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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
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第三十七話、臨戦 ーII

 俺の目の前で、白く大きなトゲが生成され、その切っ先は俺へと向いて、緩やかにくるくると回っている。


 終わったか……。俺は手を掲げ魔力を練るが、相殺は無理で、間に合いもしない。


 白く巨大なトゲが、射出された。


 激しい音が鳴って、俺の体が宙を浮かぶ。俺の目は、窓から飛び込んできたその影を捉えていた。


 そいつはこの階の床の上へと飛び込んでくると同時に、地面を駆けて俺の首の後ろの服を掴み俺の体を拾う、もう片方の手で振るった剣が白いトゲと衝突しその進行を遅らせる。


 俺の体が宙を浮き、世界がスローモーションに見えた。俺の体は手を離され、放られ壁の方へと飛んでいく、やがて床が近づき俺は床の上をごろごろと転がる。俺はすかさず手元に剣を呼び返し体を起き上げる。


 そこに立つのは、マントを羽織った一人の人間、背中には、彼ら特有の意匠が入っている。


「離れろ!」


 マントの人は鋭く声を出す、向こうの仮面から目を離さないまま。


「二体居る! もう一体は下に居た!」


「じゃあ上に!」


 俺は古びた階段を駆け上がりその場を後にする、俺がもうそこに居ても足手まといにしかならない。後ろで破壊音とけたたましい衝突音がしていた。音から遠ざかるように、俺は上へ上へと駆け上がっていく。


 階段を上がる足音は、徐々にゆるやかになり、最上階の天井が見えた頃にはかなり遅いものとなっていた。膝が震える、まだ攻撃がいつ飛んでくるか分からない、俺はまだ“遠ざかった”だけだ、いつまたここに戦場が戻ってくるか分からない。


 しかし、俺は目に見える脅威から距離を取り、相手を任せたこともあって油断していた。ゆっくりと階段を上っていき、そして俺は最上階の床の上に頭が出た。


 階段はそこで途切れ、手すりも壁まで繋がって埋まっている。何もない広いフロアだった。壁には、四角い窓の穴が均等に並んでいる。


 最上階の、窓際の部屋の隅に、黒々とした塊が佇んでいた。黒い霧のような、靄のような塊の表面には。


 いくつもの丸くて白い仮面が塊の上に浮いていて、それは一様に俺の方を見ていた。


 視界に、白くて大きなトゲや、大きく湾曲した白い刃や、渦を巻くドリルのような切っ先や、剣の刃や、槌の頭や、白くて巨大な凶器が視界に次々と現れて。


 一本の剣が床から生えた。それは黒い塊の真下から生えていて、黒い塊の内部に浮かんでいた赤いコアを、剣の切っ先が捉えていた。ぱたぱたと白い仮面が剝がれて落ちていく。黒い塊の形が緩み、床に投げ出したように広がっていく。


 やがて、黒い靄のような体は空気に溶けていき、床から生えた、先に赤いコアが刺さったままの剣だけがそこに残っている。


 階段下から足音が昇ってくる。それは一階下、どころではなく、駆け上がったさっきのフロアから徐々に上がってくるものだった。そこに見えているこの剣は、その剣だけで、一体何階分突き抜けてここまで上がってきた……?


「ちゃんと生きてるわね」


 俺が階段の最上部に座り込んでいると、やがてマントを羽織った女性が現れた。彼女は階段を最後まで登りきり、俺の背後に立って、俺の頭にこつんと拳を当てる。


「ま、生きてたことは褒めてあげるわ。でも、あなたが逃げ回ったせいで地形に被害が出たわ」


「……助けてくれてありがとうございます」


「ふん。礼儀は分かってるじゃない」


 桃色の長い髪、ポニーテール。彼女は長い髪を揺らしながら床板の上を歩いていき、向こうの地面から生えた剣の元まで行った。剣先を指で摘み、床を踏み抜いて壊して剣を引き上げる。地形に被害出てますけど。彼女は剣の柄を握って、空気に一振り。


 埃を落とす動作だろうか、その動きはひどく洗練されていて綺麗だった。そのひと振りは俺の目の中に焼き付いた。彼女は腰元の鞘にそれをしまって、鞘とつばがぶつかる音が鳴る。彼女は赤いコアを拾い、俺を向き直る。


