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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
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第四十八話、アップデート2

「そろそろ“中層域”へ向かおうと思います。ただ、そうなると地域のモンスターが強くなり、非戦闘員である皆さんは、不安に思われるかもしれません。そこで、“中層域”へ向かうにあたり、これから準備を行おうと思います」


 *


「こちら、その道の専門家のオチバさんです」


「どの辺の専門家だよ」


 連れて来たツナギの人に、ミドリがじろじろと体を見られている。


 ここは宿屋の隣の空き地。荷車を日の下に引っ張り出して、俺たちは荷車を囲んでいる。他に置くところもないのでミドリは荷台の中に乗ったままだ。


 ちょっと遠出して、転移の陣をいくつか踏み、遠くの町から、知り合いの職人(見習い)のオチバを連れて来た。


「荷車にいろいろ機能を付けたいと思ってな。そういった改造をして貰うには、もっと大きな街の工房とかに行って、何週間とか何か月とか待たなきゃいけないんだが。このオチバさんは俺の知り合いなので、土下座して靴を舐めればこの通り、余裕で来てもらえるってわけだ」


「それは余裕なのか?」


「ミドリもその体だと、人間界ではいろいろ不便そうだからな。ついでに見合った装備を作って貰おうと思うぞ」


「見合った装備?」



 トンテンカン



「出来たぞ」


 ミドリの腰には、宝石の嵌まった、革のベルトのようなものが巻かれている。俺の手元のスイッチをオンにすると。


「おぉ……」


 ミドリの体がふわりと浮いた。ミドリは、上半身こそ少女のような体型をしているが、その下半身は植物のように、太く枝分かれした根っこがいくつも生えており、抱えるにも運ぶにもどうしても重いし、そして持ちづらい。しかし、そんな重いミドリの体は、シャボン玉のようにふわふわと宙に浮いている。


 俺がリモコンを押すと、ミドリの体がスライドして空中を動いていく。再びボタンを押すと、緩やかにミドリの体は地面に降りて、そして重力が戻ってきた。


「ほら、ミドリ。自分でも操作してみるか?」


「い、いやいい、自分で操作するのは少し怖い。先生がしてくれ」


「そうか? 浮くこと自体は怖くはないか?」


「まぁ、鳥に連れ去られた時の苦い記憶は甦るがな。あの戦いでは私が勝ったし、ふわふわと空を浮く感覚も、気持ちが良くて悪くない」


 俺が、ミドリの腰元のベルトにリモコンを近づけると、カチッとくっ付いてそこに固定される。


「取り急ぎミドリちゃんの装備は作ったが、荷車の改造の方は少し掛かると思うから時間をいただくぞ」


「もちろんだ。こっちこそ、急にこんな所まで呼び出して悪かったな。しかし、作業はこんな所で出来るのか?」


「まぁ一から荷車を作るなら専用の作業場が必要だろうが、私がやるのは魔法の装飾だからな。そこまで必要な荷物は多くない」


 

 トンテンカントンテンカントンテンカントンテンカン―



「出来たぞ」


「相変わらず早いな」


 ふぅと、汗だくのツナギの少女が、荷車の隣で汗を拭いている。


「荷車に、“浮遊”と“サイズの小型化”と“内部の空間の拡張”の機能を追加したいということだったが、結論から言うと、中を広くするのは無理だった。私の空間制御の技術がまだ甘くてな。外側はそのままに、中の空間を押し広げたまま固定する、というような緻密な制御は私には無理だ。やるなら、その道の専門家でないと無理だろう」


 と、少女はまた操作用のリモコンみたいなのを渡してくる。


「ほかの機能については……まぁ、あとは実際にやってみてくれ」


 宿の脇の空き地には、俺とオチバ、それから地面にミドリが居る。そこに荷車が置いてあって、俺がボタンを押すと。


 目の前の空間が歪み、荷車がぐにゃりと押し縮められ、そこにひし形の、正八面体のような物体が残った。表面は青や緑や赤など、幾何学的な模様と色で彩られている。


追従ついじゅうの機能については前回と同じだ。君のところで言う……なんだっけ。2mくらい、以上離れると、追尾を開始してそのリモコンの方へと付いて来る。2m以内に入ると追尾を終えてまた止まる」


 オチバが、荷車があった場所の地面へと歩いていき、そこのカラフルな八面体を眺めている。


「この八面体の中に荷車を押し込めることで、“小型化”と“浮遊”を実現した。これなら、君の希望通り、荷車そのままでは通れなかった、細い道や段差なども通れるようになるだろう。また、」


