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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
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第四十九話、中層域“水霊の森”

「近くに“水霊すいれいの森”という中層域がある。ひとまずはそこに向かおうと思うぞ」


 俺の隣には、銀髪の少女が立って静かに話を聞いている。彼女はごてごてとした厚い生地の冒険者用の装備をまとっており、背中には銀色のロッドが差してある。彼女は今も平時も表情が変わらない。


 また、荷車の縁に身を乗り出して、黒髪の和装の娘が俺の話を聞いている。細い太ももが見えていたり腕が見えていたりで露出が多い。手におやつの干した魚を持って齧っているがたぶん話は聞いていると思う。


 和装の娘の隣に、背の小さめの、もちもちとした女の子が一人。自信なさげにそこに立っている。髪は短く茶色と普通だが、目は片方が金色であり、片方が黒と、何はなくとも異質に感じる見た目をしている。


 また、荷車の中央奥には、腰から下が植物の根に変わっている、薄緑の肌の少女が佇んでいる。髪は長く、森林のような深い緑色をしており、艶があってうねっており綺麗だ。町で大量に食料を買い込み与えたが一切太らなかった。代わりに、金の果実をいくつか実らせた。


 俺は荷車の前に立ち、少女たちに話しかけている。町での補充や休憩を済ませ、今から町を出るところだ。


「町を出る前に、なにか質問とかやっときたいことはあるか?」


「ごしゅじんさま、ヒメトラの遊ぶお金が足りないんですけど」


 ヒメトラは荷車の上からぼそっと言ってくる。


「いろいろ設備を整えるのに使ったからな。今はお金がない。こらえてくれ」


「でも、ツチやミドリにはいろいろ買ってあげてましたよね?」


「二人は加入して間もないからな。必要なものを買ったんだ」


「あのスノードームみたいなオモチャもですか?」


 と、クッションの脇に置いてある、透明で中に液体が入ったオモチャをヒメトラが指さす。


「町に行ったらお土産は買うものだろう。必要な出費だ」


「ヒメトラはお店で一番安くていっぱい入ってる干物を買って我慢してるんですよ! ヒメトラも甘やかしてください!」


 ヒメトラが荷車を降りて俺に詰めてくる。地上でも彼女の頭は俺より高い位置にあり、俺は彼女の目を見上げる形になる。


「自由に使える小遣いはみんなあるんだ。お前は何に使ったんだよ」


「お店で一番お高い化粧品を買ってみたら無くなりました!」


「お金は使ったら無くなるんだよ」


 まぁ、ヒメトラもそういうのに興味ある段階か……女の子の買い物は高いからな。もっとお金を準備した方がいいだろうか。いや今お金が無いんだけど。お金も無限に出せるわけじゃないし。


「……化粧品は? 今は使ってんのか?」


「合わなかったので捨てました!」


「綺麗な顔じゃねーか。お前には一回金銭感覚を学ばせた方がいいかもな」


「にゃあ!」


「にゃあじゃねーよ。……なんだ、じゃあ何か欲しいものがあって、それを買えないでいるのか?」


「いえ! わたしは遊ぶお金が欲しいだけです!」


「出発しますよー」



 森の中をコトコトと車輪が走っている。今は幌車の自走に任せ、俺たちは全員車の中に乗り込んでいる。見える景色は早く流れゆく。


「ごしゅじんさま、見てください! 鳥さんが空で並走してますよ!」


「ほんとだねー」


「美味しそー」


 しばらくすると、森の景色が変わり、鬱蒼と茂ったものへ。


 森の空気は、静かで湿ったものへ。空は晴れているが森の中には薄く霧が掛かり、遠くの景色は森の闇と霧に包まれ見通せない。そこらの岩や地面には苔が生えている。


 地面がだいぶまともではなくなって来たので、俺たちは荷車を降りて歩行に切り替える。道はか細く続いているが、大きめの枝や石が転がり、また苔が地面を覆っていて踏むと滑りやすい。俺たちは注意深く、ゆっくりと道の上を歩いていく。



 “水霊すいれいの森”。平地に広がる大きな樹海で、大地から豊富に水が湧き出し、森の至る所で透明な清流や広く溜まった泉を見ることが出来る。


 この森は全体が中度の龍脈に浸食された“中層域”である。森の水は、綺麗であるものの中に龍脈が溶け込んでおり、一般人が飲んだり浴びたりするには若干の注意が必要。また、森には龍脈相応のモンスターが潜んでいる。


