食くらいならしてやるが。だが、わたしは生ごみ処理場ではないからな」


「腐らせて土にすればいいのか?」


「土? うーん……」


「植物の心忘れ始めてるなこいつ」


 パンを焼く練習か。まぁ町に滞在していれば出来るだろうか。


「ミドリは? 何か欲求はある?」


「私専用の可愛い女の子が欲しい」


「さすが人間の発想じゃないな。お前専用じゃないが、三人くらい居るだろそこに」


「もっと晴れ晴れしたタイプが好みだ。小さいといい」


「まぁ……手は貸せないけど応援はしてるよ。法には触れない範囲でね」


 俺はゆるゆると歩調を緩め、荷車の先頭辺りの隣に並ぶ。置かれた荷物の上、ネコが寝っ転がって寝ている。


「ヒメトラは? 何かある?」


「ぎゃんぶる」


「まぁ……お小遣いの範囲でやる分には止めないけど」


 ギャンブルかー……今後のために、やめさせた方がいいのかなー。


「湯水のようにお金を使いたいです。ごしゅじんさまがあせみず垂らして稼いできたお金を、一瞬でふいにするあの感覚がたまりません」


「小遣いも差し止めるぞお前」


 なんて遊び覚えてんだ。邪悪だろ。


「先生こそ、何かやりたいこととか無いんですか? 先生は、私たちの面倒を見るばっかりで、自分のことなんて何も出来ていないように思えますが」


 と、先を歩くツバキが聞いてくる。俺のやりたいことか。と言っても、俺は、やりたいようにやってる結果が今だからな。


「かわいい弟子とペットを連れて。仲間も居て、好きなように世界を歩いて。好きなように戦えて、自分を鍛える時間もあって。俺は十分やりたいことやれてるよ」


 俺がそう言うと、「そうですか……」と、銀髪の少女は俯き、荷車の前を歩いている。


「そうですよ。今がある幸せをヒメトラに感謝してください」


「お前も居るけどお前の上に成り立ってる幸せじゃねーよ」


「感謝してください!」


「いつもありがとーねー」


 荷台の上の毛皮をそっと撫でて、再び荷車の前へ。森の中、静かに荷車と足音は進んでいく。


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