表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-20

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

258/525

第二十二話、闖入者といつもの顔 ーII

「先生、泳げないんですか?」


 銀髪の少女の、真摯な目が俺の顔を見上げている。


「泳げなかったら、もしも水中に落ちた時、戦えなくて不利ですよね。水中に落ちることは、旅の中で想定できない事態じゃない、海の上、川の上、渓谷、湖、落ちてしまうかもしれない水面は、旅の中でいくらでも遭遇します」


「水面を凍らせれば事態は解決するよ」


「先生は大量の水を凍らせるほど魔力が豊富でしたか?」


 少女は、何がそんなに嬉しいんだか、珍しく分かりやすく笑顔を浮かべて、俺に言ってくる。


「私が泳ぎを教えてあげます! ぜひ一緒に泳ぎましょう!」



 俺たちは冒険者用の装備のまま、木刀一つ握って、ぷかぷかと湖の中に浮いている。


「こういうのじゃないです」


「なんだ? 水中戦闘の練習がしたいんじゃなかったのか?」


「違います。先生に、私が、泳ぎを教えてあげるんです」


 と言っても、別に俺は泳げないわけじゃない。ぎりぎり25m泳げるか泳げないかくらいだ。まぁ泳げないといえば泳げない。どういう練習を想定しているかは知らないが、ツバキに両手を引いてもらって泳ぐのも、なんだか恥ずかしい。


「じゃあ、お前が俺に勝てたら、泳ぎを教えられてあげるよ」


「……偉そうですね」


「俺の方が偉いからな」


「水の中でも、そうですか?」


 体を動かそうにも、重い水の抵抗が邪魔をして思うに動けない。風の領域も、もちろん水中だと展開できない。どう考えても地上より不利だ。だがまぁ、その条件はツバキも同じだろう。


「体に棒を当てたら勝ち、ですね」


 俺とツバキは、それぞれ水の中で木刀を構える。


 水中では、自身の体重による足の踏ん張りがきかず、腕の力や腰の回転のみで木刀を振らなければならない。水中では面白い動きや筋肉が要求された。練習を終える頃には、体がへとへとになっていた。


「先生! 次は泳ぎの練習ですよね!」


 湖のそばで横たわってへばっていると、頭上から少女の影が遮る。少女の上半身が、俺の頭上を覆っている。濡れた銀髪が垂れており、ぽたぽたと上から彼女の水滴が落ちてくる。


「ツバキは元気だねぇ」


「早く行きましょう!」


「待ってー、もう少し休憩してから……」



「先生、準備はできましたか」


 黒い水着を着た銀髪の少女が、腰に両手を当てて仁王立ちでふんすと立っている。


 体を守る厚い生地の冒険者装備は脱ぎ捨てて、今は薄着になっている。彼女はぴちゃぴちゃと水辺の水の中に足を入れていく。透明な水面には青空と雲が映っており、作った波紋が薄く映る空の景色をかき乱す。


 俺も彼女に続いて、透明な水の中に入っていく。


「先生、まずは水面に顔を付ける所から始めてみましょう」


「そのレベルじゃないけど別に」


「……? じゃあどこら辺?」


「うーん……十数メートル……ええと、この湖を横断するとしたら、その三分の一くらいは泳げるけど全部は無理、みたいな」


「なるほど。泳げるには泳げるけどしょぼい感じなんですね」


「しょぼいって言うな」


「まぁ私が見てあげます。とりあえず泳いでみてください」


 俺の肩の下、少女の肩くらいの水深の所までやって来た。


「中心付近は足が付かないので、中心を避けて、ここから向こうにまっすぐ泳いでみましょう」


 少女は本当に泳ぎを見てくれるらしい。しかし、見られたとてどうにかなるんだろうか。とりあえず彼女の指示に従って、俺はバシャバシャと水面を進んでいく。


 息が切れて、水底に足を付いて立った。振り返れば、少女がすいすいと水面をかきながらこちらへとやって来ている。


「……こんなんで何か分かるのか?」


「苦しそうでしたね」


「……まぁそりゃ泳げないからな」


「推進力やフォームに関しては問題ないですかね。思うに、息継ぎが下手なんじゃないですか? 長い距離を泳げないなら」


「息継ぎ?」


「もう一回泳いでみてください」


 俺は呼吸を整え、再び水面に顔を付ける。泳法は、学校で習ったクロールしか知らない。必死に顔を水面の上に上げ、水に浮かんで水をかいて蹴って進んでいく。


 再び息が切れて、ぷはぁとその場に足を付いた。


「先生、我慢しすぎですよ」


「……なに?」


 と、背中から少女がまた追ってきて、そう声を掛けてくる。


「おそらくですけど、最初は適当に息継ぎをやってて、呼吸が苦しくなってから息継ぎを頑張り始めてるんです。我慢しちゃだめですよ、最初からちゃんと、余裕を持ちながらやりましょう」


「……見苦しくて悪かったな」


「先生も出来ますよ。今覚えましょう、やり方は、私が教えてあげますから」


 と、銀髪の少女は、柔らかく笑みを浮かべて、俺の顔を見上げている。


 少女の言われるがまま、俺は泳ぎの練習を続けた。先に覚えていた泳ぎの癖を直すのはなかなか難しかったが、少女は辛抱強く付き合ってくれて、徐々に、俺の泳げる距離は伸びていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