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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
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第十八話、ダンジョン探索

「“探索済み”の地図は要りませんかー?」


 翌日、再びダンジョンの地上入り口を訪れると、軽装の冒険者がそこに立って紙束を持っている。


「何売ってるんですか?」


「おやお兄さん! ダンジョンの“探索済み”の地図はいかがですか?」


「地図ですか? どれのですか?」


「今は、左の“入り口”から数えて順に、“一番”の十七層までの地図、“二番”の十層までの地図、“三番”から“五番”の八層までの地図、“四番”から“八番”の五層までの地図がありますよ!」


 ダンジョンは、地上の入り口を通って下に降りるとまず広場に出る、その広場には、それぞれ別のマップへと繋がる“入り口”が、壁に円形に並んでいる。この“入り口”は、ダンジョン内部に人が居るほど数が増えていき、右の奴ほど新しい。


 つまり、左の“入り口”は最初からあるものであり、内部はすでに探索済みの場所が多い。逆に、右の“入り口”から続くダンジョンほど新しいものであり、未踏破であり、またダンジョン内の人数が減ると簡単に消失する。もう一度現れたそれは異なる構造のダンジョンである。


 深い階層に潜りたい場合、浅い階層はただの通り道であり、道中のモンスターは美味しくない。だから、深い階層に入りたいならこういう“地図”をよそで手に入れて、浅い階層を楽に終わらせて深いところへ潜っていくのだろう。


「十七層? 十七層まで探索が進んでるんですか?」


「今は、そうですねー。十七層までですねー」


「十七層って言うと、モンスターの強さはどれくらいになります?」


「強さ? 強さはそこまで変わりませんよー、一般ポップだと、ダンジョン内のモンスターは“5”くらいが上限ですし。たまに紛れる強個体も“6”程度ですしねー」


「へー、でもレア度は、下の方が良いの出やすいんですよね?」


「そっすね!」


 ふーん? 強さに余裕があるのなら、じゃあ最初から一番下を選んでもいいのか?


「じゃあ俺たちでも、その十七層は行けそうですか?」


 地図売りのお兄さんはきょとんとした顔をして、やがてニコッと笑う。


「あぁいや、やめた方がいいっすよ! 強さは変わらないって言いましたけど、下に行くほど“数”がやばくなるんすよね! 今、十七層まで探索が終わってますけど、それやったのも普段“8”とかに潜ってる下層冒険者ですし!」


 じゃあ無理だな。ツバキは無理だし、俺も適正は“6”とか、“7”とかだ。“8”、“9”とかになると、俺も歩けはするが、強い人たちに連れて行ってもらって荷物持ちがやっと、というくらい。


「ちなみに、ダンジョンって、最下層とかあるんですか?」


「どうでしょうね。踏破だけなら二十層あたりまで進んでますけど、まだ最下層に着いたって話は聞かないっすね」


 ふーん。最下層は、まだ先か、あるいは無限に下が作られるタイプか。最下層にそいつが居る可能性はあるが、俺の実力だと見るのは無理か?


 自分で探索する楽しみもあるが、楽して下の階を見てみたい気持ちもあるな。どうしよう、どれを買おう。地図は欲しいな。右に行くほど新しいから人が少ないんだよな、じゃあ“七番”、“八番”あたりの、五層までの地図を買うか?


「すみません、“一番”の地図ください。十七層まで」


「ツバキちゃーん? 要らないよー?」



―“クリスタル・ダンジョン”三層


 ツバキにねだられ、俺たちは“五番”の八層までの地図を買った。


「とりあえず一番下まで行こう」


 ツバキは銀のロッドを片手にずんずんと俺の前を進んでいく。


「様子を見ながら少しずつ、ね? ツバキちゃん」


「先生、大丈夫だ。なんたって私たちには先生が居る」


「その先生の言うことは聞いてくれないのかな?」


 彼女はまっすぐ次の階段までの道を目指している。もう地下一階と二階は過ぎて、今は三階。


「ツバキ、曲がり角の左に居るよ」


 彼女の歩調が緩んだ。曲がり角から距離を取って待ち、そこから現れるのを待つ。


 曲がり角からモンスターが現れた。緑色の、イヌ型のモンスター。一匹だ。


「“エメラルド”だ! 見るの初めて!」


 能力は“常時回復”とかだっけ。レア度“R”の宝石だ。


「私に任せて」


「ツバキ、ここは三層だよ。一人でやれる?」


「やってみる」


 ツバキは銀色のロッドを構え、先に氷の槍先を生成する。ツバキから駆け出し、奴へと向かっていく。


 イヌ型のモンスターは体の位置が低く、素早い。しかし、攻撃は単調な飛び掛かりや噛み付き、突進がせいぜいで、飛び道具は使ってこない。最初は低い位置からの攻撃に戸惑うが、慣れたら倒しやすい相手だ。