 と、オチバはその浮かぶ八面体の中に手を突っ込んだ。表面は張り詰めた水面のように揺れて、オチバの腕が、一抱えくらいの大きさのそれへと入っていく。肩まで入ったが、彼女の手は反対から突き出てこない。空間が歪んでいるのだ。


「この通り、荷車と外との間に境界はない。割とコツは要るが、このままでも内部と外部での物体や人の行き来は可能だろう。まぁ中心点を荷車の中心に設定しているので、荷車自体はこの中から取り出せないがな」


 ずぼっと、彼女は八面体から腕を取り出した。そこには、持ってなかったはずの大きなレンチらしき道具が握られている。


「荷車の改造に関しては、こんなところだな。どうだ? 大丈夫そうか?」


 俺はオチバがその場から離れたのを見て、スイッチを押して荷車をもとの状態へと戻した。そこにはいつもの、幌付きの荷車が戻ってくる。


「相変わらずオチバは素晴らしい仕事をするな。俺の要望通り、完璧だよ。文句もない」


「完璧ではないさ。私は君の要望をすべて叶えられなかった、私の実力不足だ」


「こんなに綺麗に俺の要望を叶えてもらって、俺から言うこともないよ。俺が常識知らずに注文し過ぎただけだ。少なくとも、俺は満足だ」


「そうか。……あと一つ、荷車や小動物に、ダメージを防ぐような“シールド”を発生させる魔道具か何かがないか、という話だったが……」


 と、彼女はごそごそと大きな作業カバンの中をあさり、何かを取り出した。


「これまた私の専門ではなかったので、私の同僚の彫金師に作ってもらった。原理は聞かされたが何を言っているのかよく分からなかった」


 彼女の手元には、じゃらじゃらと、チェーンメイルのようなブレスレットが握られている。


「機能としては簡単で、対象にダメージや衝撃などを防ぐ“あわ”を発生させる。この“あわ”は、かなり丈夫ではあるが無敵ではなく、一定以上の力を受けると割れる。“あわ”には浮力はなく、浮いてなければ接地面の地面などの形に合わせて多少ゆがむ。浮いていればほぼ真球を保つ」


 じゃらと、手を持ち上げてその金属質な首飾りを見せてくる。


「この魔道具を手に“念じて”、対象に“あわ”をまとわせることが可能だ。“あわ”は空気を遮断していないようで、酸欠に陥るようなことはなかった。“あわ”は、対象の内外からの衝撃を吸収する、つまり内部から攻撃を外に出す際も防がれる。解除の際は、自然に割れるか、あるいはこの魔道具に“念じて”解除することが可能だ」


 俺は、首飾りを持ったままミドリを見る。


「残念ながら、“あわ”の大きさには上限がある。その子のサイズは無理だな」


「わたしにはそもそも要らない」


 オチバの視線に、ミドリが返す。出来るのは、ツチ(タヌキ)やヒメトラ(ネコ)、荷車の八面体形態くらいか。まぁミドリは荷車の中に入れとけば可能。


「魔道具はそれぞれ魔力を消費するが、それぞれ魔力タンクのようなものを付けてある。もちろん自身の魔力でも発動は可能だが、特に荷台を浮かせ続けるには結構な魔力量を必要とする。魔力の充填と燃料用の魔石の備蓄は十分に余裕を持っておいた方がいいだろう」


 俺はその辺の小石を拾い、手元の道具に“念じて”、小石に“あわ”を発生させる。あわは現れ、地面に押し付けられてそこにある。“あわ”に触れると、多少の弾性を持ってぐにぐにとゆがみ、掴んで持ち上げようとすると、小石一つ分の重さでそれは浮いた。


 俺はそれを地面に置きなおし、蹴りを入れると、強い衝撃が“あわ”に入った途端、“あわ”が強い抵抗を持って足が止められる。あれだ、片栗粉を溶かして作る、ダイラタンシー流体みたいな感じ、普段は液体で、殴ると硬化するやつ。


 俺は剣を抜いてそれに切り掛かると、なかなか丈夫なようで、何度か切りかかっても“あわ”は割れない。斬撃や刺突に対しても防御が可能、軽い見た目のわりに丈夫。まぁ斬り続けているとそのうち壊れた。


「何から何までだな。ありがとう、これもいい品だったよ」


「そうか。そう言っていただけて、私も嬉しい。しかし今回は注文が多かったし、内容も複雑なものだった。今回のお代はしっかりいただくぞ」


「おう、しっかり持って行ってくれ。次回からもまた頼むよ」


 手持ちのお金がごっそり無くなった。もちろん払った金額に後悔はないが、また稼がないとだな。



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