「久しぶりね。どう? この世界は楽しい?」


 *


「先生! 先生!!!」


 銀髪の少女は岩道の向こうに立っていて、建物の一階から出てきた俺の体を視認すると、よろよろと歩き、やがて駆け寄ってくる。


 胸板に飛び込んできた彼女をどうにか倒れずに受け止める。



「先生が……先生が無事で良かったです……っ!」


 俺は建物の脇に座り込み、少し休憩する。少女は心配して泣いていたが、別に全然死ねる戦いだったので「いや全然大丈夫だよー」とも言えず、水を飲むなどして自分の体を回復させることに努めた。


「……先生、さっきのモンスターは、あと騎士の方は……?」


 桃髪の騎士は、ほかに敵が居ないか確認した後さっさと帰っていった。彼女はどうも元々この辺に居る禍津鬼の気配を掴んでいたらしく、町に滞在しておりだから到着も早かったと。彼女が居なければ普通に死んでいた。俺からの礼もおろそかに、彼女は窓から飛び降りてどっか行った。


「モンスターならその人が倒したよ。呼んできてくれてありがとうね、ツバキ」


「わたしは……わたしは何もせずにその場から逃げて……」


「二人で残ってたら、何も出来なかっただけ。ツバキは出来ることをしたよ。怖かったね」


 俺がそう言って彼女の頭を撫でていると、脇から足音がする。


「あら、ずいぶん可愛らしい妹が出来たのね。私にも紹介しなさいよ」


 見れば、マントを外したさっきの桃髪のお姉さんが立っている。帰ったんじゃなかったのかよ。


「なんですかー? まだ何か用ですか?」


「命の恩人に対する態度としては、それはちょっと違うんじゃない?」


「今お取込み中なんですけど。見て察せませんか?」


「ふーん? 言うようになったじゃない」


 桃髪の女性はつかつかとこちらを歩いてくる。銀髪の少女は困惑しているようだが、やがてハッと気づいて女性に向き直る。


「あ、あの……私の先生を、助けてくれて、ありがとう、ございました……」


 桃色の女性は、銀髪の少女の頬を両側から掴んで顔を上げさせる。ツバキの顔に“?”が浮かんでいる。


「あ、あの……」


「“せんせい”? これが?」


 どうも、これです。


「……はい。あの、そこの人が私の先生で……」


 どうも、そこの人です。そこの人?


「先生……へー、先生ね。今はアオイって言うんだっけ。あんたもずいぶん偉くなったのね、アオイ」


 にやーと、桃髪のお姉さんは俺を見て笑っている。


「……まぁ、不肖ながら」


「わたし、この子気に入ったわ」


「は?」


 桃色の髪のお姉さんは、銀髪の少女の顔を掴みながら話している。


「この子、いい素質を持ってるわ。この私が鍛えてあげる。喜びなさい」


 俺は慌てて壁から背を離し起き上がる。


「ま、待ってくださいモモさん、その子はまだ年若く、未来ある子供なんです。その子だけは、その子だけはどうか……」 


 お姉さんは顔をしかめている。


「私が一体何をすると思ってるのよ。鍛えてあげるって言ってるじゃない。別に危険なところに連れて行ったりはしないわ。ただ私の手で鍛えてあげるだけ」


「どうか……どうか命だけは……」


「話聞いてる?」


 と、銀髪の少女は顔の両側を手で挟まれたまま、困惑した様子で俺とその女性の顔とを見比べている。


「あ、あの、先生この人は……? お知り合いか何かですか……?」


「(記憶がないので)知らない人」


 桃色の髪のお姉さんは、屈託のない笑みを浮かべて銀髪の少女に笑いかける。


「世界一強い剣のお姉さんよ。この私を目の当たりに出来たことを、泣いて喜びなさい?」


キリハキ

 薄暗い所に突然生えてくる木のような形をしたモンスター。葉はなく、枝の先に泡を付けて中にいろいろな力をため込む。周囲の毒素を吸収して空気を綺麗にし、敵が来ると毒素を吐き出して空気を汚す。


ホワイトコイン

 黒い、ゲルのようなゼリーのような塊。体の表面に白く丸い仮面を浮かべ、仮面の数だけ攻撃を操る。仮面は分離、浮遊させ、仮面を目として別行動が可能。いたずらに人を殺す。人の顔に張り付き人間を操作できる。

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