 ツバキの先手の槍が“エメラルド・ハウンド”へと突き出される。あれ、少し反応が良いか? エメラルド型だから、ではなく、三層まで降りてきたから、モンスターのレベルが上がっているのだろうか。


 ツバキの槍先がイヌの胴体を掠めた。軽く表面が欠けただけ、決定打には程遠い、エメラルド型は素早く後ろに下がって、通路の先でこちらを睨んでいる。


「ワン! ワンワン!」


 緑イヌはこちらに向かって吠えている。仲間を呼んでいる、わけではなくただの威嚇だろうが、一応俺が周囲の様子を見張っておこう。


 ツバキが再び槍を構え、突撃する。動きを見切ったのか、今度は槍先がまともにイヌの体に入った。大きく穴を開けながら槍が宝石の体を貫き、すぐに全身にヒビが広がる。砕けてモンスターは消えた。


「先生! やりました!」


「強い。すごい。最強」



―“クリスタル・ダンジョン”五層


 ツバキに引っ張られ、なんだかんだ五層までやってきた。ここまでは“探索済み”であり、地図がある。五層で歩き回っても、帰りの体力の算段が付けやすい。


「とりあえず、しばらくこの階で歩き回ってみようか。まだ余裕そうだったら次の階に行こう」


 ダンジョン内全体の適正は“3~5”、たまに現れるという強個体が“6”。ツバキの実力が同じ“3~5”あたりで、俺が“6~7”。一応、全階層二人で行けることになるが、話によれば下の階層ほど“数がやばくなる”らしい。敵が、俺たちの処理能力を上回ればもちろん負けるし、下の階層に行くほど救出が面倒になる。進むには、慎重すぎるくらいでちょうどいい。


「先生、もう来たぞ」


「みたいだねぇ」


 五層に降りてすぐ、通路の先にモンスターの群れを見つける。三体だ。ここより上の階層では群れに当たるのは珍しかったが、五層だと複数体の出現が基本になるのだろうか。


「きつくなってきたでしょ。手伝ってあげる」


 俺がそう言うと、ツバキはロッドを抜きながらこちらをちらりと見る。


「お願いします」


「あいあい」


 俺は腰元の直剣を抜く。とは言え、俺が出たら三体ともすぐ終わる。俺はツバキのサポートをする形で動いてあげよう。俺はツバキの斜め後ろで剣を構える。


 通路の先に、三体のハウンド型が構えている。三体とも“クリスタル”、“丈夫さ”の上昇した個体だ。


「先に一体減らす?」


「……お願いします」


 俺は風刃を飛ばし、後ろの“クリスタル”の一体を砕いた。驚き、二体がこちらへと向かってくる。一体が地面を跳ね、ツバキの体へと飛び掛かってきた。ツバキはロッドを横にしてその噛み付きを食い止める。


 残りの一匹がツバキの右側から、ツバキを挟んでちょうど対角から向かってくる。俺は結晶柱をツバキの前の地面に生み出し、もう一匹の接近を妨害する。


 そうしている間に、ツバキが手元の一匹を振り払った、透明なイヌが地面に落ち、ツバキは上からロッドを振り下ろす。ロッドの先には氷の塊が付いており、先の尖った槌のような形をしていた。ツバキの氷槌が目の前の一体の体を砕いた、同時に飛び掛かって来たもう一匹を、俺は壁から真横に結晶柱を生み出して接近を妨害する。


 ツバキがもう一匹を見た、ロッドの氷塊はいったん解かれて、ただの銀の棒に戻る。透明なイヌは地面で構えてこちらの様子を窺っている。


 ツバキのロッドの先に槍先の氷が付いた、ツバキはそれを掲げ、イヌ型へと向かっていく。ツバキの槍の突き、イヌは素早く横に避けた、ツバキがその先にまた槍を突く、何度か避ける、突くの攻防が続き、やがて槍先がイヌの体を捉えた。イヌの足に当たり、そこが欠けてイヌの体勢が崩れる、ツバキは、さらに一歩踏み出し槍を突き出した。


 それがとどめになった。クリスタルの透けたイヌは、バラバラに割れて空気に溶けていく。


「先生! やりました!」


「すごい。やるじゃーん」


 ツバキがぱたぱたとこちらに戻ってくる。ツバキの適正はこの五層あたりかな。しばらくここで遊んで、ツバキが強くなれたら階層を下に進めるか。


「先生! ここ楽しいです! もっとやりましょう!」


「焦らず落ち着いていこうねー」


 俺たちは地面に落ちたドロップ品を回収し、また暗い地下通路を進んでいく。


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