「綺麗な森ですね。神秘的というか」


 隣で、綺麗な銀色の髪の少女が、歩きながら森の景色を眺めている。


「湿度高すぎじゃないですか? 脱いでいいですか?」


「ミドリの髪の中みたいな」


「わたしの髪の中こんなか?」


「荷物のお野菜がすぐくさりそうです……」


「持ってる奴は早めに処理しないとだな」


「無くなったらコケ食えばいいんですよコケ」


「お前緑色なら俺たちは何でも食うと思ってんのか?」


 進む荷車の側は若干やかましいが、薄く掛かった霧と暗い緑の中、俺たちは静かな雰囲気の森を歩いていく。


「どうしたミドリ、急に荷車の下に降りてきて」

「それは木だな。ただの」

「似てるー」

「似てねーよ。種族だけだろ」



 静かな霧の掛かった森の中を、二つの足音と車輪の音が進んでいる。道の脇や、木の根っこの陰に、石の裏から、透明な水が流れを作り、溜まり、滴っている。水を吸い上げて岩には苔がよく茂っている。


「綺麗な森ですね」


「気に入ったか?」


「気晴らしに探索するには、良さそうです」


「そんな軽い気持ちで、歩かせてはくれないけどな」


 荷車の中、荷物の上で、もごもごとさっきからヒメトラが落ち着かない。姿が見えないまでも、そこら辺をモンスターが歩いているのだろう。ストレスとか大丈夫だろうか……。


「ごしゅじんさま、一匹近付いて来ます」


「あいよー。ツバキ」


 俺たちはそれぞれ武器を抜く。俺は直剣を、ツバキは銀色のロッドを手に持つ。荷車が変形して中空にカラフルな縦長のひし形の八面体が現れる。八面体を覆う“あわ”が現れた。いちいち面倒だが、これで戦闘中のあっちの心配は大丈夫だろう。


 茂みから現れたのはオレンジ色の肌を持つ大きなトカゲ。四つ足で地面を這い、成人ほどの大きさがある。チロチロと赤い舌をのぞかせている、体色はオレンジ一色ではなく、緑が混ざって斑になっている。それはどこで隠れるための迷彩か、それとも隠れる必要がないのか。


「どうします、先生」


「二人でやってみるー?」


「……分かりました」


 ツバキがロッドを構え、銀色の棒の先に氷の槍先が咲く。ロッドが冷気を纏う。


「先に行きます!」


 ツバキが槍を構え、森の中のトカゲへと突進していく。


「足場は滑るよ、気を付けてー」


 俺が言うと、彼女の靴の裏に冷気がまとう、見れば足の裏に氷のスパイクが生えている。根っこが自由に伸びまわり、窪んだ地面に水が溜まって、苔の生えた石や岩が転がる森の地面の上を、彼女は氷の棘を突き刺し着実に走っていく。器用だなぁ。


 跳躍し、彼女が槍先を真下に掲げそのまま飛び掛かる。トカゲはにゅるりと後ろに後退し、ツバキの槍は空振り、地面に刺さって大きくそこに氷溜まりを作る。


 ツバキは詰めて、続けて槍を振るいトカゲに二閃、三閃。トカゲは素早く後退しその槍を避けていく。


 真横から飛び出した俺が、その上から胴体に直剣を振り下ろす。まともに攻撃が入り、トカゲは大きく怯んだ。


 続けてツバキが追い付き、その頭部に槍先を振るう。槍が頭部を貫き、ぴきぴきと頭が下の地面ごと凍結していく。


 ぶち、ぶち、ぶちと、突然、まるで最初からそこに切れ目が入っていたみたいに、トカゲの首、胴体の真ん中、尻尾の付け根が切れた。四つに切れた体は地面の上でそれぞれが動き回る、だが胴体の下半分、後ろ足の生えた体だけが、俺たちから遠ざかるように逃げていく。


「“風刃”!」


 俺は手の平から風の刃を飛ばし、風の刃は足だけトカゲに直撃。トカゲの切れ端はころころと転がり、その上から再びツバキの槍が刺さる、氷が伝ってピキピキと体を覆っていく。


 氷が四分の一トカゲの全身を覆い、引いたツバキに合わせ、俺が上から剣を振り下ろす。半分胴体は粉々に砕け、また、中から砕けた赤いコアがのぞいた。


 ばらばらだったトカゲの体が、全部空気に溶けていく。そこには、トカゲの肉塊と皮、砕けた赤いコアが残っている。


「もう俺が手出ししても文句言わないんだねー」


 俺は付いた土を払ってアイテムを拾いながら、ロッドの氷が解けるのを眺めているツバキに話しかける。


「ここのモンスターは丈夫なので。先生にも出番は分けてあげますよ」


「そりゃありがたいねー」


 俺たちは成果を拾って、荷車へと戻ってきた。

ブンシントカゲ

 自在に体を分割できるトカゲ。分割後にくっ付ければ治る。逃げる時は自分をいくつも分割し、本体以外を跳ね回らせて敵の気を引く。足がなければ逃げられないので足が付いている奴が大体本体。大技で、他者の体を一時的に分割することも可能。

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