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教科『異世界』の時間だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
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フィールド探索“真珠の森[深度1~2]” ーIII*

 俺たちは森の中を歩いている。


「いやー、まだまだ人間界の中ではレベルの低い場所とはいえ、俺たちにとっては初めての狩り場のレベルアップ。ここら辺では土地勘もないし、モンスターも見慣れないものばかり、いつも以上に気を引き締めていかないとなー」


「ねぇねぇ」


「なに? ミナモさん」


 ミナモさんが隣から俺の肩をつんつんと突いており、俺は隣を向いた。


「武器の紐が絡まった」

「気をつけようねー」


 湿った森の中。茶色い土の地面、そこかしこに積層した落ち葉が散らばっており、地上は隙間なく覆われた木々の葉っぱの天井に遮られ、薄暗い。森の中を吹く風は湿っている。ここは流れる落ち着いた雰囲気の森の中。


 俺たちは結局いつもの二人に分かれ、森の中を探索している。


 この森には“一人級”の強さを持つモンスターも徘徊しており、それらを討伐すると“一人級到達”という実績が得られます。良ければ挑戦してみてください、


 なーんて先生は言っていたが、一人級とはつまり成人一人分の戦闘力である。その基準は、戦闘訓練を受けていない成人のものであり、俺たちみたいな特殊な武器も持っていないものであるが、だからと言って子供の俺たちの届くラインなのだろうか。


「ミナモさん、そういえば魔法は使えるようになったー?」


「“水”だけ」


「俺も“風”だけー」


 俺たちはのんびり森の中を歩いていく。魔法は魔物にはぶつけるとダメージが発生し、なので使えるだけましである。”水”とか”風”とかでも。


「ん」


 と、ミナモさんが突然立ち止まる。


「モンスター?」


「ここら辺から気配が……」


 ミナモさんは勘が鋭い、大抵先手を取ってモンスターが見つかる。俺たちはいつも通り、森の周囲を見渡す。


 そこには静かな森の気配がある。森は風に揺られ、さらさらと、葉っぱの揺れる音が波のように頭上を過ぎていく。木々の合間の向こうにも、動く気配は存在しない。ただ静かに風が流れ、どこかの空で鳥が鳴いて飛んでいる。


「……」


「……来ないね」


 いつもなら大体すぐに揺れる影を見つけられるのだが。今日は待っても何も来ない。


「擬態型か……? どこに居た? ミナモさん」


 ミナモさんはゆっくり指を森の奥へと指す。


「そっち。今も居る」


「待ってる?」


「待って……? うーん……」


 彼女は、今しがた指さした方向をじっと見ている。そこには、見分けの付かない木々が順番に生えていっているだけで、土と落ち葉の絨毯が広がっているだけで、何も居るようには見えない。


「どうする? 避ける? 初めての敵だし……」


「モンスターから逃げてたら来た意味なくない?」


「……いや、土地に慣れてみるとか」


「いったん見てみよ。正体も何も見ないまま避けるのは良くないと思う」


 まぁ確かに。と、ミナモさんは一歩一歩、慎重に足を進め、森の奥へと進んでいく。彼女の手は静かに剣の柄へと添えられている。俺はまだその気配を見つけられていない、俺は彼女の後ろを付いていく。


 と、彼女はピタッと足を止めた。


「そこに居る」


 彼女は一本の木を指し示した。見れば、生えている他の樹種と同じ種類の樹、等間隔に生えている木の一本だ。今も隣の枝に届くまでいっぱいに枝を伸ばし、青い葉っぱが枝には茂り、脇にはいつかの切り株が地面にある、モンスターが潜むのは、枝の上か、木の裏か。


「ここからは、俺が行ってみるよ」


「……」


 俺は彼女の隣を通り過ぎ、一歩、一歩と、その木の元へと近づいていく。注意深く周囲の気配に耳を澄まして。一体どこから来る? 上からか? 正面から? それとも地面に埋まってる? もう見えてるけど、木の一部に成り済ましている? あるいは非敵対種で、隠れてるとか。


 俺はいったん立ち止まった。まだ、何も起こらない。ただ風が揺らす木々のざわめきだけが周囲から聞こえてきている。


 それは突然に起きた。


「上っ!!」


 ミナモさんの鋭い警告が響く、俺は咄嗟に上を向いて……あれ? 地面がひっくり返ってる? 俺の体は宙を浮き……じゃない、枝が……木の上部全体が俺にしなり振り下ろされている!


「おわぁあああああ!!」


 俺は振り返り思いっ切り背後へとダイブする。直後、背後の地面を、葉っぱの付いた枝が鞭のように鋭く打った。俺は飛び起きすぐさま武器を構える。


「木が攻撃してきた!!」


 俺は背後を気にしながら、そちらを見る。今しがた動いた木は、振り下ろしたその枝をゆっくりと、まるで何事もなかったかのように上へと戻していく。


「……」


 ただ風だけが森を揺らしている。


「木の化け物……樹木のモンスター……動かない……その場から、動けないっぽい……?」


「……多分」


「俺たちで、倒せそう……?」


 俺たちの剣と奴の枝のリーチには、かなりの差がある。根元まで潜り込み、それで攻撃が飛んでこないとは限らない。さっきの枝の振り下ろし、重く、速く、避けるのに精いっぱいで、攻撃する余裕は無いだろう、一撃食らえばしばらく動けないくらいの衝撃は受ける。木は木なのででかく、体力も相応にあるだろう。俺たちの魔法の射程はまだ、ほぼ手の平の間近だけしか無く、あそこにいる木まで魔法は飛ばせない。


「……一発殴ってみる」


 と、ミナモさんが剣を握り踏み込もうとした途端、ミナモさんの目の前を大きな木の枝が振り下ろされ地面を叩いた。余波の風で彼女の前髪がふわりと浮く。あと一歩踏み出したら彼女はぺしゃんこ。


「倒せるやつ探そう」

「うん」

≪ひとくちモンスターずかん≫


ゴーストウッズ

 樹の化け物。動くものは全部養分だと思っており、地面の下に伸ばした根っこで地面を踏んだ生き物を感じ取り、頭を振り下ろし全力で叩き潰す。

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